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【最終回】いつも心にヴェルサイユを

2 10月 2020
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最後にもう1度訪れた際のヴェルサイユ宮殿

ヴェルサイユに居を構えてから2年と2か月、ついにこの地を去る時がやってきました。右も左もわからないままフランス生活を始めた日が昨日の事のような、本当にあっという間の留学生活でした。
そういうわけで、今回は帰国に向けた撤退の模様と、留学の総括を書きたいと思います。
先週のリサイタルが終わってから一夜明けた火曜日から部屋の片づけを開始。その前から少しづつ着手する予定でしたが、まだ使うものが多いのと、追い詰められないとなかなかやらないのもあってあまり進捗は良くありませんでした。夜はパトリックの家に行って晩餐会、最初に私が蕎麦を出し、続いてパトリックがフランス料理の茄子の炒め物を出し、最後に私が昼間作ったわらび餅を出す日仏文化交流。蕎麦を食べ終わった後はちゃんと蕎麦湯を飲みましたし、わらび餅は彼らにとって非常に興味深いものだったようです。
水曜日から日曜日までは、なんとドイツ旅行に出かけました。帰国準備をしないといけないのは分かっていながら、やはりどうしても1回ドイツには行っておきたかったのです。もっと早く行けばよかったんですけどね。ベルリン、ライプツィヒ、ノイエンマルクト、バイロイト、ニュルンベルク、ネルトリンゲン、マンハイムを訪れました。音楽関係ではフリードリヒ大王のロココ趣味を直接感じるためベルリンのシャルロッテンベルク宮殿とサン・スーシ宮殿へ、ライプツィヒではもちろんバッハが勤めていた聖トーマス教会と聖ニコラス教会、バッハ博物館、シューマン邸、バイロイトでは規模は小さいながらもバロック様式の劇場ががほぼそのまま現存する数少ない例であるバイロイト辺境伯劇場と外観だけヴァーグナーのバイロイト祝祭劇場、あと懲りずに宮殿観光、マンハイムではマンハイム楽派の作曲家が活躍したマンハイム宮殿へ行きました。その他はドイツといえばやはり鉄道ということで、各地に点在する蒸気機関車を中心とした博物館に行きました。あとはやはり人間の負の歴史もしっかり見ておこうと思い、ベルリンの壁や東西冷戦の痕跡が残る場所、そしてベルリン近郊にあるザクセンハウゼン強制収容所に行きました。ドレスデンやハンブルク、ケルンなどにも行きたかったのですがどうしてもこれ以上予定を詰めることができませんでした。
そんなわけで月曜日になり、本格的に片付け開始。掃除は来た時よりも美しくをモットーに念入りに行っていきましたが、荷造りの方は遅々として進まず…。あとやはり最後にもう一度ルーヴル美術館とヴェルサイユ宮殿に行っておきたくて、それでも時間を使い水曜日の夜になってもかなりの物がパッキングされていない状態になってしまいました。もうこうなったら徹夜作業、最後の夜で感傷に浸る間もなく朝を迎えました。厄介なことに出発の朝はあいにくの雨、桐朋時代からの先輩が大変ありがたいことに手伝いに来てくれましたが、2人でも2つのスーツケースと段ボール箱を運搬して雨の中を行くのは困難でした。しかもリーヴ・ゴーシュ駅にたどり着いてみるとC線が運転見合わせ状態になっていて、改めてヴェルサイユ・シャンティエ駅まで歩く羽目に。ちょうど9月いっぱいでナヴィゴが期限を迎えてしまい、切符を買おうと思ったら月初めでナヴィゴをチャージする人が多くラッシュ時であったこともあって券売機は長蛇の列…。改札を通った後は改めて階段が多いのを感じながら、国鉄、メトロを乗り継いでオペラからロワシーバスに乗車しました。価格も高く酔うので嫌いなのですがもう必要悪です。空港に着く頃には段ボール箱が濡れてかなり強度が落ちており、大きいラップでぐるぐる巻きにするパッキングサービスを初めて利用しました。出国審査は空いていてすぐ終わりましたが手荷物検査が全然進まず20分ほど待たされ、気が付いたら搭乗時間ぎりぎりに。急いで携帯SIMの解約電話をかけて、飛行機に搭乗しました。さようなら、ありがとうフランス。
徹夜したので飛行機の中で良く寝られ、飛行時間が短く感じました笑。さて成田空港に着いてみると、3月の帰国時とは違い唾液採取の検査場が設けられ、結果が出るまで1時間ほど待ちました。スタッフの装備もフェイスシールドが追加されています。いや、これ3月以前からやるべきだったでしょう?あの時はこのブログにも書きましたが中国とイタリアのそれぞれ一部地域に滞在していた人は自己申告して専用レーンに行くようになっていました。対策が遅すぎます。やりようによっては内需を維持して経済をあまり落ち込ませないことだってできたはずです。
あと、検査結果を待っている間周りから会話がちらほら聞こえてきましたが、やはり陽性=患者だと思っている人が多いようです。それと、この検査の精度っていかばかりなんでしょうね。
その後は父の運転する車で帰宅しました。さて14日間の引きこもり!

それでは次に、留学の総括をしたいと思います。
世界中の録音や動画を瞬時にインターネットで検索できるようになり、世界のトッププレーヤーも数多く日本にやってくるようになった現代において、果たして留学することに大きな意味はあるのかと留学前は思っていました。しかし実際に留学してみると、そんな考えは完全に誤りであることが分かりました。西洋音楽とは即ち西洋文化であって、西洋の言語、宗教、習慣や建築、美術、文学、演劇など様々な他分野の芸術と相関し、音楽だけを切り離すことはなかなか難しいものです。日本で楽器を習って楽典やソルフェージュをやっているだけでは、西洋音楽に携わるにあたり最低限必要な技術と知識を習得しているにすぎません。本当の意味で西洋音楽を学ぶには、例え1回でもヨーロッパに渡って、歴史的な街並みを歩いたり歴史的建築物の中で演奏してみることは必須の経験だと今は考えています。特にヴェルサイユ地方音楽院は1672年からある、ヴェルサイユ宮殿の一部を成していると言っても良い建物で、一階はあまり改装が行われておらず17-8世紀の音響を学ぶには良い環境でした。響きが良い、というと勿論そうなのですが、良い音を出せば良く響き、悪い音を出せば悪く響くのです。どういう音が良い音なのか空間が教えてくれるという、日本ではしたことのない体験をしました。もちろんヴェルサイユ宮殿の王室礼拝堂、鏡の回廊などもそうであることは言うまでもありません。西洋音楽に携わろうという人、特に古楽を専攻したい方は歴史的建造物の中でこういう体験をすることを強くお勧めします。
次に、ことフランスのバロック時代の音楽を勉強したかった私にとってヴェルサイユは最高の環境でした。宮殿を始め古い建物が多く残っているのはもちろんのこと、このレパートリーに非常に明るいパトリック・コーエン=アケニーヌの下で勉強できたこと、ヴェルサイユ・バロック音楽研究センターのプロジェクトである、学生歌手や少年少女合唱団と毎週のように参加した王室礼拝堂の木曜演奏会、大小さまざまな弦楽器を使用する24のヴィオロンのオーケストラプロジェクトに参加できたのは非常に大きな喜びでした。長年指導にあたっているオリヴィエ・シュネーベリOlivier Schneebeliはかなりの高齢でそろそろ引退する時期だと思うのですが、毎回エネルギッシュに指揮を執る姿がとても印象的でこちらまで力をもらうようでした。また幸いほとんど全ての機会において首席を担当させてもらい、アンサンブルを牽引する役割も学ぶことができました。
その中で残念だったのは、やはり最後まで私のフランス語コミュニケーションが完全ではなかったことです。そもそも自分の考えを他人に分かりやすく伝えることが下手だという問題もありますが、やはりヴェルサイユにいるのですからもう少し美しく趣味良い話し方をしてみたかったです。それでも一年目に語学学校に通い詰めたことで少しはレベルが上がったのか、例えば電気の契約の電話では着いた時はほぼ全く内容が分かりませんでしたが、火曜日に契約終了の電話をした時には8割くらいは分かるようになっていました。ほぼ同じような内容だったと思うのでとても懐かしかったです。
あとは、できれば26歳になるまでにもっといろいろな美術館や博物館に入り、旅行をたくさんしたかったです。いつでも行けると思っているとなかなか行かず機を逸してしまいますね。かなり多くの機会において25歳以下の学生は優遇されるので、留学を考えている方は是非早いうちに行くことをお勧めします。

