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ヴェルサイユ宮殿スペクタクルのレビュー

4 12月 2019

来年創立250周年を迎える王室歌劇場ではアツいプログラムが目白押し

今日の最高気温は4度、いよいよ寒さが身に染みる季節になりました。宮殿周辺や私の住んでいる通りでは今週からイルミネーションが始まり、通りゆく人々の心を温めてくれます。
そんな中、ヴェルサイユ宮殿では連日アツいスペクタクルが催されています!今回は先月下旬から今週にかけて行った5つのオペラ、演奏会をまとめてレビューしたいと思います。

まずは11月20日、王室歌劇場でエマニュエル・アイム率いるル・コンセール・ダストレのグラン・モテ。ラモーの「主が連れ帰ってくださった時In convertendo Dominus」、モンドンヴィルの「イスラエルの民エジプトを出でIn exitu Israël」、そしてカンプラのレクイエムという超激アツなプログラム。これはもう行くしかないですよねー。エマニュエル・アイムは業界ではまだまだ少ない女性指揮者で、このアンサンブルを生で聴いたのは今回が初めてでしたが、デビュー時のラモー「イポリトとアリシ」の素晴らしい上演の映像は随分前から知っていました。
ラモーの「主が連れ帰ってくださった時」はあの1曲目がもう最高に良いんですよね。弦楽器とフルートが織りなすあの絶妙な色合い…。これこそラモーの成せる業といった感じです。このオーケストラもしっかり表現してくれました。モンドンヴィルの「イスラエルの民エジプトを出で」は今回初めて聴きましたが、この作品はすごい!特異な調性の使用、劇的な歌詞を表現するためのオーケストラの効果音、最初から最後までモンドンヴィルの世界に引き込まれました。オーケストラパートも難易度の高い箇所が多かったように思いましたが、弦楽器奏者たちが果敢に挑んでいて効果は抜群。カンプラのレクイエムは6月に私たちも演奏したので記憶に新しい所ではありますが、研究センターの指揮者オリヴィエ・シュネーベリとは当然違う味付けでまた新鮮でした。
さて続いてはその翌日、王室礼拝堂での木曜演奏会を終えた後に行ったエルキュールの間での演奏会。リュリとその後継者のオペラで活躍したオートコントル歌手ルイ・ゴラール・デュメスニーLouis Gaulard Dumesnyへのオマージュを捧げたプログラムで、ベルギー人テノール歌手レヌー・ファン・メシュレンReinoud Van Mechelenが彼のアンサンブルを率いて歌い通すリサイタルでした。エルキュールの間での演奏会は年に数回あるのみで、主に室内楽や歌手のリサイタルが行われています。あの息をのむほどの装飾が施されたルイ14世渾身の作であるエルキュールの間での演奏は雰囲気からしてもう格別。
演奏の方はというと、オーケストラは力強いバスラインが特に素晴らしくて申し分ないのですが、当のメシュレンは…どちらかというとタイユ寄りで、オートコントルにしてはやや声が重いかなと個人的には思ったのと、レシタティフは「歌う」のではなくもう少し個々の言葉を「語る」方が良いかなと思いましたが、一緒に聴いていた研究センターの歌手たちは絶賛していたのでそうでもないのかもしれません。プログラム構成はリュリとその弟子のコラス、デマレ、シャルパンティエの悲劇の名場面集といった感じでした。個人的にツボだったのはアンコールでカンプラの「優雅なヨーロッパ」スペインの冒頭の素晴らしいパッサカーユを用意してくれたこと。あの作品は悲劇ではないのでこの演奏会には取り入れなかったのかなと思っていたところでの演奏だったので、これはとても嬉しかったです。
3つ目は24日に行った王室歌劇場でのカヴァッリ作「エルコール・アマント」の舞台上演。ルイ14世の宰相マザラン枢機卿の下イタリア・オペラをフランスに導入しようとカヴァッリをパリに招聘して制作、1662年に上演された記念碑的な作品です。演奏はラファエル・ピション率いるピグマリオン。3時間半の長大な作品ですが、あまり上演されないだけに詳細なあらすじがインターネットでも見つけられず、結局良く分からないまま観劇してしまったのを後悔しました。パンフレット買えばよかったですね。演奏は素晴らしいかったのですが、演出が個人的にはあまり好みではありませんでした。喜劇なので突っ込みポイントを作るのは良いけれど、真剣な場面でもちょくちょく変な笑いのポイントを作ってしまっていて何だか気が散るし、あとヴィーナスがピンクの気球(のような飛ぶ何か)を操縦しながら降りてきたり、ネプチューンが金色の潜水艦から出てきたりと音楽の雰囲気とはあまりに不釣り合いな現代的要素があるのもマイナスポイント。まあでもこの作品を舞台上演で観劇できる機会はそうそうないので、その点では満足でした。
4つ目は26日のリュリ「カドミュスとエルミオーヌ」の王室歌劇場でのコンサート上演、演奏はヴァンサン・デュメストル率いるル・ポエムアルモニーク!同じ作品の照明、衣装共に上演当時をできるだけ再現した上演映像はもうただ素晴らしいの一言で、コンサート上演なのは少し残念ですが是非生で聴きたいと思いました。上演前にはヴァンサンの「15分解説」にも行くことができ、オペラ上演のこと、発音のことなど色々な話が聞けました。演奏は勿論一級品。どうしたらあのサウンドが実現できるんでしょうね…。プロローグと5幕の長大な作品ですがあっという間に終わってしまいました。もっと聴いていたかった。
最後は昨日12月3日のジャン=バティスト・ロバンの王室礼拝堂でのオルガンリサイタル。ロバンは私の所属するヴェルサイユ地方音楽院のオルガン講師でもあります。王室礼拝堂のオルガンは日頃の木曜演奏会でパリ国立高等音楽院のオルガン専攻生により演奏が行われていて何度も聴いたことがあるのですが、ロバン先生の演奏ということで今回改めて聴きました。ルイ・マルシャンやジャン=フランソワ・ダンドリューの「プラン・ジュPlein Jeu(満ちた演奏での意)」の楽章は奏者と共にヴェルサイユ王室礼拝堂のオルガンの本領発揮というところ。もうこれに慣れてしまったら他で聴く気なんて無くなってしまうくらい、威厳と品格が溢れた響きです。一方でロバン先生自作の曲も1曲披露されました。難解すぎて一般的にはやや不快な現代作品(愛好家の方々申し訳ありません)というわけではありませんでしたが、やはり前後にこのオルガンと空間により適した古い作品が並んだだけに、個人的には古い作品が好みだなと思いました。あとオルガンリサイタルながらトランペットとパーカッションが加わり、リュリの「町人貴族」でのトルコ人行進曲やド・ラランドの「ヴェルサイユ大運河のためのコンセール」なども聴くことができました。

来年2020年はヴェルサイユ王室歌劇場創設250周年にあたり、特にオペラは昨年度よりも興味深いプログラムが多くラインナップされています。今後も少しずつこのブログでレビューしていきたいと思います。
次回は今週末フランスを震撼させる?予定のストライキ&デモについてお伝えしたいと思います。


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