Posts Tagged Versailles

王の菜園と小厩舎

8 5月 2019
王の菜園と小厩舎 はコメントを受け付けていません

王の菜園は今日もなお現役

先週あたりから急に寒さが戻ってきてしまい、まだコートを着て出歩いています。家にいても暑くないので快適ではあるのですが、5月にもなってこれはどうしたことでしょう。
フランスでは今日は戦勝記念日で祝日です。日曜と祝日は学校が開いていないので狭い家に籠って練習するしかないのが悩みどころ。

さて、今回は現在ヴェルサイユで行われている建築と景色の展覧会に合わせて、王の菜園と小厩舎を紹介します。
王の菜園は以前紹介したサン=ルイ大聖堂とスイス衛兵の池の間に位置している畑です。元はルイ14世の食卓に並ぶ野菜や果物を栽培していたところで、菜園の中に銅像がある造園技師ジャン=バティスト・ド・ラ・カンティニにより1683年に設立されました。彼によってこの菜園では温室の設置など最先端の栽培法が実践され、当時は貴重品であったグリーンピースの栽培にも成功しました。その後も国王の食卓を潤すための菜園として機能し続け、1874年には国立高等園芸学校が開校、現在は国立高等造園学校となっています。それぞれの区画では希少種の保存や古い栽培法の伝承、有機栽培の実践が行われており、学生による実験区画もあります。
サン=ルイ大聖堂を左手に臨みマルシャン・ジョッフル通りを進むと小さい建物(道に面している部分が細長くなっている)がありますので、そこにある受付で通常は入場料を払い入園します。右手には温室、中央部分には畑、左手と畑の奥には果樹園があります。中央部分は壁で覆われ、土地が一段低くなっています。これは風の影響を和らげ、また太陽光が壁に当たることによって発せられる熱によって菜園内の温度を上げる工夫だそうです。中央部には水汲み場として機能する噴水があります。
右手奥にある比較的大きな建物には今回は入ることができましたが、普段は立ち入りできないかもしれません。入場した建物とちょうど対角線上にある小屋には直売所があり、野菜やジュース、ジャムなどが売られていました。本当は今旬の苺があれば買おうと思ったのですが、もう過ぎてしまったようです…。来年はちゃんと調べて買いに行こう。
散策する際は整然と区画分けされた畑や見事に整形された果樹、スイス衛兵の池側に設けられた国王のための門を見てみると良いでしょう。
サン=ルイ大聖堂の周辺では展覧会に合わせた「庭園のエスプリ(精神、気質などの意)」と題した祭りが開催されていて、花などの植物、造園器具や置物まで扱う一大マルシェとなっていました。盆栽もありましたよ(笑)。

さて、今回の展覧会はヴェルサイユの様々な施設で開催されていますが、その一つに通常はガイド付きでしか見学できない小厩舎も含まれているので、この機会に初潜入しました。
小厩舎はジュール・アルドゥアン=マンサールの手によって設計され、対となる大厩舎と並行して1679年に着工されました。宮殿を正面に見て左側にあるのが小厩舎です。この施設は馬車用の馬と馬車が収容され、蹄鉄製造所も併設していました。その後革命を経て軍の施設となりますが、現在では国立高等建築学校とフランス美術館研究修復センターが建物の一部を使用しており、ルーブル美術館の彫刻収蔵品やヴェルサイユ宮殿の彫刻のオリジナルを保管、展示しています。厩舎としての機能は今日ではありません。
宮殿側の入り口は閉まっていたので大回りして裏側、リーヴ・ゴーシュ駅周辺の商店近くから入館。少し前までこの付近は工事中だったのですが、いつの間にか完成してすっかり整備されました。この入り口にある建物が蹄鉄製造所であったようです。
厩舎内部に入ると、全方向にひたすら大小の彫像と建築物の一部のコピーが陳列されています。ちょうど正面に、有名なヴェルサイユ宮殿のラトーヌの泉水にあった彫像のオリジナルがありました。他、古いイタリア彫刻を17世紀以降にコピーした彫像や、いかにも古そうなローマの衣装を纏った首や腕が欠けているものも多い彫像などがあります。こうした彫像から当時の服飾、ジェスチャーを垣間見ることができるのは言うまでもないでしょう。
左手奥では打って変わって現代アート展が開かれていました。さっと見て終わりました。

大厩舎もまだ入ったことがないので、来週は大厩舎についてお伝えしようと思います。

ヴェルサイユにある興味深い名前の通り

30 1月 2019
ヴェルサイユにある興味深い名前の通り はコメントを受け付けていません

なぜ?なぜアメリカ独立?