目を閉じると今でも思い浮かぶのは、まるでオペラの一場面のようなプラタナスの並木道と、その先に聳え立つ壮大で美しいヴェルサイユ宮殿、そしてそこで一緒に活動した先生方や同僚の顔です。私の心の中にはいつもヴェルサイユがあって、いつでも記憶の中を旅することができます。例え2年間だけでもヴェルサイユで活動できて本当に良かったと、これからもそう思い返していくことでしょう。

今回でこのブログは終了になります。2年間に渡りご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。

【完】

ヴェルサイユ宮殿観光の手引き・庭園編②

29 7月 2020
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ルイ14世の威光を示すアポロンの泉水

今週は久しぶりにルーヴルに行ってきました。コロナウィルス対策により事前予約必須で、入口も限定されています。せっかくルーヴル友の会で列に並ばずに入れる権利があるのに、今は一般客列に並ぶしかないようですね…。さらに以前は案内所で配布されていた館内図がなくなっています。館内図なしで周るのはかなり難しいので次回からは持って来なければ。
また今日から南仏へ行ってきます。リゾート地エクス=アン=プロヴァンスや地中海に面したマルセイユ、ニース、モナコを訪れます。


さて今回もヴェルサイユ宮殿の庭園をルイ14世の案内で巡りましょう。ラトーヌの泉水と国王の散策路の間にある眺望点から再開です。

9.「枝付き燭台のボスケの方から下りて行き、途中それを眺めながらサテュルヌ(の泉水)へ向かうように。そこを半周して、国王の島へ行こう。」
枝付き燭台というのはいくつか蝋燭を立てることのできる燭台のことで、この名前の由来は中央の水柱の周囲にたくさんの放水管を備える泉水か木立の形か、あるいはその両方でしょう。木立に入ってしまうと幾何学模様に剪定されていることはあまり分からなくなってしまいますね。サテュルヌは農耕と時の神で、ここでは冬を表す泉水です。中心の羽の生えたサテュルヌの周りに愛の神と貝殻がデザインされています。左に回り込んで、「国王の島」へ進みましょう。

10.「両側に噴水のある土手道の上を進み、大きな池を一周、低い方に着いたら立ち止まって、水柱、小舟、彫刻と柱廊を見るように。」
周辺を池で囲み自らのいる場所を「島」と表現する何とも贅沢な場所ですが、残念ながら大きい池の方は1818年に埋め立てられ、イギリス式庭園へ改造されてしまいました。今日では小さい池のみが残っているので、こちらの土手道を代わりに歩きましょう。夏期の休日は一定間隔で行われる音楽と噴水の華やかなスペクタクルを楽しむことができます。次に進むには本来の道筋通りイギリス式庭園の右手から延びる道を行くか、サテュルヌの泉水まで戻って進んでも良いでしょう。

11.「アポロン(の泉水)へと続く小径まで行き、低い方から回廊(の園)へ入ろう。ひとまわりしてから列柱(の園)へと続く道の方へ出るように。」
ここで言われている「回廊の園」は、1704年頃にマンサールによって今日見ることができる「マロニエの園」に造り替えられました。先王の時代にフランスに輸入されたマロニエの木が中央に2列植えられ、その周辺を古代の著名人たちの胸像が取り囲んでいます。

12.「列柱(の園)へ入り、中央へ進んでから、ひとめぐりして、柱、帯状面、浅浮彫と泉水を眺めるよう。出るときに足を止めて、ギーディーの(「名声」)群像を見た後、国王の散策路の側から(次へ)進むように。」
「プロゼルピーヌを誘拐するプリュトン」の彫像を中心に薔薇色の大理石を使った円柱と浅浮彫、小さい泉水が配置された美しい空間です。建築家としてのマンサールの技量が遺憾なく発揮されていますね。帯状面には渦巻き模様、浅浮彫には楽器を演奏する子供達がデザインされ、薔薇色の円柱と共に華やかさを引き立たせています。「名声」群像というのが何なのかはまたよく分かりません。
13.「アポロン(の泉水)の方へ下りて行き、そこで立ち止まって、国王の散策路に並んでいる彫像や壷、ラトーヌ(の泉水)と城館を眺め、(反対側の)大運河も見るように。同じ日のうちにメナジュリーとトリアノンを訪ねたければ、残りの泉を見る前に行くよう。」
ついに大本命登場…なのですがアポロンの泉水を見るようにとの言葉はありませんね。まあ自明ということなのでしょう。城館の方を見てみると、国王の散策路の傾斜と両側の並木により城館の端が隠されている効果で、今度は逆に城館までが遠く感じ、広大な庭園を巡ってきたのだと錯覚します。戦車に乗った太陽神アポロンは言うまでもなくルイ14世を表し、今まさに水面から出て地上に光をもたらそうとしています。戦車を引く馬は噴水の水飛沫を浴びてまるで汗をかいているよう。周囲には栄光のラッパを吹く従者と海の怪物もいます。言及されていませんがもちろん周囲を回ってよく観察すると良いでしょう。
メナジュリー(動物園)は大運河と交差する小運河の左端に位置していましたが今日では現存しません。トリアノンに行くには右手へ進みます。ちなみに大運河の手前右手にはレストランや土産物店がありますが、この建物は当時同盟関係にあったヴェネツィア共和国から派遣された水夫たちが住んでいたことから「小ヴェニス」と呼ばれています。現在でも夏期には運河でボート遊びができますよ。

14.フロール(の泉水)へと続く小径へ入り、アポロンの水浴(群像)の方へ行こう。そこをひとめぐりして、彫刻、陳列室と浅浮彫を見るように。」
今度は反対側のエリアに入ります。並木のトンネルのような道を進んで右に曲がると、ドームの園があります。ここは何度か改造された後、1677年にマンサールが2つの豪華な大理石のパヴィリオンを建てました。現在ではこれらは礎石を残して失われ、残っているのは泉水を囲む六角形の欄干とさらにその周囲を囲む欄干のみです。これらから察するに、かなり美しい園だったのではないでしょうか。アポロンの水浴というのもよく分かりません。

15.「アンスラード(の泉水)を通り、そこを半周だけして、それを見た後、低い方から出るよう。」
アンスラードは最高神ジュピテルに反逆した巨人たちの筆頭で、ジュピテルに対して自分が投げた岩に自ら潰されたという巨人です。半周してからでないとよく観察できないので、木組みのアーケードをくぐって進みましょう。怪力の巨人らしく非常に高らかに水柱を上げ、今まさに堕ちてくる岩を苦悶の表情で見上げています。

16.「閣議の間(の園)へ入り、フロール(の泉水)までまた登って行って、そこを半周するように。」
フロールの泉水を右手に見ながら反対側の区画へ。中央の十字の泉水と4つの小さな泉水を持っていたこの園をルイ14世はかなり好んでいたようで頻繁に散歩や祝祭を行っていましたが、1704年に改造され今日の姿になりました。中央の噴水は薔薇の冠のデザインの中に231もの放水管があるそうです。

17.「山(の泉水)の方へ行き、星型の中央へ入る前に曲がった小径を半ばめぐるよう、そこへ着いたら、山(の泉水)をひとめぐりするように。」
この泉水は周囲の木立を含めて完全に失われ、ただの空き地になっています。かつては中央の泉水の周りに星型に木立と小さな泉水が配置されていました。

