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国王戴冠とシャンパンの町ランス

9 9月 2020

ノートルダム大聖堂の正面で記念写真

先週はフランスに滞在していた母と共にシャンパーニュ地方の町、ランスへ行ってきました。
パリの東駅からTGVに45分程度乗れば着いてしまうランス、歴代国王が戴冠した町だけあって1度行かなければと思っていながらなかなか実現せずにいました。近いと逆にいつでもいいやと思ってしまいますよね。しかし今回、母が喜ぶシャンパンのセラーも目的の一つとしてついに行くことになりました。
駅を降りると、正面にさりげなくジャン=バティスト・コルベールの銅像があります。ここは最後帰るときに通ったのですが、ルイ14世の財務を支えたコルベールはランス生まれなんですね。
駅から15分ほど、17-8世紀の古い街並みを楽しみながら歩いていくとランス・ノートルダム大聖堂の鐘楼が見えてきました。見るからに装飾の細かいゴシック建築です。正面に回ってみると、聖人などの彫刻で扉付近が埋め尽くされていてものすごい迫力があります。
しばらく大聖堂正面を観察した後、朝一番に入場予約をした大聖堂に隣接するトー宮殿へ先に入りました。今はコロナウィルス対策でどこも事前予約が必須で、旅行をするにもあまりスケジュールの融通がききません。
トー宮殿は平時は大司教の住まいで、新国王が戴冠するためにやってくるときには御座所として使用され、様々な祝典も行われました。現在は戴冠にまつわる宝物や大聖堂の彫刻のオリジナルを保管する博物館になっています。入って早々、大きな不発弾が置かれていて何だろうなと思っていたら、ランスは第一次世界大戦中にドイツ軍との戦闘の舞台となって、かなりの被害を受けたんですね。砲撃後の町の写真や、鉛が溶けだして固まってしまった大聖堂のガーゴイル(雨水を排出する役割を持つ彫刻)などが多数ありました。

シャルルマーニュの護符や戴冠式で使用する聖杯

階を上がると大きな饗宴の間があります。立派な暖炉と高い天井を持つこの部屋で戴冠に際する饗宴が催されていたんですね。
順路を進み宝物を保管している部屋に行くと、シャルルマーニュの護符や戴冠式で使用する聖杯などがあります。シャルルマーニュの護符は注意しないと見逃してしまうほど小さなものですが、とても価値のある品です。
オリジナルの彫刻が陳列されている部屋を通ると順路の最後に、大聖堂の中央扉の上を飾る彫刻のオリジナルがあります。聖母マリアが冠を授けられている様子を描いていますが、冠が風化していてまるで拳骨を食らっているようだと母が言っていました(笑)。向かって一番右の天使がにんまり笑っているのでこれが有名な「微笑みの天使」かなと思ったのですが、笑っている天使の彫刻はいくつもあるようで、一番有名なのは正面扉付近にあるものらしいです。

西側正面の室内側の聖人たちとバラ窓

宝物やオリジナルの彫刻を見終えたところでいよいよ大聖堂へ。まず入って驚いたのは西側正面の室内側にも聖人たちの彫刻があること。様々なゴシック聖堂を見てきましたが、内側にまでこういった彫刻が施されている聖堂は初めて見ました。上下2つのバラ窓、その中間に位置する横長のステンドグラスの美しさは写真では到底伝わりません。そして何といっても天井が高い!中心部の高さは38mあり、フランスで最も高いとのこと。
中央を祭壇に向かって進んでいくと、「ここで聖レミがフランク王クロヴィスを洗礼した」と書かれた石板が床にはめ込まれています。古い聖堂の位置から、おそらくこの付近でフランク王国の初代国王クロヴィスが洗礼を受けたと考えられています。フランク王国は現在のフランスの起源となった国で、初代のクロヴィスがレミギウス司教(聖レミ)から洗礼を受けたことに由来し、その後ランスの司教から聖別されて戴冠しなければフランスの正式な国王として認められないという慣習が定着しました。そのためルイ14世は勿論の事、ほとんどの歴代国王がこの大聖堂で戴冠しています。戴冠式が行われる聖堂として多くの参列者を収容する必要があることから、次第に増築され現在のような大規模な聖堂となりました。
祭壇に向かって左方にある北側のバラ窓は天地創造を表していて、下には立派なオルガンが備え付けられています。通常祭壇と向かい合うように西側にある事が多いオルガンですが、この聖堂は西側の大部分がステンドグラスであるため設置する場所がなかったのでしょう。
奥に向かって進むと白いドレスと甲冑を着たジャンヌ・ダルクの像があります。百年戦争中のフランス国王シャルル7世にここで戴冠するよう勧めたジャンヌですが、この像はその後の悲しい末路を予感させるようです。
祭壇裏の北側のステンドグラスはバラ窓と違って近代的なデザインのものになっています。これは1974年にシャガールが寄進したもので、非常に評価が高く有名なのですが私としてはやはりゴシック建築に合う古いステンドグラスの方が好みですね。
南側へ移動していくと、「死と復活の祭壇」とその手前にローマ時代のモザイク床があります。祭壇の彫刻も素晴らしいのですが、古代ローマファンとしては先にモザイク床の方へ目が行ってしまいました。ローマ時代、ここには浴場があったようです。
南側のバラ窓は復活を表しています。大きな円の中に小さい円を組み合わせたデザインで、下にある3つの中くらいの円とよく調和していますね。
南側の身廊にはここで戴冠した25人の国王の名前が刻まれた石板があります。ほぼフランス国王一覧といった感じです。
最後に改めて大聖堂を眺め、戴冠式の際の華やかな様子に思いを馳せて見学を終えました。本当に来てよかったです。