先週降った雪が無くなったと思ったら昨晩また本格的な降雪がありました。列車やバスが遅れるのは少し嫌ですが、いつも見ている景色が銀世界になると関東平野部の人間としてはなんだか嬉しいものです。
先週から今週にかけては特段用事がなく、2月7日の王室礼拝堂での演奏に向けた練習に明け暮れました。やればやるほど課題が見えてきてしまって、一瞬めげそうになりましたがそれはただ自分から逃げているだけだなとつくづく思うのでした。できない自分を知って受け止めるところから進歩は始まるものですよね。
あと、寒い自宅を懸命に暖めて練習するよりも学校に行った方がずっと暖かくて良いなと思いました笑。

さて、今週のテーマは「ヴェルサイユにある興味深い名前の通り」です。
ヨーロッパはどこの街でもそれぞれの道に必ず名前が付けられていて、住所も○○通り何番地、という言い方をしますよね。ヴェルサイユも例外ではなく、土地や方面に由来する「パリ通り」や「ソー通り」、人物の名前に由来する「コルベール通り」や「パントル・ル・ブラン通り」、さすがヴェルサイユというべき「ロワイヤル通り」や「レーヌ(王妃)通り」など様々な名前の通りがあり、看板を見るだけで楽しいものです。しかし中には「おや?」というものも…。
今回は私が見つけた少し興味深い名前の通りを2つご紹介したいと思います。

1.アメリカ独立通り
ヴェルサイユ宮殿の南の翼棟やグラン・コミューンなどに面し、スイス人の池方面に続く通りです。
え?なぜアメリカ?と思いませんか?
アメリカの歴史に詳しい方ならもしかすると何となく察しがつくかもしれませんが、私はあまり詳しくないものでして、アメリカ独立とヴェルサイユがどう関係するのか全然分かりませんでした。
イギリスからの植民地支配を脱してアメリカが独立を果たしたアメリカ独立戦争にはフランスも介入しており、その講和条約が1783年にパリとヴェルサイユで締結されたのです。当のフランスは莫大な負債を抱えて介入したのに大した成果を得られなかった手痛い戦争でしたが、そのようなわけで今もこうして、大西洋の遥か彼方にあるアメリカの名前がここヴェルサイユの通りに付いているのですね。
ちなみにあのベンジャミン・フランクリンも何度かヴェルサイユを訪れているとのこと。

2.マトロ(水夫)通り
ヴェルサイユ宮殿の庭園にある大運河の東の端から南に向かって伸びている通りです。
周りには海はないし、セーヌ川はずっと北の方を流れているのにどこで水夫が船に乗るのでしょうか。そうです、庭園にある大運河です。
この運河はただ景観のためにあるのではなく、船を浮かべて舟遊びをすることができました。またそれに留まらず、新しい戦艦ができると国王がその出来栄えを見るためヴェルサイユまで部品を運び、近くで組み立てて運河に浮かべたのです。
今日でも庭園の運河では、日本の湖のように貸しボートがあって舟遊びが楽しめます。一人だと何ですが、機会があればやってみたいものです。

今回はヴェルサイユの通りを2つ紹介しました。次回はパリ周辺の移動に不可欠なナヴィゴNavigoについてまとめてみたいと思います。

ヴェルサイユ地方音楽院

23 1月 2019
ヴェルサイユ地方音楽院 はコメントを受け付けていません

オテル・ド・シャンセルリーの代表的な部屋、サル・ラモー

昨日からヴェルサイユ、パリとも雪化粧となっています。今日も一日中降雪の予報なので結構積もりそうです。
降り出した時はパリにいて、東京のような水分の多い雪で歩道がシャーベット状になって嫌だなと思ったのですが、ヴェルサイユに帰ってくると積雪が多く、少し乾いた雪質に感じられました。駅から帰るのに通る公園の小道は圧雪されたスキー場のような状態になっていて、スキーをしたくなりました笑。パリとヴェルサイユ、20kmしか離れていないのに少し気候が違うのは興味深いですね。
昨日の段階では道を行くバスや車はチェーンを付けていませんでしたが果たして大丈夫なのでしょうか…。

