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遂に鏡の回廊デビュー、ヴェルサイユ宮殿の「王室の夜会」

15 7月 2020

本番前のひととき

今回は先週末に初乗り番を迎えたヴェルサイユ宮殿の「王室の夜会La Sérénade Royale」の紹介です。
毎年夏期と年末にヴェルサイユ宮殿で行われているスペクタクルのツアーで、鏡の回廊での演奏と舞踏を中心に各会場でリュート伴奏による歌唱、コメディアンによる小喜劇、フェンシングの演武を観ることができます。ツアーは20分ごとに全部で5グループあり、演者は1日で5回公演を行います。それぞれ18世紀風の衣装を身にまとい、観客は当時の宮廷の雰囲気を存分に堪能できることでしょう。
鏡の回廊での演奏は毎回私の師匠であるパトリックが率いるレ・フォリー・フランセーズが担っていて、内心自分も弾いてみたいなと思っていたのですが楽隊は4人と極めて少数、しかもフランス宮廷の雰囲気を醸し出さなければならないので東洋人顔の私が参加するのは難しいかなと考えていました。しかし今回、パトリックからめでたくお呼びがかかりました!
今回のプログラムは全てジャン=フィリップ・ラモーのバレである「優雅なインド」と「プラテ」から構成されたもので、アンサンブルの難易度は割と高いものもありますがリハーサルは先月行われた1回のみ。まあこのプログラムは昨年からやっているものなので他のメンバーは事情を良く知っていて、細かい調整は本番の中で続けるといった感じなのでしょうか。でもダンサーとの兼ね合いもありますし私としては少し不安…。
プログラムは「王の絵描きたち」と題されていて、ダンサーたちは筆とパレットを持って登場し、観客の中からモデル役を選んで…のくだりは新型コロナウィルスの影響でマネキンになり、出来上がった絵がどれも変な絵という笑いを取ったところで国王役が威厳をもって登場、風格を保って踊りますが途中でなぜか上半身の服を脱がされ虎の毛皮を着させられて終わる…という内容です。個人的には威厳のある国王の踊りをもっと見たい感じがするのですが(笑)。
新型コロナウィルスの影響はプログラムだけではなくこのツアー全体にも影響していて、本来は6月13日からのはずが2週休演となり、あわや全公演中止かというところでしたが6月27日から開始できることになりました。それでも観客はマスク必須です。マスクと言っても仮面の方じゃありませんよ。
さて6月27日、7月4日と別のメンバーが担当して私はお休みだったのですが先週末から参加開始。宮殿の入り口ではアーティストのバッジを提示すると荷物検査もなく入館できました。木曜演奏会の際はいつも荷物検査があって時間がかかるのでこれは嬉しい!
ところがよく考えてみると楽屋の場所を事前に告知されておらず、とりあえずリハーサル時に荷物を置いていた鏡の回廊に隣接する「牛眼の間」に行ってみると、観光客がいるばかりで演者らしき人はおらず。宮殿のスタッフに聞いてみると、どうやら順路の始めの方にある北の翼棟の「ガブリエルの間」という所らしく、一度建物を出て順路をもう一度だどる羽目に。スタッフについて行ってみるとなるほど納得、昨年9月に展示演奏を行った時に楽屋として使った、一般には開放されていない部屋でした。まあ着けたので良かった。
楽屋は衣装掛けとアイロンスペースの他は既にダンサーたちが化粧とストレッチで大半を占拠…もといお使いになっておられて、楽隊は隅の着替え場所(といっても男女一緒に着替えるので囲いの意味はあまりない)でさっさと着替えてあとはあまり居場所がない感じでした。私も早速着替えようとすると衣装係のマダムから「アイロンをかけた方が良いからちょっと待って!」と言われ待つことしばし。一応シャツは事前に言われたので自分で頑張ってアイロンがけしてきたのですが、彼女的には不十分だったようでもう次回からは丸投げしようと思っていると、なぜかベストとズボンからアイロンをかけ始め、シャツは一番最後に。順番が逆だとすぐに着替え始められたんですがねー。その間もダンサーの衣装を優先的にやらねばならなかったらしく私の衣装は後回し…。いや別に間に合ったから良いんですけど。楽屋探しで時間を使ってしまったので、もう少し家を出るのが遅ければ他の楽隊メンバーに迷惑をかけるところでした。
その後差し替えになった1曲を本番前に2回ほど合わせていざ鏡の回廊へ移動。自主的にアマゾンで買ったカツラもばっちり着けました。衣装を着てカツラも付けると、東洋人の私でもなるほどサマになります。買ってよかった!
鏡の回廊は夕方になると西日が差し込んで結構暑いことがリハーサルで分かったので、制汗対策をしていきましたがカツラもあってやっぱり暑い!当時の廷臣たちはみんなこうして頭に汗をかいていたことが良く分かります。幸い演奏スペースは衝立が後ろに設置されて直射日光を避けることができました。
一度ダンサーと何曲かリハーサルを行ったところでいざ本番、ついに奏者としての鏡の回廊公式デビューです。観客は現在あまり外国人観光客が来られる状況にはないので少ないかなと思っていましたが、例年と遜色ないくらいの盛況ぶりでした。
各回は20分しか間がなく、観客は長蛇の列になって進むので前の回の最後尾が過ぎてから次の回の先頭が来るまであまり時間はなく、水分補給をする程度で楽屋に戻る時間などはありませんでした。どうしても御手洗いに行きたくなったらどうするんでしょうね。
ちなみに私は第2ヴァイオリンなので各曲のテンポの決定権はあまりないのですが、回が終わるごとにこの曲はもう少し遅く…次の回では少し遅すぎたので中間くらい…と調整が続きました。次回以降は楽隊もダンサーも少しずつメンバーが違うので、毎回違った仕上がりになる事でしょう。
あと最初の方で力が入っていたのか4、5回目あたりで少し疲れが出てきてしまいました。最後まで新鮮さと体力を保たなければなりませんね。
私の担当は8月末まで毎週土曜日、9月19日とあと8回あるので、思いっきり鏡の回廊での演奏を楽しみたいと思います。

次回は久しぶりのヴェルサイユ宮殿シリーズ、庭園編をお送りしたいと思います。


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