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ヴェルサイユ宮殿観光の手引き・国王のプティ・アパルトマン編

16 9月 2020

振り子時計の部屋

なぜか今週に入り突然暑くなり、昨日の気温は33℃。一体どうしたというのでしょうか…。夏用の服は母に持って帰ってもらってしまったので、Tシャツのローテーションがかなりきついです。
来週に修了リサイタルを控え、今週は自主練習とリハーサルの合間を縫い、少しずつ月末の帰国に向けた片付けをしています。

今回はヴェルサイユ宮殿シリーズのラストを締めくくる、国王のプティ・アパルトマンをめぐるガイドツアーに参加した感想をお送りいたします。
以前から「マルスの間」の扉の向こうや「閣議の間」の先に連なる部屋を巡るガイドツアーが行われているのを見て行ってみたいと思っていましたが、気が付いたら留学も最終盤になってしまいました。公式サイトから10€のガイドツアーを予約していざ宮殿へ。
集合場所は正面に向かって左の閣僚棟になります。チケットの画面を見せて、ガイドの解説(フランス語のみ)を聞くためのイヤホンを装着して出発。一般客と同じ入口から入るためやや列が途切れそうになりながら、荷物検査を済ませ大理石の中庭まで進み、宮殿全体の簡単な説明があった後に、向かって右側に位置するアデライード王女のアパルトマンの出口の右にある柵を開錠し中に入ります。ここ通ってみたかった!
プティ・アパルトマンに入る前に、まずこの場所にかつてあった「大使の階段」の模型見学と解説があります。「大使の階段」は1679年に完成した壮麗な空間で、国王のグラン・アパルトマンに通じる公式階段として訪問者を出迎えていました。多色の大理石と金鍍金のブロンズ、ル・ブランの絵画により装飾された美しい空間でしたが、ルイ15世時代になると次第に使われなくなり荒廃したためと、王が内殿の拡充を望んだことから1752年に取り壊されてしまいました。代わりに造られた簡素で狭い階段はこの見学の最後に通ることになります。
マリー・アントワネットの肖像画が掛けられた玄関ホールと衛兵の間を抜けて、手摺の下に繊細な装飾が施された「王の階段」を登って行くと、「犬の控えの間」に着きます。名前の由来は金鍍金が施された繊細な猟犬たちの装飾によっていて、この一帯の部屋は「狩猟」がテーマになっています。ルイ15世も歴代の王同様に狩猟を好んでいました。室内を飾る絵画の内数点がモノクロの複製品になっているのですが、かつてそこにあった絵画をイメージして挿入しているか、あるいは修復中でしょうか?
「狩帰りの食事の間」では週に1度か2度、狩猟から帰ってきたルイ15世が取り巻きと共に食事を摂っていました。室内の装飾は簡潔ながら洗練されており、今日では稼働していませんがルイ16世時代に製作された豪華な気圧計が置かれています。
少し順路を戻って「振り子時計の間」を通過し、「ルイ15世の寝室」に案内されました。「振り子時計の間」は素通りかと思い素早く写真を撮りましたが、後でちゃんと戻るのでご安心あれ(笑)。ルイ15世は、ルイ14世が晩年使用していた城館の中央にある「王の寝室」では実際に就寝せず、儀式用の寝室として実際の寝泊まりはこの「ルイ15世の寝室」でしていました。もっとも、儀式用の寝室はグラン・アパルトマンにもあるのですが…。ここも非常に洗練された装飾で、扉の上にはルイ15世が愛した王女たち(娘としてだけではなく女性として愛していたという噂もある…意味深)の絵画があります。部屋の大半は白い布で仕切られその奥が見えないようになっていたのですが、色々な写真を見てみると寝台を置くためのくぼみであるアルコーブがあるようですね。現在は修復中なのでしょうか?
「振り子時計の間」に戻ります。ルイ15世は天文学に興味を持っており、現在も稼働している年月日、月の弦を表示する振り子時計が置かれているのが部屋の名前の由来です。この時計はフランス王国で初めて公式時間を定めるのに使用されました。また部屋を斜めに横切るように床に埋め込まれている銅の線はパリ子午線を表しています。この部屋の装飾も繊細で美しく、特に天井のシャンデリアを吊るす部分と北側の壁面の羽目板装飾が凝った作りだなと感じました。
次は「王の奥の間」または「角の間」。ちょうど城館の角に位置しています。この部屋で、ルイ15世はポンパドゥール侯爵夫人の葬列を涙ながらに見送ったとか。毎度同じ感想ですが、今回は奥の間だけあって非常に洗練され凝った装飾があしらわれています。まさにルイ15世ロココ様式。ルイ14世のバロック様式も圧倒的な美しさがありますが、これはこれでまた圧巻です。今日この場所にある家具も凝ったものばかりで、部屋によく調和しています。
「次の間」、「黄金の皿の間」、「浴室」と小さい部屋が続きます。ルイ14世時代までは王の絵画、書物、宝物などの展示スペースになっていて、ダ・ヴィンチのいわゆる「モナ・リザ」もかつてはここに展示されていました。「黄金の皿の間」は特別に装飾が細かく、壁面の羽目板装飾には様々な楽器がデザインされています。これはかつて、ヴァイオリンを巧みに演奏し音楽を愛していたアデライード王女の奥の間だった事に由来します。「浴室」は羽目板部分に水浴びする人々が描かれている装飾が施され、水の喜びを表しています。ルイ14世は大の風呂嫌いで生涯で数回しか入浴しなかったそうですが、ルイ15世はそうではなかったようですね。浴槽はルイ16世によって使用用途が変更されたため撤去されてしまいました。
次からはルイ16世様式の部屋になります。「ルイ16世の図書室」は地理学が好きだったルイ16世のお気に入りだった部屋で、地図を大きく広げるための大きな円テーブルや地球儀があり、壁面は金で縁取られた本棚で占められています。面白いのは2つある通路の扉までまるで本棚であるかのように、本の背表紙たちだけが扉に据え付けられていること。扉を開けるときに妙な感覚がします(笑)。
次の「磁器の食堂」はルイ15世が狩り帰りの夜食のために整備しましたが、主にルイ16世時代に盛んに使用されました。最近修復が行われたのか、目を見張るほど金鍍金の装飾が鮮やかで、椅子と扉を隠すカーテンの水色とのコントラストも相まって非常に美しいです。部屋の名前の由来は、ルイ16世が毎年クリスマスになるとこの部屋で王立セーヴル製陶所の新作を紹介したことだそうです。
大アパルトマンに通じる狭い階段に面した「軽食の間」は現在セーヴル焼を展示するコーナーになっています。ここから扉を開けて、大アパルトマンのヴェニュスの間へ入る体験が少しできます。
階段の反対側には「ルイ16世の娯楽の間」がありますが、明かりがつけられておらず入り口から中を覗くだけでした。ここはかつて、ルイ14世の「珍重品陳列室」であり「豊穣の間」から入れる部屋でしたが、その後改装され原型を全く留めていません。ルイ16世時代には王が親しい者たちとコーヒーを飲んだり娯楽に興じたりする空間でした。
階段を下りて「大使の階段」の模型があるところまで戻り、見学は終了です。その場で解散になるので、ここから個人的にグラン・アパルトマン等の見学を始めることもできます。

ロココ様式の粋を見ることができる国王のプティ・アパルトマンの見学ツアー、是非予約して行ってみて下さいね。
次回は私の修了リサイタルの模様をお伝えします。


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