さて、そんな中ではありますが今回は私の通うヴェルサイユ地方音楽院についてお話ししたいと思います。
ヴェルサイユ地方音楽院の校舎はヴェルサイユ宮殿に向かって左手、シャンセルリー通り沿いに位置しています。このことからこの校舎は「オテル・ド・シャンセルリー」と呼ばれています。(オテルはホテルという意味もありますが、公共の建築物や館という意味もあります)
この他にもいくつか校舎があるようですが、古楽科はいつもシャンセルリー校舎で全ての活動が行われるので残念ながら他の校舎に行ったことがありません。ご興味のある方は公式サイトをご覧ください。
シャンセルリー校舎は、元来はフランス王国国璽保管官の邸宅で、簡単に言うならば首相官邸であった建物です。といってもすぐ横にあのヴェルサイユ宮殿があるので別に観光客が来るわけではないのですが、一応宮殿付近の史跡巡りコースに含まれていて説明書きの看板もあります。ちなみに日本語も少し訳が変ですが書かれています。
門を入ると右手に守衛所と受付、奥に自販機コーナーと事務所があります。正面にはオディトリウムと呼ばれる演奏会用ホールがあるのですが現在工事中で、私もまだ入ったことがありません。そして左手がレッスンや練習をする部屋がある建物となっています。
この建物は2階建て(日本でいえば3階建て)となっていて、殆どの部屋に作曲家の名前が充てられています。それが流石ヴェルサイユらしくバロック時代の作曲家、リュリやラモーは勿論のことド・ヴィゼー、カンプラ、ド・ラランドや12のオボワ、24のヴィオロンの部屋などもあって、ファンにはたまらない演出となっています(違)。
0階と2階は現代の音楽院らしい近代的な内装になっていますが、1階の各部屋は18世紀の雰囲気が色濃く残されており、中でも中央に位置ししばしば演奏会に使われるサル・ラモーは格別です。天井の装飾とそこから吊り下げられたシャンデリア、今も残る大理石の暖炉など、調度品さえ揃えればすぐにでもタイムスリップしそうな空間です。しかもよく見ると、シャンデリアや暖炉にはフランス王家の紋章が…。ここで演奏できるのは本当に嬉しい限りです。

次に古楽科についてですが、人数は把握しているだけで30名近くいます。アンサンブルの授業や演奏会のプロジェクトに参加していない人は会う機会がないので、実際はもっと多いかもしれません。ヴェルサイユ地方音楽院は古楽と現代音楽の分野に力を入れているようで、相応に学生が集まるのでしょう。
月曜日は古楽のレッスンや授業が多いようで、ヴァイオリン、フルート・ミュゼット、リコーダー、チェンバロのレッスンが行われていることは把握しています。アンサンブルの授業は現在私が通っているバロック室内楽の授業と、私は行っていませんがルネサンス・コンソートの授業もあるようです。私が知らないだけでまだあるかも知れません。
専攻とアンサンブルにはそれぞれ発表の機会が隔月くらいの頻度であり、一般公開されています。地元情報誌に掲載されており、ヴェルサイユ市民の紳士淑女が毎回訪れています。毎度書きますがこうして地域貢献ができることは良いことですね。
学生生活や授業についてはまた今後も追記していきたいと思います。

今回はヴェルサイユ地方音楽院についてでした。次回はヴェルサイユにある特徴的な名前の通りをいくつか紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。

フランスの年末年始

9 1月 2019
フランスの年末年始 はコメントを受け付けていません

新年に向けたカウントダウンが行われた凱旋門

Bonne année! みなさま、明けましておめでとうございます。
私は両親がこちらへ旅行に来たので、久しぶりに家族そろったひと時を過ごすことができました。餅を買ってきてお雑煮を作ったりしました笑。
また今回、いつでも行けると思ってなかなか行っていなかったルーヴル美術館やオルセー美術館、エトワール凱旋門の下などパリの観光スポットに初めて行きました。2つの美術館は無料で入れるうちに、これからじっくり時間をかけて回りたいと思います。