18.「セレス(の泉水)の方へ行き、劇場(の園)を目指すよう。そこで(様々な)場面転換を見たり、アーケード(の中)の噴水を眺めるように。」
セレスは豊穣の女神で、麦の束が添えられていることから夏を表す泉水だと分かります。次は劇場と名の付く園なのでどんなものか期待してしまいますが、これも今日では現存しません。古地図を見てみると、三方から水が流れ落ちる仕掛けだったようです。現在では中央にジャック=ミシェル・オトニエル作の「太陽王の美しい踊り」という現代的なオブジェが配置された泉水になっています。一方アーケードの中の噴水は現存しており、花々を持つ子供たちの楽しげな姿を見ることができます。

今回はここまで、次回はいよいよ完結編です。

遂に鏡の回廊デビュー、ヴェルサイユ宮殿の「王室の夜会」

15 7月 2020
遂に鏡の回廊デビュー、ヴェルサイユ宮殿の「王室の夜会」 はコメントを受け付けていません

本番前のひととき

今回は先週末に初乗り番を迎えたヴェルサイユ宮殿の「王室の夜会La Sérénade Royale」の紹介です。
毎年夏期と年末にヴェルサイユ宮殿で行われているスペクタクルのツアーで、鏡の回廊での演奏と舞踏を中心に各会場でリュート伴奏による歌唱、コメディアンによる小喜劇、フェンシングの演武を観ることができます。ツアーは20分ごとに全部で5グループあり、演者は1日で5回公演を行います。それぞれ18世紀風の衣装を身にまとい、観客は当時の宮廷の雰囲気を存分に堪能できることでしょう。
鏡の回廊での演奏は毎回私の師匠であるパトリックが率いるレ・フォリー・フランセーズが担っていて、内心自分も弾いてみたいなと思っていたのですが楽隊は4人と極めて少数、しかもフランス宮廷の雰囲気を醸し出さなければならないので東洋人顔の私が参加するのは難しいかなと考えていました。しかし今回、パトリックからめでたくお呼びがかかりました!
今回のプログラムは全てジャン=フィリップ・ラモーのバレである「優雅なインド」と「プラテ」から構成されたもので、アンサンブルの難易度は割と高いものもありますがリハーサルは先月行われた1回のみ。まあこのプログラムは昨年からやっているものなので他のメンバーは事情を良く知っていて、細かい調整は本番の中で続けるといった感じなのでしょうか。でもダンサーとの兼ね合いもありますし私としては少し不安…。
プログラムは「王の絵描きたち」と題されていて、ダンサーたちは筆とパレットを持って登場し、観客の中からモデル役を選んで…のくだりは新型コロナウィルスの影響でマネキンになり、出来上がった絵がどれも変な絵という笑いを取ったところで国王役が威厳をもって登場、風格を保って踊りますが途中でなぜか上半身の服を脱がされ虎の毛皮を着させられて終わる…という内容です。個人的には威厳のある国王の踊りをもっと見たい感じがするのですが(笑)。
新型コロナウィルスの影響はプログラムだけではなくこのツアー全体にも影響していて、本来は6月13日からのはずが2週休演となり、あわや全公演中止かというところでしたが6月27日から開始できることになりました。それでも観客はマスク必須です。マスクと言っても仮面の方じゃありませんよ。
さて6月27日、7月4日と別のメンバーが担当して私はお休みだったのですが先週末から参加開始。宮殿の入り口ではアーティストのバッジを提示すると荷物検査もなく入館できました。木曜演奏会の際はいつも荷物検査があって時間がかかるのでこれは嬉しい!
ところがよく考えてみると楽屋の場所を事前に告知されておらず、とりあえずリハーサル時に荷物を置いていた鏡の回廊に隣接する「牛眼の間」に行ってみると、観光客がいるばかりで演者らしき人はおらず。宮殿のスタッフに聞いてみると、どうやら順路の始めの方にある北の翼棟の「ガブリエルの間」という所らしく、一度建物を出て順路をもう一度だどる羽目に。スタッフについて行ってみるとなるほど納得、昨年9月に展示演奏を行った時に楽屋として使った、一般には開放されていない部屋でした。まあ着けたので良かった。
楽屋は衣装掛けとアイロンスペースの他は既にダンサーたちが化粧とストレッチで大半を占拠…もといお使いになっておられて、楽隊は隅の着替え場所(といっても男女一緒に着替えるので囲いの意味はあまりない)でさっさと着替えてあとはあまり居場所がない感じでした。私も早速着替えようとすると衣装係のマダムから「アイロンをかけた方が良いからちょっと待って!」と言われ待つことしばし。一応シャツは事前に言われたので自分で頑張ってアイロンがけしてきたのですが、彼女的には不十分だったようでもう次回からは丸投げしようと思っていると、なぜかベストとズボンからアイロンをかけ始め、シャツは一番最後に。順番が逆だとすぐに着替え始められたんですがねー。その間もダンサーの衣装を優先的にやらねばならなかったらしく私の衣装は後回し…。いや別に間に合ったから良いんですけど。楽屋探しで時間を使ってしまったので、もう少し家を出るのが遅ければ他の楽隊メンバーに迷惑をかけるところでした。
その後差し替えになった1曲を本番前に2回ほど合わせていざ鏡の回廊へ移動。自主的にアマゾンで買ったカツラもばっちり着けました。衣装を着てカツラも付けると、東洋人の私でもなるほどサマになります。買ってよかった!
鏡の回廊は夕方になると西日が差し込んで結構暑いことがリハーサルで分かったので、制汗対策をしていきましたがカツラもあってやっぱり暑い!当時の廷臣たちはみんなこうして頭に汗をかいていたことが良く分かります。幸い演奏スペースは衝立が後ろに設置されて直射日光を避けることができました。
一度ダンサーと何曲かリハーサルを行ったところでいざ本番、ついに奏者としての鏡の回廊公式デビューです。観客は現在あまり外国人観光客が来られる状況にはないので少ないかなと思っていましたが、例年と遜色ないくらいの盛況ぶりでした。
各回は20分しか間がなく、観客は長蛇の列になって進むので前の回の最後尾が過ぎてから次の回の先頭が来るまであまり時間はなく、水分補給をする程度で楽屋に戻る時間などはありませんでした。どうしても御手洗いに行きたくなったらどうするんでしょうね。
ちなみに私は第2ヴァイオリンなので各曲のテンポの決定権はあまりないのですが、回が終わるごとにこの曲はもう少し遅く…次の回では少し遅すぎたので中間くらい…と調整が続きました。次回以降は楽隊もダンサーも少しずつメンバーが違うので、毎回違った仕上がりになる事でしょう。
あと最初の方で力が入っていたのか4、5回目あたりで少し疲れが出てきてしまいました。最後まで新鮮さと体力を保たなければなりませんね。
私の担当は8月末まで毎週土曜日、9月19日とあと8回あるので、思いっきり鏡の回廊での演奏を楽しみたいと思います。

次回は久しぶりのヴェルサイユ宮殿シリーズ、庭園編をお送りしたいと思います。

3度目の夏の暑さ対策

8 7月 2020
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夏は雲一つない快晴が連日続く

ヴェルサイユは気温はそこまで高くないものの相変わらず快晴の日が続いていますが、日本では豪雨が九州を襲っていますね。皆様のお住まいの地域は大丈夫でしょうか。以前から言われていたことですが、災害地域でのコロナ対策はどうなっていくのでしょう。
昨日は来月の初旬に演奏会が企画されている友人のアンサンブル「サン=ジョルジュ・コンソート」の打ち合わせで久しぶりにメンバーが集まって食事会をしたのですが、フランスのレストランやバーはソーシャル(フィジカル)ディスタンスも何もあったのもではありませんね。店内もテラスも人々がテーブルに密集して会話をしながら飲食をしていて、入り口に気休めの消毒ジェル(それもべたつきが尾を引くものが多い)が設置されている以外はロックダウン以前と何も変わりません。
公共交通機関では罰金が科せられるマスク着用義務化により皆仕方なく着用しているといった感じで、下顎のところにマスクをずらして大声で話している人なども多々見受けられます。こうなればもう、自分の身は自分で守るしかないですね。

