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王の菜園と小厩舎

8 5月 2019

王の菜園は今日もなお現役

先週あたりから急に寒さが戻ってきてしまい、まだコートを着て出歩いています。家にいても暑くないので快適ではあるのですが、5月にもなってこれはどうしたことでしょう。
フランスでは今日は戦勝記念日で祝日です。日曜と祝日は学校が開いていないので狭い家に籠って練習するしかないのが悩みどころ。

さて、今回は現在ヴェルサイユで行われている建築と景色の展覧会に合わせて、王の菜園と小厩舎を紹介します。
王の菜園は以前紹介したサン=ルイ大聖堂とスイス衛兵の池の間に位置している畑です。元はルイ14世の食卓に並ぶ野菜や果物を栽培していたところで、菜園の中に銅像がある造園技師ジャン=バティスト・ド・ラ・カンティニにより1683年に設立されました。彼によってこの菜園では温室の設置など最先端の栽培法が実践され、当時は貴重品であったグリーンピースの栽培にも成功しました。その後も国王の食卓を潤すための菜園として機能し続け、1874年には国立高等園芸学校が開校、現在は国立高等造園学校となっています。それぞれの区画では希少種の保存や古い栽培法の伝承、有機栽培の実践が行われており、学生による実験区画もあります。
サン=ルイ大聖堂を左手に臨みマルシャン・ジョッフル通りを進むと小さい建物(道に面している部分が細長くなっている)がありますので、そこにある受付で通常は入場料を払い入園します。右手には温室、中央部分には畑、左手と畑の奥には果樹園があります。中央部分は壁で覆われ、土地が一段低くなっています。これは風の影響を和らげ、また太陽光が壁に当たることによって発せられる熱によって菜園内の温度を上げる工夫だそうです。中央部には水汲み場として機能する噴水があります。
右手奥にある比較的大きな建物には今回は入ることができましたが、普段は立ち入りできないかもしれません。入場した建物とちょうど対角線上にある小屋には直売所があり、野菜やジュース、ジャムなどが売られていました。本当は今旬の苺があれば買おうと思ったのですが、もう過ぎてしまったようです…。来年はちゃんと調べて買いに行こう。
散策する際は整然と区画分けされた畑や見事に整形された果樹、スイス衛兵の池側に設けられた国王のための門を見てみると良いでしょう。
サン=ルイ大聖堂の周辺では展覧会に合わせた「庭園のエスプリ(精神、気質などの意)」と題した祭りが開催されていて、花などの植物、造園器具や置物まで扱う一大マルシェとなっていました。盆栽もありましたよ(笑)。

さて、今回の展覧会はヴェルサイユの様々な施設で開催されていますが、その一つに通常はガイド付きでしか見学できない小厩舎も含まれているので、この機会に初潜入しました。
小厩舎はジュール・アルドゥアン=マンサールの手によって設計され、対となる大厩舎と並行して1679年に着工されました。宮殿を正面に見て左側にあるのが小厩舎です。この施設は馬車用の馬と馬車が収容され、蹄鉄製造所も併設していました。その後革命を経て軍の施設となりますが、現在では国立高等建築学校とフランス美術館研究修復センターが建物の一部を使用しており、ルーブル美術館の彫刻収蔵品やヴェルサイユ宮殿の彫刻のオリジナルを保管、展示しています。厩舎としての機能は今日ではありません。
宮殿側の入り口は閉まっていたので大回りして裏側、リーヴ・ゴーシュ駅周辺の商店近くから入館。少し前までこの付近は工事中だったのですが、いつの間にか完成してすっかり整備されました。この入り口にある建物が蹄鉄製造所であったようです。
厩舎内部に入ると、全方向にひたすら大小の彫像と建築物の一部のコピーが陳列されています。ちょうど正面に、有名なヴェルサイユ宮殿のラトーヌの泉水にあった彫像のオリジナルがありました。他、古いイタリア彫刻を17世紀以降にコピーした彫像や、いかにも古そうなローマの衣装を纏った首や腕が欠けているものも多い彫像などがあります。こうした彫像から当時の服飾、ジェスチャーを垣間見ることができるのは言うまでもないでしょう。
左手奥では打って変わって現代アート展が開かれていました。さっと見て終わりました。

大厩舎もまだ入ったことがないので、来週は大厩舎についてお伝えしようと思います。

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