さて今回は前回予告したフランスの年末年始について書いてみようと思っていたのですが、正直あまり特別なことはありませんでした。
日本のように新年を祝う飾りつけは特に見当たらず、新年になってもまだクリスマスツリーがあったりイルミネーションがあったりします。最も1月6日にイエスの受洗を祝う公現祭があるので、25日になったらさっさとクリスマスを終わらせて門松や鏡餅を出す日本の方が変なのですが、それは自国の文化であるお正月を優先しているためなので仕方のないことでしょう。
ただ新年になったら「ボナネ!Bonne année!」 という挨拶もしますし、パリではいろいろなところで新年に向けたカウントダウンが行われていました。ちなみにヴェルサイユ宮殿周辺はとても静かでしたね。
パリのカウントダウンを見てヴェルサイユに帰ってくると軽く1時を過ぎてしまうので、BFMチャンネルのテレビ中継で凱旋門のカウントダウンを観ることにしました。ちなみに家にテレビはないのですが、iphoneにBFMTVのアプリを入れて観ることができました。
23時30分頃から(だったように記憶しています)プロジェクションマッピングが展開され、新年になると花火が非常に派手に打ち上げられました。来年は行ってもいいかも…知れません。乞うご期待。
ちなみに各交通機関は1月1日の正午まで無料で利用できたようです。ただし1日はC線でストライキが行われておりリーヴ・ゴーシュ駅から列車に乗れず不便でした…。無料にしなくていいからちゃんと列車を動かしてほしい。
聞いた話では、フランスでは日本のように三が日というものはなく、31日から1日の朝まで飲んで騒いだ後は、2日から普通に仕事をし始めるとのこと。私も3日から今週の演奏会に向けたリハーサルがみっちり入りました。でも日本と違い企業にもバカンスが多いので、わざわざ新年に3日休日を取る必要はないということなのでしょう。

今回は少し短かったですが、フランスの年末年始についてでした。次回は今週行われる、ヴェルサイユ宮殿の木曜コンサートの模様をお伝えします。

イヤーな「カビ」の話

5 12月 2018
イヤーな「カビ」の話 はコメントを受け付けていません

取り寄せたカビとり剤

相変わらず雨ばかりのヴェルサイユ。地面が乾いている日の方が少ないほどです。ここ数日は少し暖かいので霧はあまり出ませんが、何となくすっきりしない空模様がずっと続く様は、18世紀と変わらないのでしょうか。
前回も少し書きましたが、ヴェルサイユは元来湿地帯で、宮殿の造営が行われる前は一面泥だらけで草の悪臭が漂う土地でした。それを全て干拓し、あの壮麗な宮殿と庭園を造ったのです。ただ土地は変わっても、それを取り巻く気候はあまり変わってないのでしょう。

先週末には10月からリハーサルが行われていた「クープランを讃えるラヴェル」の演奏会がヴェルサイユにほど近いヴィロフレーの小さなホールで行われました。図書館に併設されているホールで、残響はあまりないので古楽には少し厳しい現場ではありましたが、とても楽しめた本番でした。ラヴェルのいわゆる『クープランの墓』の楽章間にクープランの『王宮のコンセール』と『リュリ賛』を演奏するという趣向で、モダン科との交流も持つことができました。ちなみに『リュリ賛』ではフランス人を差し置いてリュリ役をさせていただきました笑。
日曜日にはヴェルサイユ宮殿内にある王室歌劇場でシャルパンティエの《アクテオン》とラモーの《ピグマリオン》を観に行きました。演奏はターフェルムジーク・バロックオーケストラ。比較的小編成ながらしっかりとした低音に支えられた響きは聴いていてとても安心感があり、舞台演出も見事でとても楽しかったです。
昨日は王室礼拝堂でジョルディ・サヴァール率いるアンサンブルの、クープランの「諸国の人々」全曲演奏会がありました。各人名演奏をしていましたが、一番安い後方の席だったので如何せん遠くて細部がよく聞こえない…。おそらく王室礼拝堂は身廊と側廊の2階部分の間を遮るものが円柱しかないため、音が散りやすいのだと思います。しかもクープランのような室内楽にはそもそもあの巨大な空間はあまり適しているとは言えない。今度からは高くても前方の席を買おうと思いました。