さて今回はクーラーのない我が家での3度目の夏対策を紹介しましょう。
去年の6月末から7月中旬の一時帰国までがもう耐えられないほど暑く、それを教訓に今年は暑さ対策グッズをいくつか揃えてきました。
今年の装備品はこちら。
・冷風扇「ここひえ」
水が蒸発する際の気化熱を利用する小型の冷風扇。去年の夏にヴェルサイユへ帰ってきた時に導入しましたが、9月になりすぐに涼しくなったため今年から本格稼働です。水を蒸発させることにより湿度が高くなってしまうので日本ではあまり効果がないと言われることもありますが、フランスの夏は乾燥しているのであまり気になりません。それよりもとにかく冷風が欲しい!水タンクに氷や保冷剤を入れるとさらにパワーアップします。
・保冷剤
ケーキを購入する際などに貰える小さな保冷剤をいくつか持って来ました。冷風扇の水タンクに入れたり、タオルにくるんで体に当てたりします。
・バブシャワー
シャワーを浴びる際に体に付けて洗い流すと、冷感成分により入浴後に汗が早く引いて涼しくなる優れもの。ランクは勿論最高のエクストラクール、冷えすぎるので推奨されていませんが遠慮なく扇風機に当たります(笑)。フランスでも同様の商品があれば良いんですけどね、もしかしたらあるのでしょうか?

あとは以下のような工夫をしています。
・扇風機を室外に向けて稼働させる
夕方になると外が涼しくなるので、扇風機を窓の外へ向けて稼働させると室内の気圧が下がることにより冷たい外気を早く取り入れることができます。
・窓の一部にアルミホイルを貼る
私の部屋は最上階で日当たりが良く、放っておくとすぐに温室状態になります。ブラインドを閉めてもそれが日光で徐々に熱せられてしまうので、窓ガラスの一部にアルミホイルを貼ってみたところ良い効果が得られました。ガラスに影響があるかもしれないのでぴったり貼り合わせてはいません。
・とにかく水を多く飲む
水をたくさん飲んで排泄することにより体温を下げる、単純明快な方法。
・ウリ科の野菜やトマトを食べる
キュウリやメロン、スイカなどのウリ科の野菜、トマトには体温を下げる効果があるのでこれらを多く食べるようにします。
・シャーベットやアイスを食べる
凍ったものを体内に入れるので当然涼しくなりますが、糖分の摂り過ぎには注意ですね。

クーラーがなくても工夫次第で意外と夏を快適に過ごせるのかも知れません。日本に帰った後もあまりクーラーに頼らない夏の過ごし方を実践してみたいなと思っています。ただ日本の夏は蒸し暑いのが厄介ですね…。

次回は今週末から出演するヴェルサイユ宮殿の夜会の模様をお伝えします。

フランスの新型コロナウィルス感染と対策グッズ他の販売状況

11 3月 2020
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ほとんどの薬局には入り口に「マスクと消毒液の在庫はありません」という張り紙が出されています

今回も新型コロナウィルスの話題になりますが、フランスではこの数日で急速に感染が拡大しており、私が確認した最新情報では前日から300人ほど増えて1784人、33人死亡となっています。首都圏ではまだ集団感染は報告されていないようですが、その他の県ではいくつか確認され、そうしたところでは幼稚園から高校までの閉鎖措置が取られています。また1000人以上の集会は禁止されています。今月参加するパトリックのオーケストラプロジェクトや予約しているヴェルサイユのスペクタクルもどうなることやら…。
また先ほど入った情報によると、ヴェルサイユ地方音楽院の教師1人の感染が確認され、一緒に活動していた生徒数人も隔離対象になったとのことです。幸い私が普段活動していていない校舎での出来事だったようですが、来週予定されていた校内演奏会は中止になり、学生生活にも影響が波及し始めています。
さてそんな中、フランスでの感染対策グッズ他の販売状況などはどうなっているのか、昨日いろいろな薬局とスーパーマーケットを回って調べてきました。
まず世界的に不足しているマスクですが、フランスでは先週、医療用マスク(FFP2タイプ)の国内の在庫、5月末までの生産分を全て政府が管理し、医療機関と罹患者へ供給することを発表しました。購入するには処方箋が必要とのことで、予防のために購入することはできなくなりました。私がAmazonで注文したマスクもおそらく当分届くことはないでしょう…。またこれによりマスク着用者=罹患者という公式がほぼ確実なものになるので、残り少ない手持ちのマスクも着用して出歩くのは一層困難になりそうです。日本と同じように高額転売の案件もあるようで、逮捕者もでているとのこと。Amazonには怪しげな商品もありますが、中国系の業者だと使用済みのものかもしれないのでやめておくことにしています。
そもそもフランスでは公式見解として「マスクは感染予防には効果がない」とされています。需要に対して供給力が圧倒的に少なく、手に入らないことでパニックを起こさないようにする意図があるのかもしれませんが、ないわけはないと思ってしまいますね…。
次にアルコール消毒液ですが、こちらは徴集はされていないものの政府によって販売価格が設定されており高額販売できないようになっています。しかしいずれの薬局、スーパーでも品切れで、あるのは赤ちゃんの体を拭くためのスプレーくらいでした。先ごろ各薬局で調合した消毒液を発売できるよう法令が出されたそうなので、これから少しずつ供給がなされていくと思います。また代用品として日本でも注目されている次亜塩素酸ナトリウムの漂白剤(ジャヴェル水)はまだまだあるようなので、手持ちの消毒液がなくなったら購入を考えてみます。
医療用というわけではありませんが、ゴム手袋はスーパーに在庫があったので10セット入りを1つ買っておきました。
あとデマにより世界各国で品薄になりつつあるトイレットペーパー他の紙製品は、全てのスーパーに山ほど在庫があり、セールをしているくらいでした。フランスは大丈夫なのか、あるいはこれから無くなるのでしょうか。

隣国イタリアでは感染者が1万人を突破し中国に次ぐ世界第2位になり、オーストリアとスロベニアは国境を封鎖しました。マクロン大統領はこれについて「誤った判断だ」としていますが、さてこれからどうなるでしょうか。残念ながらフランスは世界第5位の感染者数となっています。

次回は今週から始まるパトリックのオーケストラプロジェクトについて書こうと思います。

駿太のこだわりクッキング② カレー

19 2月 2020
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カレーの魔力に憑りつかれる…

ここのところ急に雨が降ったりやんだりしています。寒さも和らぎ、もう春の到来でしょうか。
新型コロナウィルスの感染が世界各地で拡大していますね。フランスでの確認症例は11例に留まっており、数字上は対策できているような印象を持ちます。航空便についてはエールフランス航空の中国便は全便欠航していますが、それ以外の航空便は運行しているようです。それにも関わらずパリやヴェルサイユのフランス人たちは誰もマスクをしていません。それどころかアジア系の人(多分中国人)のマスク着用率はむしろ依然より減った印象があります。単純に中国からの観光客が減ったのか、それとも差別を恐れて敢えて着用していないか。もしそうだとしたらフランス人たちも既に保菌者ということに気づかぬまま拡散し続けるというかなり危険な状況になりますね。
中国人か?と聞かれ日本人だと答えると安心されるという話をちらほら聞きますが、日本の方でも対策を頑張ってもらわないとこのままではいずれ日本人も隔離、差別の対象になってしまうかもしれません。政府には頑張ってほしい所です。