母の目的であるヴーヴ・クリコのワインセラーに向かう途中に聖レミ旧大修道院(聖レミ聖堂)がありうまく立ち寄ることができました。聖レミの遺体が安置されている聖堂で、ロマネスクとゴシックの様式が混在しています。西側正面は先ほどの大聖堂で、彫刻で覆いつくすような壁面を見てしまったのでやや簡素に見えてしまいますが、ロマネスク様式の建物をゴシック様式で装飾していることを考えると標準的といったところでしょう。
聖堂内へは南側から入ります。内部に入って驚いたのが、外観のやや質素な印象と打って変わって内部は壮大で身廊の幅が広くとられており、特に驚いたのは側廊の2階部分に当たる階上廊(トリビューン)が1階部分と大差ないほどかなり大きく設計されているということです。また西側のステンドグラスもノートルダムに負けないほど美しいです。
南側の身廊にはこの聖堂で戴冠した9-10世紀の3人の国王の名前が記された石板がありました。何故3人だけこの聖堂で戴冠したのか気になりましたが調べても良く分かりませんでした。ただ同じようにランスの司教から聖別され戴冠しているので意味はさほど変わらないのだと思います。
祭壇の奥に聖レミの遺体が安置されていますが、この構造物は19世紀に再建されたものだそう。唐草模様のようなデザインの金属製の扉が備えられていて内部が良く観察できませんでしたが、金色の小さな祭壇があります。これを取り巻く仕切りは非常に豪華なバロック様式のもので、大理石の円柱の間に歴代の司教(だと思います)などの像が並んでいます。
北側に聖レミ博物館が併設されていますが、ちょうど昼休みだったので後で入ることにし、いよいよ母お待ちかねのヴーヴ・クリコのシャンパンセラーへ。

ヴーヴ・クリコのシャンパンセラー

今回は母のために英語の解説による一人あたり55€のツアー「クリコのサインClicquot
signature」を予約しました。ヴーヴ・クリコの歴史を知りながら迷路のようなシャンパンセラーを進んでいき、終盤で2つのシャンパンのブラインドテイスティングがあるコースです。
受付でEチケットを見せて待合室で待つことしばし、ガイドの男性に導かれ道路を挟んで反対側の建物から階段を下りセラー見学が始まりました。ただこの人、英語がフランス語訛りかあるいはどこかの言語訛りなのか、何を言っているのかとにかく全然分からない(笑)。それでも渡されたタブレットや途中にある画面での動画による解説や、ボトルを保管する棚、ボトルを回転させる機械などを見ることで楽しむことができました。セラー内は寒いかと思いきや、長袖程度で十分の温度でした。
ブラインドテイスティングでは最初に注がれたシャンパンの方が馴染みのある味で、2つ目の方は少し後味が残る感じで私は1つ目の方が好きだったのですが、種明かしが行われると2つ目の方が熟成されたシャンパンでした。値段もかなり違うと思います。まあ私にはもったいないということでしょうか。ちなみにテイスティングといっても結構大きなワイングラスに半分ほど注いでくれるのが2杯なので、私は結構酔いました(笑)。
最後に1900年代から年号が書かれた階段を上って見学終了。時々飛んでいる年があるのが謎でした。ブティックでは母がロゼの辛口シャンパンをお買い上げ。日本で買うよりもずっと安いです。

ほろ酔いで歩きながら元来た道を戻り、聖レミ博物館へ。ベネディクト会の修道院だった18世紀の建物を使用していて、均整のとれたバロック建築になっています。展示室には先史時代からの日常品、武器、彫像といったあらゆるものが所蔵されていて、私の好きなローマ時代の品もたくさんありました。

パリから気軽に日帰りできる町ランス、皆様も是非行ってみて下さいね。
次回はヴェルサイユ宮殿シリーズ、ガイドツアーでしか行けない国王の私的アパルトマン群をご紹介します。


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