さて、今回はそんな充実した毎日に密かに我が家へ棲み着いていた、イヤーなカビの話です。
11月に入り、何だか洗濯物が中々乾かなくなったなと思っていた頃、彼らは少しずつ仲間を増やして、遂に目に見えて居間の壁に進出してきました。元々シャワールームのカビには悩まされていたのでカビ取り剤を探していたのですが、MONOPRIXの店頭をいくら探してもない。仕方なくアルコールスプレーで様子を見ようと一度拭いたのですが、一週間経つとまた生え始めました。どうやら壁と密着しているクローゼットの裏側の奴らを退治しないといけないようです。
MONOPRIXのインターネットサイトから購入できる薬剤を店頭取り寄せにして待つこと2日。ヴェルサイユ店へ受け取りついでに買い物に行ったら、数日前までなかったコーナーに取り寄せたのと同じカビ取り剤が売られているではありませんか。もう少し早く出してくれ!取り寄せ料の2€を完全に損しました。まあ仕方ないですね。ちなみに私が取り寄せたからついでに売り始めたわけでは…ないと思います笑。
取り寄せたものとは別のブランドも売られていたので、比較のために購入。「おのれ奴らめ、一斉摘発してやる」と息まいて帰宅し、早速退治スタートです。しかしこれは長い戦いの始まりでした…。
薬剤を撒く前にまず一体となって固定されているクローゼットと棚のネジを外して解体し、手前に引き出す。すると悪の巣窟が姿を現しました。緑色のカビが蔓延り、彼らが吐き出す湿気で壁が濡れています。クローゼットの裏側の板は薄い合板なので濡れて湾曲していました。奴らを白日の下に晒したところでまずはアルコール除菌シートで拭き取ります。マスクをしていましたが、何とも言えない凄まじいカビの臭いが辺りに充満しました。ちなみにカビはクローゼットの裏板を通り越して中にも進出し始めていたので、あと数日遅ければ洋服にカビが移るところでした。危ない危ない。
拭き取りで大方のカビは無くなりましたが、根元から抹殺するためいよいよ薬剤を投入します。まずは写真左のブランドから。さらさらとした液体で、吹き付けるとすぐに流れ落ちてしまいます。キッチンペーパーを当てて様子を見ることにしました。一方、離れた壁面で右のブランドも試すと、こちらは少し泡状になって出てくるので少し滞留時間が長いです。これをビニール手袋をした手で伸ばしていくと作業が早く進みそうだったので、こちらのブランドを主力に採用することにしました。ちなみに両者とも、カビの取れ具合に差は感じられませんでした。
壁面一体を薬剤で覆いつくすと、今度は塩素の臭いが部屋に充満します。そういう薬剤なので当たり前なのですが、扇風機を最大出力で稼働させてもなかなか窓から空気が出て行ってくれません。しかもこの日も雨が降っていたのであまり窓を全開にするわけにもいかず…。次第に頭痛に襲われながらも、なんとか居間のすべての箇所に薬剤を撒き終わりました。本来は水で洗い流さないといけないのですが、居間なので地道に濡れ雑巾で拭き取ることに。バケツでこまめに雑巾を洗いながら作業を進めていくと、水がペンキの白色になってきてしまいました。やれ、薬剤がペンキを溶かしたか。あまり拭きすぎると何が起こるかわからないので、3周でやめておきました。
作業開始から4時間あまり、部屋の中は棚とクローゼットから出した物で散乱し座ることもできないまま、何とか終了。奴らの残骸は完全に無くなり、「兵どもが夢のあと」となりました。クローゼットと棚は少し壁から離して再設置。棚の板は壁にぴったりの寸法で切り出されていたので、解体と再設置には苦労しました。
とりあえず夕飯を食べに外に出ようとヴェルサイユ・リーヴゴーシュ駅前のマクドに行って、帰ってきてみたら塩素の臭いが全然抜けていない。頭痛と鼻炎が割と酷くなってきたので、気分転換を兼ね夜のヴェルサイユをあちらこちらと散歩。何だかんだで午前1時になってしまいました笑。
今では居間のカビはすっかり退治できたようですが、戦いはまだ終わっていません。シャワールームとトイレ周辺の配管近くにまだ大勢います。明日にでもやらねば…。しかも奥の方は手が届かなさそうなので、どうしようか思案中です。