さて、今回は駿太のこだわりクッキング第2弾、カレーをご紹介したいと思います。
前回のペペロンチーノの投稿では意外にもいろいろな方から好評を頂きました。「今度作ってみる!」と言って下さる方もおり、嬉しい限りです。
今回のカレーのレシピを研究した経緯ですが、まずフランスでは日本と違い「カレールウ」なるものは売っておらず、代わりにスーパーマーケットの一角には必ずスパイスコーナーがあり、ありとあらゆるスパイスやハーブが売られています。こちらに来てから数か月経った頃、そろそろカレーが食べたくなってきたので意を決してスパイスを買うことにしたのですが、まず何のスパイスを買ったらいいのか分かりません。色々調べた結果、「東京カリ~番長」さんのこのレシピにたどり着きました。
https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/tokyocurrybancho/17-00121
たった4種類で良いとは、何ともお手軽じゃないですか!日本ではカレールウを使ってしまう場合が多いと思いますが、こんなに手軽ならスパイスカレーをやらない手はないですよ!
ということで早速4つのスパイスを買ってきて、これを基にカレーを作りました。
これが…旨い!!!いわゆる日本の「お母さんが作るカレー」とは全く別物の、実に味わい深いカレーができました。最も日本で市販されているカレールウは専門家たちによりたくさんのスパイスや調味料が調合されているので、こちらの方が味わい深いはずなのですけどね。スパイスの種類を増やせば増やすほど、味としては輪郭がぼやけた特徴のないものになっていくようです。あとおそらく指定の水量が多すぎます。
そんなわけでこのレシピで基本的には満足だったのですが、そこは駿太のこだわりクッキング、徐々に改変を始めました。
以下改変点とレシピを書きますが、まずは「東京カリ~番長」さんのレシピに沿って一回作ってみて下さい。前回のペペロンチーノ同様、基本をしっかり固めてそこから発展させていくことが大事だと思います。あとスパイスの配合については完全に趣味の問題ですので、作り手によりいくらでも改変の余地があります。

【改変点】
・たまねぎを切る際、写真では根の部分を残してそこに包丁を入れるように紹介されていますが、根は不潔であることも多いので茎(根より内側にあり硬く捨てる部分)を残しながらぎりぎり根だけを落とすようにすると、みじん切りをする際に同じような手法を採ることができます。
・カレーを作る上で、如何にたまねぎの甘みを引き出すかが重要であると思っています。検討した結果、電子レンジで加熱した後に炒めると良いことが分かりました。
・香菜をいちいち買ってくるのが面倒なので、乾燥ハーブに置き換えています。
・トマトピューレーをトマトケチャップに置き換えています。ケチャップには通常いくつかの調味料が加えられていて、カレーのコクを出すのに有用だそうです。「東京カリ~番長」さんの他の記事でもケチャップの代用について言及していますが、トマトピューレーの場合の半分の量にすると良いとのこと。確かに入れすぎるとケチャップ味になってしまいます。
・スパイスの配合はクミンとターメリックが多め、チリペッパーはやや少なめに調整しています。クミンは個人的な趣味ですが、ターメリックはカレーの色を出すためのスパイスなのでやや多め、チリペッパーは入れすぎるとただ辛いだけで他の味がかき消されてしまうので少なめから調整していくのが良いと思います。
・4種のスパイスと塩を1つずつ器に出し個別に入れるよう紹介されていますが、1つの容器に入れてよく混ぜた上で加えた方が味の偏りがなくなると思います。
・個人的な趣味で鶏肉を牛肉に置き換えています。ヨーロッパの肉は臭みが強いので、塩、黒胡椒、ナツメグ、赤ワインで下処理を行います。
・個人的な趣味で大豆(フランスでは白いんげん豆で代用)、グリーンピースを加えています。
・煮込む際にローリエを投入します。

それでは以下レシピです。「東京カリ~番長」さんのレシピから改変のない場合は記述をそのまま引用します。

・材料(駿太の2食分、おおよそ3人前)
牛すじ肉:100g
玉ねぎ:小2個
大豆(または白いんげん豆)の缶詰:1/2、120g程度
グリーンピース:70g
トマトケチャップ:大さじ2
クミンパウダー:大さじ山盛り1(駿太は粉末と種子そのままのものを半分ずつハイブリッドで調合しています)
コリアンダーパウダー:大さじ1
レッドチリパウダー:小さじ1(多少少なめから調整)
ターメリックパウダー:小さじ山盛り1
にんにく:2片(10g)
しょうが:1片(16g)
塩:小さじ1(牛肉の下処理用と玉ねぎの脱水促進用は分量外)
黒胡椒:少々
ナツメグ:少々
赤ワイン:小さい器で牛肉が浸る程度
水:500cc
乾燥ハーブ(Herbes de Provence):大さじ3程度(お好みで調整)
砂糖・少々
調理油:大さじ3
ローリエ:2枚

・作り方
①牛肉を細かく切り塩、黒胡椒、ナツメグを振りかけながらすりこみ、赤ワインに浸しておく。
②玉ねぎをみじん切りにし、ラップをかけて電子レンジで6分加熱(我が家のレンジのスペックが未だに分かりません)。
③フライパンで調理油を強火で熱し、玉ねぎ、乾燥ハーブ(分量の半分)、塩4つまみを加えてアメ色になるまで炒める。途中で水100cc程度(分量外)の差し水をする。
④にんにく・しょうがを加え、青臭さがなくなるまで中火で炒める。
⑤トマトケチャップを加え、水分がなくなるまで炒める。
⑥火を弱めパウダースパイスと塩を加え、よく混ぜながら1~2分炒める(ここで「カレーの素」が完成)。
⑦①で用意した牛肉を赤ワインごと加え、「カレーの素」と絡めながら肉の表面が色づくまで中火で炒める。「カレーの素」が焦げないよう、最初は「カレーの素」をフライパンの片側にかき寄せ、もう一方で肉を炒めると良い。
⑧大豆(白いんげん豆)、グリーンピース、水、ローリエを加え、強火でしっかり沸騰させる。水は若干少なく入れておいて、足りなければ後から足す。
⑨弱火にし、ふたをしないで15分程煮込む(途中何度かかき混ぜる)。
⑩乾燥ハーブ(分量のもう半分)を加え、よく混ぜ合わせながら煮込む。
⑪砂糖を加えしっかり混ぜ合わせたら、塩味を調えて完成。

ポイントは「東京カリ~番長」さんの書いている「玉ねぎ炒めは強火でしっかり!」「煮込むときは弱火でじっくり!」「水も塩も後からでも足せます」が重要です。玉ねぎの焦げについては多少は気にしないと書かれていますが、やはり限界を超えてしまうと苦くなるのでギリギリを攻めましょう(笑)。
スパイスの調合については、趣味に合わせていろいろ研究してみて下さいね。そうしていくうちに、皆さんもきっとカレーの魔力に憑りつかれることでしょう。