こうしてカビ退治ができたとはいえ、カビが生える元凶の一つである湿気をどうにかしないと、また彼らは戻ってきてしまいます。困ったことにわが家には換気扇というものがなく、シャワーを浴びると湯気が抜けず、洗濯物は生乾き臭を放ちながら中々乾いてくれません。このためAmazon.frでデロンギ社製の除湿器を購入。昨日から稼働を始めましたが、数時間でタンクに面白いほど水が溜まります。湿気退治とこまめな掃除で、もう彼らに会わないことを願うばかりです。

今回は生活の困り事についてでした。次回は
今週末にリヨンの「光の祭典」を観に行くので、その模様をお伝えします。

フランスのお買いもの事情

31 10月 2018
フランスのお買いもの事情 はコメントを受け付けていません

フランスの国民的スーパー、Monoprix

先週あたりから急に寒くなり、朝晩は5℃を下回る日が続いています。少し前まで半袖だったのが嘘のよう。
結局、先週末は出掛けることなくヴァイオリンの練習に専念していました。随分前から課題になっていた構え方を研究していて、試行錯誤した結果ようやく楽な構え方を発見。今はそれを安定させるべく努力しているところです。

変わったことといえば、フランス国鉄の青少年割引カード「カルト・ジュヌ(La carte jeune)」を買ったことと、住宅補助(CAF)を申請したこと。
カルト・ジュヌは27歳までの青少年が利用でき、50€のカードを購入すると各切符の割引料金が1年間適用されます。国鉄のインターネットサイトで購入して、「Libre borne service」なる自動券売機で発行、証明写真を貼って窓口で脱落防止用の保護シールを上から貼ってもらえば完了。カルトというのだからポイントカードのような小さくて硬いものなのかと思ったら、普通の国鉄の切符と全く同じ薄い紙でした…。まるで大きい駐車券のようです。

住宅補助(CAF)の申請は大抵の場合早々に行うものなのですが、出国前のキャンパス・フランスの説明によると学生証が必要とのことだったのでそれを待っていたのです。私が通う語学学校には学生証はないらしく、音楽院に入学したのでその学生証を使おうと思っていたら、郵送されてくるはずのものが待てど暮らせど来ない。キャンパス・フランスのサイトには「住み始めて3か月以内」と記載されていたので待つのはもう限界となり、語学学校の入学許可証を代用することにしてネットで申請しました。ところが提出した書類は今のところパスポート、滞在許可証、出生証明書(戸籍謄本を翻訳したもの)のみ。これから求められるのでしょうか…。追ってまた詳細を書きます。

さて今回はお買い物編ということで、私の3か月あまりのお買い物事情を書いてみようと思います。
日頃の食料品他の買い物は専らMonoprixに行っています。これはフランスの国民的スーパーの一つで、ヴェルサイユにももちろんあります。品ぞろえもある程度良く(店舗によって多少異なります)、生鮮食品を除いてほとんど全ての品目にあるプライベート・ブランドは安価で購入することができます。ちなみにこれらはポイントカード(Carte de fidélité)を提示すればさらに割引になることも。ポイントが貯まれば支払いに使えるので必ず作りましょう。
青果は山積みになっているところから選ぶわけですが、時にはあまり新鮮とは言えないことも…。ちなみに店内にはハエが飛んでいます(笑)が、フランスの方々はあまり意に介さないようです。重さによって価格が決まることが多いので、なるべく可食部が多いものを選ぶことをお勧めします。
生肉、鮮魚は個別に店員がいて、その場で切って重さを計ってくれます。しかし値段が高いので、今では専ら「Prépare」と呼ばれる整形時の破材を買うようにしています。比較的値段が安く、大きな店舗には必ずあると思うのでお勧めです。
フランスは日本に比べて物価が高いです。分かりやすい例は自動販売機の清涼飲料水500MLのペットボトルが2~2.5€で売っていること。日本なら160円前後ですが、フランスではこれが300円ほどだということです。日本の金額に慣れていると気軽には買えないですね…。しかし面白いのが、2Lの同じような清涼飲料水があまり変わらない値段で売っていること。大家族に優しく、一人暮らしにはあまり優しくない経済なのですね。今では2Lのモノプリブランドのジュースを500MLのペットボトルに毎日入れて持ち歩いています。ヨーロッパは乾燥しているので飲み物は必需品です。
日用品もMonoprixで売っていますが、何にせよ値段が高い。これを見越して出国前に日本の100円ショップで日用品をできるだけ買って持ち込んだのが正解でした。フランスの経済には貢献しませんが、これから渡仏する方は是非、100円ショップでできるだけ多くのものを揃えることを強くお勧めします。