次回は現在参加しているアンサンブル「サン・ジョルジュ・コンソート」の演奏会の模様をお伝えします。

J.S.バッハ無伴奏曲集のマスタークラス

12 2月 2020
J.S.バッハ無伴奏曲集のマスタークラス はコメントを受け付けていません

マスタークラスはチェロ、ヴァイオリンの2日間行われました

先週は月曜日に校内演奏会、木曜日に王室礼拝堂木曜演奏会、土曜日に今回のテーマであるマスタークラスがあったのでとても忙しかったですが、今週に入り2週間のバカンスになったのでようやく一息つけるというところです。
このマスタークラスはヴェルサイユでは珍しく(?)J.S.バッハ、特にヴァイオリンとチェロの無伴奏曲集に焦点を当てたもので、講師はヴァイオリンにクリスティン・ブッシュChristine Busch、チェロにオフェリー・ガイヤールOphélie Gaillardを迎えて行われたものです。2人とも古楽的アプローチを主とする奏者ですが、古楽科だけの企画ではなく生徒はモダンとバロック半々くらいでした。
オフェリーの方は水曜日に行われていて私は行くことができませんでしたが、伝え聞くところによるとチェロの鳴らし方、重音奏法等々とても有意義なレッスンであったようです。
さて今回のマスタークラスのことは数か月前から予告されていたのでヴァイオリン科は各自バッハの無伴奏を用意しましたが、私はせっかくなので大曲であるソナタ第3番のアダージョとフーガに取り組みました。そうです、あのコラール(ロンドン橋の歌じゃありませんよ笑)に基づく長大なフーガです。体力的な問題はありつつも個人的には3つあるソナタの中で一番弾きやすいんですよね。
年明けからパトリックに何度もレッスンを受けましたが、問題になるのはいつもテンポがどうしても遅くなってしまう、音を持続しすぎるなどモダン時代の名残からくるものばかり。モダン時代にもこのソナタを好んで弾いていただけあって、どうしても抜けない習慣という物があるものですね。
クリスティン・ブッシュはシュトゥットガルト生まれのドイツ人で、アーノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクスやフライブルク・バロックオーケストラなどでの活動経験を持ち、ベルリンやシュトゥットガルトで教鞭をとりつつ古楽、モダン双方で活躍しているようです。今回も彼女はバロック、モダンの2つの楽器を持って来ました。
私の番の前に2人モダンの生徒がいましたが、これが何というか、何だか懐かしいような、15年くらい前は自分もああやって弾いていたなという感じでした(笑)。モダンの世界からはずいぶん前に離れてしまいましたが、ヨーロッパですら今でもこういう弾き方って一応主流なんですよね。しかも地方音楽院だからなのかどうなのか、レベルが正直あまり高くありません。1人目はソナタ第2番の第1楽章グラーヴェを弾いていて、バスラインの弾き方や和音の表現などがレッスンの中心でした。これはまあ、古楽的アプローチの入門編といったところですね。2人目はソナタ第1番の第4楽章プレストを弾いていましたが、こういった急速な楽章はモダン弓の問題が顕著に表れます。クリスティンは即座に自分のバロック弓を貸し与え生徒に弾かせると、この問題は9割方解決しました。この生徒の順応力の高さに皆驚いていて、クリスティンが「弾いたことある?」と聞きましたがその時が初めてだったとのことでした。それから彼女は持っているいくつかの弓を年代順に貸して最後に生徒のモダン弓に戻すと、もう弾き方が違います。こういう教え方もあるのだなと思いました(といっても私は中間年代の弓の持ち合わせがないので出来ませんが…)。
さて私の番。まずはアダージョを最後まで弾くと、論争の多い付点の匙加減問題からスタート。彼女は基本的には付点を長くせずに16分音符をほぼ音価通り弾くという立場のようで、私としてはこれは未だに結論は出ていませんが付点を若干長く弾いていたのでもう少し音価通り弾くよう勧めました。試してみるとこれが意外と良いんですね。後は和音の色付けや、多種類の音色を使い分けるようにとの勧めなどがありました。
次はフーガ。とにかく長大なので「反行形」の提示までのレッスンになってしまいましたが、フーガ主題のボウイングやアーテュキレーションがまず問題になりました。私は元が讃美歌であるコラールというだけあって全体的に滑らかに弾いていましたが、もう少し短く処理する音があっても良いとの勧めを受けました。後は細かいところは色々ありましたが、大まかにいうと壮大かつ重厚なフーガの中でいかに軽い部分を作るか、音色を使い分けて静かな部分を作るかという問題が大きく取り上げられました。
私の後は古楽科の同僚が、私のフーガとは一転して優雅なパルティータ第3番のガヴォット・アン・ロンドーを弾きました。さすがフランス人、弾き方がお洒落(笑)。クリスティンはドイツ人ですが負けず劣らず優雅かつ祝祭的な音楽の作り方を指導していました。
マスタークラスが終わって夜になると、ヴァイオリンとチェロの受講生の一部、クリスティンが演奏会を行いました。オフェリーは残念ながら来られなかったようです。私ももちろん弾きましたよ、アダージョとフーガ。通して本番で弾いたのは実は初めてかもしれません。良い経験でした。
私の後にはクリスティンが第3楽章と第4楽章を弾き、ソナタ第3番を通して聴けるような演出がなされました。最後に彼女はもう一度、今度はモダンヴァイオリンヴァージョンと題して同じ2曲を披露していましたが、私の個人的な感想としては、実はモダンヴァイオリンの方が上手なのではないか…ということでした。それだけ古楽的アプローチによるモダンヴァイオリンの弾き方が彼女の中で完成されているということと、あとは楽器のポテンシャルの違いも大きいのかなと思いました。バロックヴァイオリンに関しては好みの問題もありますので聴き手次第だと思います。彼女はこの無伴奏曲集を全て録音しているので、良かったら聴いてみてくださいね。

次回は前回好評だった駿太のこだわりクッキング第2弾、カレー編をお送りしたいと思います。

駿太のこだわりクッキング① ペペロンチーノ

29 1月 2020
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ニンニクの香ばしい匂いがたまらない

今週、パリ交通公団RATPの最大組合Unsaが無期限ストライキ終了を発表しました!!!パチパチ~。パリの交通機関や近郊電車はとりあえず通常運行に戻るようです。
結局政府からは年金制度改革についての譲歩は引き出せず、1か月超のストライキ中無給だった労働者がついに耐え切れなくなり折れた格好。一方でフランス国鉄SNCFの組合は譲歩を引き出すまで終了しないとなお強硬姿勢の様子。いつまでやるんですかねー。
ちなみに国鉄が運行しているはずのRERの一部やTransilienは通常運行ということです。

中国で発生した新型肺炎が現在猛威を振るっていますね。フランスではヨーロッパで初めて感染者が確認され、現在は3人となっているようです。旧正月の春節を迎え日頃に増して中国人旅行者が増える中、ヴェルサイユは日頃から中国人ばかりなので増えているのか減っているのか良く分かりませんがとりあえず彼らはたくさんいます(笑)。演奏会の際以外はなるべく宮殿には行かないようにしようと思っています。
厚生省がマスクの着用を推奨しているので私も先週からマスクを着用し始めました。ところが街中はおろか、宮殿でもマスクをしている人はほぼ中国人(に見えるアジア系の人)だけです。せめて宮殿のスタッフくらいは着用したらどうかと思うのですが、私が見た限りではスタッフは1人しかマスクをしていませんでした。フランスではマスクの着用が一般的ではなく、マスクをして街中を歩くと何かの重篤患者かと思われて変な目で見られるという話を聞いたことがありましたが、実際着用して出かけてみると挨拶がなかったり周囲の人が離れて行ったりと、やはり反応が違いますね。厚生省にはもっと強く着用を勧めてもらいたいものです。パリやヴェルサイユにはあれだけの中国人が来るのですから、中国に渡航歴のない感染者が出るのももう時間の問題かと思います…。
状況が変わりましたらまた随時発信していきます。

さて、今回は「駿太のこだわりクッキング」ということで、第1回目はペペロンチーノを紹介します。
日本での学生時代は小中学校の調理実習くらいで料理はまったくやっていませんでしたが、留学生活をするにあたり自炊する練習をしようということで母から手ほどきを受けて一昨年の4月あたりから少しずつ佐藤家の食卓を担当するようになり、最後の7月あたりには殆どの夕食を私が作るようになっていました。
最初は幼い頃から食べてきた母のレシピに基づく料理を作っていましたが、次第にクックパッドなどを参照しながら新たな料理を作るようになりました。今まで料理は面倒なものだと思っていましたが、やってみるとこれがとても楽しいんですね。選んで買ってきた食材がだんだん自分のイメージに近づいてくる過程、加熱や調味料のさじ加減1つで味が変わってしまう奥深さ。私の師匠たちを始め良い音楽家は大抵料理が上手である理由は、料理が音楽と似ているからなのだなと思いました。
さてそんな中ヴェルサイユに来て数か月経った頃でしょうか、大分フランスで安くて美味しい食材が分かってきたところで私には食べたいパスタがありました。ペペロンチーノです。ちょうど知り合いから譲ってもらった鷹の爪もあって、クックパッドを見ながら早速作ってみました。しかしできたのはイメージとはかけ離れたイマイチな代物。ニンニクの味わいもないし、なんだか水っぽいし、もう全然だめでしたね。そこから数週間というもの、どうにかイメージに近いペペロンチーノができないものかと作り続けました。最盛期には週4回くらい作っていましたね。その頃通っていた語学学校にイタリアンシェフの友人がいたので上手くいかない点を相談したりもしました。彼女曰く「シンプルなだけにはっきり料理の腕が出る難しい料理」だそうです。
あと上手くいかない原因はフランス特有の簡易キッチンにもあり、我が家にはコンロはなく旧式の電熱調理器が大小1つずつあるのみです。当然ながら電熱調理器は火のように急に点けたり消したりできないので、タイミングを誤るともうどうにもなりません。この点もかなり考えて、それでも何とか調理器1つのみで上手く調理する方法を編み出しました。
プロは「ソースの出来上がりをパスタの茹で上がりにぴったり合わせる」そうですが、私は調理器の問題もあり先にソースを作っておいて途中で中断し、その間にパスタを茹でて再度加熱する方法を採っています。
長くなりましたが、以下レシピです。

・材料(1人前)
ニンニク 大きければ1かけ、小さければ2かけ
鷹の爪(乾燥唐辛子)3/4 ※大きさにもよりますが1本だと辛すぎることが多いです
オリーブオイル 大さじ2.5(約40ML)程度
パスタ 120g
粉塩 湯1Lあたり大さじ1
黒胡椒 少量

・作り方
①ニンニクを半分に切って芯を取り、縦に2つ切り込みを入れた後スライスする。
②ポットでパスタを茹でるための湯を沸かし、鍋に塩を入れておく。
③フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ中火(我が家の電熱調理器では火力6段階で4)にかける。
※ネット上の多くのレシピには「とにかく弱火で!」と書いてあることが多いですが、試した結果中火程度でも良いと思います。ただし⑤のタイミングはシビアになります。
④ニンニクの周りが泡立ってきたら鷹の爪のヘタと種を取り、調理ばさみで輪切りにして入れる。唐辛子が太い場合は縦に切ってから輪切りする。電熱調理器の場合はこの後パスタを茹でるために最大出力へ上げる。
※唐辛子は焦げると苦くなるので注意が必要ですが、あまりに投入が遅いとオイルに辛味が移らないので注意が必要です。

オリーブオイルにニンニク、唐辛子を入れた状態

⑤ニンニクの縁が1つでも茶色くなったら(慣れてきたらその直前を見極めて)引き上げ、湯を注いだ鍋を代わりに強火にかける。
⑥塩が完全に溶け切るように菜箸で混ぜ、パスタを投入する。タイマーは指定分数分セット。
⑦茹で時間が残り2分になったら鍋を引き上げて残り時間は余熱で茹で、代わりにフライパンをやや強火にかける(電熱調理器の場合はここから次第に弱くなっていくよう1段階落とす)。この段階で余熱によりニンニクが少し色づいている程度であれば成功、完全にフライになってしまっているようなら⑤のタイミングを早くする。

乳化が完了した状態、今回の出来は70点というところか

⑧フライパンが熱を帯びてきて、ニンニクが少し泡立ち始めたらオリーブオイルと同量かやや少ない程度のゆで汁を、フライパンをゆすりながら少しずつ入れて乳化させていく。最初にゆで汁を入れたときに油が少し跳ね、ゆすった時にシャーという音がするくらいまでフライパンを熱すると成功しやすい。オイルがゆで汁と良く混じり、白濁すれば成功。ゆで汁がオイルより多いと確実に失敗する。
⑨乳化が完了する頃合で茹で時間を迎えるので、湯切りをしてフライパンに投入する。
⑩火を止め、菜箸で手早く混ぜ合わせさらに乳化を促進させた後、器に盛る。器はやや深さのあるものを選ぶとよい。
⑪黒胡椒を表面にうっすらとかけて完成。かけ過ぎると味が大きく変わってしまうので最後まで気を抜かないように。

味のイメージとしては食べた時に塩、ニンニク、唐辛子、オイルのそれぞれの要素が強く拮抗している状態が理想です。全体的にそれぞれの
主張が弱かったり、ある要素が突出してしまったりしていたら改善の余地ありと言えるでしょう。
あとできれば食べ終わった後、器にあまりオイルが残らない程度にオイルとゆで汁の量を調整できるとなお良いと思います。
特に乳化の工程は難しいので、納得のいくものができるまで何度も作ってみましょう。なおこのレシピではニンニクと唐辛子はそのまま具になっていますが、途中で取り出す方法もありますのでそこの辺りはお好みで。
基本がしっかりとできてしまえば、その後でトッピングを入れたりアレンジを加えても良いと思います。私は目下キャベツ入りのアレンジを研究中です。

ちなみに私は代謝が非常に良くて少し唐辛子を食べると大量に汗をかくので、食べた後はすかさずシャワーを浴びなければならなくなります(笑)。汗をかかないように唐辛子を減らしたこともありましたが、それだとやはりあまり上手くいきません。余談でした。

今回は駿太のこだわりクッキング第1回でした。レシピを文章で書くのは初めてなのですが上手く伝わっているでしょうか。
次回は趣向を変えて、最近社会のあることについて思う独り言を書いてみます。興味があれば読んでみてください。

古楽科オープンキャンパス

22 1月 2020
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午前中は様々な科の公開授業が行われました

先週と今週は演奏会続きです。土曜日には今日特集する古楽科オープンキャンパス、月曜日には校内の室内楽演奏会、明日は王室礼拝堂での木曜演奏会です。室内楽演奏会ではテレマンのいわゆる「パリ四重奏」の第6番ホ短調を演奏しました。名の知れた名曲ですが今回は学部生の試験も兼ねているため他のグループも多く、全ての楽章をやる代わりに繰り返しは全カット。繰り返しをカットして演奏するってどうしても抵抗あるんですよね。時間の都合なら楽章をカットして代わりに繰り返しはしっかりやるべきだといつも思います。
私たち以外のグループは今年入ったポーランド人の女の子が一手に引き受けていて、何だか嘱託伴奏員のようでした(笑)。後述しますが土曜日のオープンキャンパスでは自分の協奏曲もあったのにその上よくがんばるなと思いました。それにしても他のチェンバロ科はどこに行ったのでしょう…?

さて、今回は先週土曜日に開かれた古楽科オープンキャンパスの模様をお伝えします。
10月にお伝えしたオープンキャンパスはモダン科も演奏していましたが、今回は古楽科だけのオープンキャンパス。それだけ大所帯ということですね。
ちなみに先日も書きましたが、このオープンキャンパス内の演奏会では今年入学した研究科の学生が1人ずつ協奏曲を披露し、一応形だけの中間試験を受けます。今回はヴァイオリン2人がそれぞれヴィヴァルディの協奏曲、リコーダー1人がテレマンの室内協奏曲、そして前述したポーランド人のチェンバロの女の子がJ.S.バッハのチェンバロ協奏曲BWV1057を弾きました。そうです、あのブランデンブルク協奏曲第4番のチェンバロ版です。オケパートのヴァイオリンは私とパトリックが全て担当しました。
オープンキャンパスの午前中は公開授業となっていて、私たちの午後に向けたリハーサルも公開となりました。私含め生徒たちはいつもの癖でそこかしこの椅子に荷物やら楽器ケースやらを置いてしまっていたので、お客様が増えてくると片づける羽目に…。
リハーサルをしていたのであまり行けませんでしたが、他の部屋でも並行して室内楽や専攻のレッスンが公開で行われていました。休憩の合間を縫って私も少しだけ他専攻のレッスンにお邪魔。こういう機会はなかなかないですものね。
そんなこんなでしっかり昼食をとる暇もなく午後の本番が始まりました。ヴァイオリンの2人はアマチュアなのであまり期待はしていませんでしたが無難にまとめてきてくれました。リコーダーの子とはリハーサルが少ない中で先週の1回のレッスンで細かい指導があったため上出来。トリはチェンバロ協奏曲、あの速くて難しいパッセージ共々素晴らしい演奏を披露してくれました!一方で残念だったのは我々オーケストラ。前日までのリハーサルはたった2回でこの曲をやるにはただでさえ少ないのに、リコーダーとヴィオラ奏者が交代となって本番のメンバーがそろったのは当日だけという始末。あれだけソリストが仕上げてきてくれるなら我々ももう少し準備したかったです。