今回は少々長くなりましたね。今日の夜から南仏旅行に行ってくるので、来週はそのレポートです。お楽しみに。

サン=ルイ地区

24 10月 2018

サン=ルイ大聖堂の正面ファサード

今回は私の住む地区のランドマーク、サン=ルイ大聖堂の前からお送りします。
このサン=ルイ地区はヴェルサイユ宮殿から見て右に位置する旧市街で、左のノートルダム地区と共に旧体制時代の面影を色濃く残す風情豊かな街です。サン=ルイ大聖堂はルイ15世の時代に建てられたので太陽王ルイ14世の時代にはありませんでしたが、革命前夜も三部会開催を宣誓するミサがルイ16世臨席のもと行われたりして、激動の時代を生き抜いてきました。今では特に何もない日は只々市民に開放されるのみで、時たま行ってみるとほぼ誰もいない巨大な空間の中で歴史に思いを馳せたりできるものです。ちなみに大聖堂前の広場ではマルシェが開かれるそうです。そういえば行ったことない…。
この他サン=ルイ地区にはフランス革命の事件として有名な「球戯場の誓い」が行われた球戯場、今でも野菜や果物を収穫できる王の菜園、菜園の排水用に作られた(それにしてはやけに巨大…)スイスの池があります。これは主に国王護衛の任につくスイス人衛兵隊が工事にあたったことからその名がついていて、ただの広大な池なのですが周りには林もあって今ではピクニックや天体観測にぴったりです。

さて、先週末はヴェルサイユ宮殿の王室礼拝堂でヴェルサイユバロック音楽研究センター演奏の、リュリのテ・デウムを聴きに行ってきました。留学中の身、他にもたくさん行きたい演奏会があるので一番安いチケットを買いました。どんな席かなと思ったら祭壇のすぐそば、側廊の下で斜め横から見上げるような形。演奏会として聴くならもちろん中央の少し遠い位置の方が良いのでしょうが、どのような演奏をしているかを見聞きするためにはあまり残響で音が回らないこの位置もまた良いかも知れません。トランペットやオーボエといった華やかな楽器は階上に配置されていたようでよく見えなかったのですが、響きは華麗で荘厳。それと太鼓(ティンパニでない音程が一定のもの)の使い方が斬新で勉強になりました。後半はザルツブルクの作曲家ビーバーのミサ曲。これがもう、眩いばかりの豪華さ!コルネット、トロンボーンも加わりほぼ全曲にわたって金管楽器が鳴っているような印象でした。ふう、お腹一杯。
10月からようやく始まった音楽院の授業ですが、なんと今週からいきなり2週間のバカンスに突入してしまいました。いやはや何という緩さ。11月にはクープランを特集する演奏会が予定されていて、それに向けた室内楽のリハーサルも11月から再開です。っていうか11月からで良かったんじゃないかね。
そんなわけで、この2週間は9月と同様ヴァイオリンの練習と語学学校に通う日々になります。来週に旅行を予定していますが、それはまた後ほど。

最後に前回書いた、なぜこのブログは水曜日更新なのかということをお話ししましょう。水曜日はフランス語でMercredi、つまりメルキュールの日という意味です(これは古代ローマ由来です)。メルキュールとはローマ神話に出てくる最高神ジュピテルの伝令使で、フランス・オペラではジュピテルの周りでちょろちょろと駆け回るお調子者として描かれることが多いのですが、とにかくこのメルキュールには伝令の役割があるのです。17世紀末から発刊された文芸雑誌「メルキュール・ド・フランス」もその名を借りているように、このブログもフランスから日本への便りということで、この伝令使メルキュールに引っ掛けてみることにしたわけです。

今回はこの辺りで。次回はお買い物事情をお話しします。

出国、そしてヴェルサイユへ

17 10月 2018

毎日通っているソー通り。右は小厩舎、奥はヴェルサイユ宮殿。

こんにちは、佐藤駿太です。この度、私の留学生活と音楽活動の記録、及びフランスの日常、特に私の住むヴェルサイユの情報などを発信すべく当ブログを立ち上げることとなりました。日頃私と親しくして下さる音楽家の皆様や愛好家の方々はもとより、これから音楽留学などでフランスでの生活を考えている方などのご参考になれば幸いと存じます。今回は第一回目として、入国してからの約2か月間を簡単にご紹介できればと思います。仔細に書くととても長文になるので、個々の話題についてはこれから章立てして詳しくご紹介できればと思っています。

7月31日、羽田空港から一路エールフランス航空でシャルル・ド・ゴール空港へ。夜20時頃でしたが昼間かと思うほど明るく驚きました。翌日にはまず最初に大事な携帯電話の契約。私が選んだのはFreeという会社で、なんと自動販売機の操作だけでSIMカードが買えてしまうのです!しかも1か月あたりデータ容量最大50GBで8.99€!安い…。
その翌日にはヴェルサイユの新居へ入居。大家さんはとてもやさしい母娘のマダム2人で、娘さんはなんと日本に留学した経験があるとのこと!最初メール交換した時はびっくりしました。その場で電力会社EDFとの契約。電話口で大家さんが助けてくれたので分からないフランス語の質問も何とかクリア。
落ち着いたところで移民局へ書類を送付。2週間も経たずに出頭日時の通知が送られてきましたように記憶しています。出頭当日は待ち時間が長かったものの簡単に質問と書類チェックがあっただけであっけなく終わりました。
8月は学校の授業がないので、手続きが一通り済んだら観光です。Navigo(パリのPASMOです)の1か月定期でパリはもちろん郊外にも行き放題なので、宮殿やフランス式庭園を求めていろいろなところを周りました。他の時間は家で練習…のはずでしたが、この時期はまだ暑く窓を閉め切って練習するのは10分と持ちませんでした。フランスの住居は一般的に冷房がなく、しかも私の部屋は最上階なので日当たりが良いのです。でも今年は特に暑かったのだそうで、大家さんも体が参っていると言っていたほど。
程なくしてヴェルサイユ宮殿の夜会でこれからの師匠パトリック・コーエン=アケニヌ氏と一年ぶりに再会。彼とその団体は夏の期間中毎週土曜日にこの夜会を担当していて、彼らは今を生きるヴェルサイユのオルディネール(常任奏者)なのだなあと思いました。
その他パリに来るフランス在住の友人と会ったり、去年滞在したときにお世話になったTさんが帰国するにあたって、電子ピアノを始めいろいろなものを譲っていただいたりしました。

9月に入りパリの語学学校がスタート。とりあえず一年、音楽院の授業が重ならない平日は毎日通います。特にアジア人をターゲットにした珍しい語学学校で、授業の中でも「日本はどう?中国は?韓国は?」と文化交流したり和気あいあいとしています。
10月になってようやくヴェルサイユ地方音楽院の入学試験があり、無事に合格。向こう一年の本番スケジュールを見ると、これはとても充実した一年になりそうです。古楽アンサンブルの授業もこれからが楽しみです。

長くなりましたが、初回はこの辺りで。毎週水曜日に更新していきたいと思いますので、これからどうぞよろしくお願いします。次回は私の住んでいる地区のことを少し詳しく書いてみようと思います。ところでなぜ水曜日かと?それも次回書きますね。

« 前ページへ