さて私たちの本番が終わってしばらくすると、金管やオーボエのアンサンブルとより音の小さな室内楽の演奏会が並行して開催されたので私は金管やオーボエのアンサンブルを聴きに行ってみました。ナチュラルトランペット、サックバット(トロンボーンの古楽器)、オーボエがそれぞれバンドを組んでルネサンスからバロックまで様々な曲を披露しました。オーボエはオーケストラによく顔を出すので顔見知りも結構いるのですが、金管の学生ってこんなにいたんだなと初めて知りました(笑)。あとトランペットバンドはもう少し大きな場所で聴きたかったですね。学校の中庭とか。
夜にはもう一つ、ヴィオラ・ダ・ガンバや撥弦楽器主体の室内楽の演奏会がありました。私は午後の本番で疲れが出て、開始まで家で仮眠をとるつもりが本格的に寝てしまい行くことができませんでした…。

日本にはない、専攻も豊富な大所帯の古楽科ならではのオープンキャンパスといった感じでした。これを機に他科とも積極的に交流を図っていきたいなと思いました(もう半年くらいしかありませんが)。

次回は新シリーズ、駿太のこだわりクッキング第1弾です。

ヴェルサイユ宮殿スペクタクルのレビュー

4 12月 2019
ヴェルサイユ宮殿スペクタクルのレビュー はコメントを受け付けていません

来年創立250周年を迎える王室歌劇場ではアツいプログラムが目白押し

今日の最高気温は4度、いよいよ寒さが身に染みる季節になりました。宮殿周辺や私の住んでいる通りでは今週からイルミネーションが始まり、通りゆく人々の心を温めてくれます。
そんな中、ヴェルサイユ宮殿では連日アツいスペクタクルが催されています!今回は先月下旬から今週にかけて行った5つのオペラ、演奏会をまとめてレビューしたいと思います。

まずは11月20日、王室歌劇場でエマニュエル・アイム率いるル・コンセール・ダストレのグラン・モテ。ラモーの「主が連れ帰ってくださった時In convertendo Dominus」、モンドンヴィルの「イスラエルの民エジプトを出でIn exitu Israël」、そしてカンプラのレクイエムという超激アツなプログラム。これはもう行くしかないですよねー。エマニュエル・アイムは業界ではまだまだ少ない女性指揮者で、このアンサンブルを生で聴いたのは今回が初めてでしたが、デビュー時のラモー「イポリトとアリシ」の素晴らしい上演の映像は随分前から知っていました。
ラモーの「主が連れ帰ってくださった時」はあの1曲目がもう最高に良いんですよね。弦楽器とフルートが織りなすあの絶妙な色合い…。これこそラモーの成せる業といった感じです。このオーケストラもしっかり表現してくれました。モンドンヴィルの「イスラエルの民エジプトを出で」は今回初めて聴きましたが、この作品はすごい!特異な調性の使用、劇的な歌詞を表現するためのオーケストラの効果音、最初から最後までモンドンヴィルの世界に引き込まれました。オーケストラパートも難易度の高い箇所が多かったように思いましたが、弦楽器奏者たちが果敢に挑んでいて効果は抜群。カンプラのレクイエムは6月に私たちも演奏したので記憶に新しい所ではありますが、研究センターの指揮者オリヴィエ・シュネーベリとは当然違う味付けでまた新鮮でした。
さて続いてはその翌日、王室礼拝堂での木曜演奏会を終えた後に行ったエルキュールの間での演奏会。リュリとその後継者のオペラで活躍したオートコントル歌手ルイ・ゴラール・デュメスニーLouis Gaulard Dumesnyへのオマージュを捧げたプログラムで、ベルギー人テノール歌手レヌー・ファン・メシュレンReinoud Van Mechelenが彼のアンサンブルを率いて歌い通すリサイタルでした。エルキュールの間での演奏会は年に数回あるのみで、主に室内楽や歌手のリサイタルが行われています。あの息をのむほどの装飾が施されたルイ14世渾身の作であるエルキュールの間での演奏は雰囲気からしてもう格別。
演奏の方はというと、オーケストラは力強いバスラインが特に素晴らしくて申し分ないのですが、当のメシュレンは…どちらかというとタイユ寄りで、オートコントルにしてはやや声が重いかなと個人的には思ったのと、レシタティフは「歌う」のではなくもう少し個々の言葉を「語る」方が良いかなと思いましたが、一緒に聴いていた研究センターの歌手たちは絶賛していたのでそうでもないのかもしれません。プログラム構成はリュリとその弟子のコラス、デマレ、シャルパンティエの悲劇の名場面集といった感じでした。個人的にツボだったのはアンコールでカンプラの「優雅なヨーロッパ」スペインの冒頭の素晴らしいパッサカーユを用意してくれたこと。あの作品は悲劇ではないのでこの演奏会には取り入れなかったのかなと思っていたところでの演奏だったので、これはとても嬉しかったです。
3つ目は24日に行った王室歌劇場でのカヴァッリ作「エルコール・アマント」の舞台上演。ルイ14世の宰相マザラン枢機卿の下イタリア・オペラをフランスに導入しようとカヴァッリをパリに招聘して制作、1662年に上演された記念碑的な作品です。演奏はラファエル・ピション率いるピグマリオン。3時間半の長大な作品ですが、あまり上演されないだけに詳細なあらすじがインターネットでも見つけられず、結局良く分からないまま観劇してしまったのを後悔しました。パンフレット買えばよかったですね。演奏は素晴らしいかったのですが、演出が個人的にはあまり好みではありませんでした。喜劇なので突っ込みポイントを作るのは良いけれど、真剣な場面でもちょくちょく変な笑いのポイントを作ってしまっていて何だか気が散るし、あとヴィーナスがピンクの気球(のような飛ぶ何か)を操縦しながら降りてきたり、ネプチューンが金色の潜水艦から出てきたりと音楽の雰囲気とはあまりに不釣り合いな現代的要素があるのもマイナスポイント。まあでもこの作品を舞台上演で観劇できる機会はそうそうないので、その点では満足でした。
4つ目は26日のリュリ「カドミュスとエルミオーヌ」の王室歌劇場でのコンサート上演、演奏はヴァンサン・デュメストル率いるル・ポエムアルモニーク!同じ作品の照明、衣装共に上演当時をできるだけ再現した上演映像はもうただ素晴らしいの一言で、コンサート上演なのは少し残念ですが是非生で聴きたいと思いました。上演前にはヴァンサンの「15分解説」にも行くことができ、オペラ上演のこと、発音のことなど色々な話が聞けました。演奏は勿論一級品。どうしたらあのサウンドが実現できるんでしょうね…。プロローグと5幕の長大な作品ですがあっという間に終わってしまいました。もっと聴いていたかった。
最後は昨日12月3日のジャン=バティスト・ロバンの王室礼拝堂でのオルガンリサイタル。ロバンは私の所属するヴェルサイユ地方音楽院のオルガン講師でもあります。王室礼拝堂のオルガンは日頃の木曜演奏会でパリ国立高等音楽院のオルガン専攻生により演奏が行われていて何度も聴いたことがあるのですが、ロバン先生の演奏ということで今回改めて聴きました。ルイ・マルシャンやジャン=フランソワ・ダンドリューの「プラン・ジュPlein Jeu(満ちた演奏での意)」の楽章は奏者と共にヴェルサイユ王室礼拝堂のオルガンの本領発揮というところ。もうこれに慣れてしまったら他で聴く気なんて無くなってしまうくらい、威厳と品格が溢れた響きです。一方でロバン先生自作の曲も1曲披露されました。難解すぎて一般的にはやや不快な現代作品(愛好家の方々申し訳ありません)というわけではありませんでしたが、やはり前後にこのオルガンと空間により適した古い作品が並んだだけに、個人的には古い作品が好みだなと思いました。あとオルガンリサイタルながらトランペットとパーカッションが加わり、リュリの「町人貴族」でのトルコ人行進曲やド・ラランドの「ヴェルサイユ大運河のためのコンセール」なども聴くことができました。

来年2020年はヴェルサイユ王室歌劇場創設250周年にあたり、特にオペラは昨年度よりも興味深いプログラムが多くラインナップされています。今後も少しずつこのブログでレビューしていきたいと思います。
次回は今週末フランスを震撼させる?予定のストライキ&デモについてお伝えしたいと思います。

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