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ヴェルサイユ宮殿観光の手引き・庭園編②

29 7月 2020

ルイ14世の威光を示すアポロンの泉水

今週は久しぶりにルーヴルに行ってきました。コロナウィルス対策により事前予約必須で、入口も限定されています。せっかくルーヴル友の会で列に並ばずに入れる権利があるのに、今は一般客列に並ぶしかないようですね…。さらに以前は案内所で配布されていた館内図がなくなっています。館内図なしで周るのはかなり難しいので次回からは持って来なければ。
また今日から南仏へ行ってきます。リゾート地エクス=アン=プロヴァンスや地中海に面したマルセイユ、ニース、モナコを訪れます。


さて今回もヴェルサイユ宮殿の庭園をルイ14世の案内で巡りましょう。ラトーヌの泉水と国王の散策路の間にある眺望点から再開です。

9.「枝付き燭台のボスケの方から下りて行き、途中それを眺めながらサテュルヌ(の泉水)へ向かうように。そこを半周して、国王の島へ行こう。」
枝付き燭台というのはいくつか蝋燭を立てることのできる燭台のことで、この名前の由来は中央の水柱の周囲にたくさんの放水管を備える泉水か木立の形か、あるいはその両方でしょう。木立に入ってしまうと幾何学模様に剪定されていることはあまり分からなくなってしまいますね。サテュルヌは農耕と時の神で、ここでは冬を表す泉水です。中心の羽の生えたサテュルヌの周りに愛の神と貝殻がデザインされています。左に回り込んで、「国王の島」へ進みましょう。

10.「両側に噴水のある土手道の上を進み、大きな池を一周、低い方に着いたら立ち止まって、水柱、小舟、彫刻と柱廊を見るように。」
周辺を池で囲み自らのいる場所を「島」と表現する何とも贅沢な場所ですが、残念ながら大きい池の方は1818年に埋め立てられ、イギリス式庭園へ改造されてしまいました。今日では小さい池のみが残っているので、こちらの土手道を代わりに歩きましょう。夏期の休日は一定間隔で行われる音楽と噴水の華やかなスペクタクルを楽しむことができます。次に進むには本来の道筋通りイギリス式庭園の右手から延びる道を行くか、サテュルヌの泉水まで戻って進んでも良いでしょう。

11.「アポロン(の泉水)へと続く小径まで行き、低い方から回廊(の園)へ入ろう。ひとまわりしてから列柱(の園)へと続く道の方へ出るように。」
ここで言われている「回廊の園」は、1704年頃にマンサールによって今日見ることができる「マロニエの園」に造り替えられました。先王の時代にフランスに輸入されたマロニエの木が中央に2列植えられ、その周辺を古代の著名人たちの胸像が取り囲んでいます。

12.「列柱(の園)へ入り、中央へ進んでから、ひとめぐりして、柱、帯状面、浅浮彫と泉水を眺めるよう。出るときに足を止めて、ギーディーの(「名声」)群像を見た後、国王の散策路の側から(次へ)進むように。」
「プロゼルピーヌを誘拐するプリュトン」の彫像を中心に薔薇色の大理石を使った円柱と浅浮彫、小さい泉水が配置された美しい空間です。建築家としてのマンサールの技量が遺憾なく発揮されていますね。帯状面には渦巻き模様、浅浮彫には楽器を演奏する子供達がデザインされ、薔薇色の円柱と共に華やかさを引き立たせています。「名声」群像というのが何なのかはまたよく分かりません。
13.「アポロン(の泉水)の方へ下りて行き、そこで立ち止まって、国王の散策路に並んでいる彫像や壷、ラトーヌ(の泉水)と城館を眺め、(反対側の)大運河も見るように。同じ日のうちにメナジュリーとトリアノンを訪ねたければ、残りの泉を見る前に行くよう。」
ついに大本命登場…なのですがアポロンの泉水を見るようにとの言葉はありませんね。まあ自明ということなのでしょう。城館の方を見てみると、国王の散策路の傾斜と両側の並木により城館の端が隠されている効果で、今度は逆に城館までが遠く感じ、広大な庭園を巡ってきたのだと錯覚します。戦車に乗った太陽神アポロンは言うまでもなくルイ14世を表し、今まさに水面から出て地上に光をもたらそうとしています。戦車を引く馬は噴水の水飛沫を浴びてまるで汗をかいているよう。周囲には栄光のラッパを吹く従者と海の怪物もいます。言及されていませんがもちろん周囲を回ってよく観察すると良いでしょう。
メナジュリー(動物園)は大運河と交差する小運河の左端に位置していましたが今日では現存しません。トリアノンに行くには右手へ進みます。ちなみに大運河の手前右手にはレストランや土産物店がありますが、この建物は当時同盟関係にあったヴェネツィア共和国から派遣された水夫たちが住んでいたことから「小ヴェニス」と呼ばれています。現在でも夏期には運河でボート遊びができますよ。

14.フロール(の泉水)へと続く小径へ入り、アポロンの水浴(群像)の方へ行こう。そこをひとめぐりして、彫刻、陳列室と浅浮彫を見るように。」
今度は反対側のエリアに入ります。並木のトンネルのような道を進んで右に曲がると、ドームの園があります。ここは何度か改造された後、1677年にマンサールが2つの豪華な大理石のパヴィリオンを建てました。現在ではこれらは礎石を残して失われ、残っているのは泉水を囲む六角形の欄干とさらにその周囲を囲む欄干のみです。これらから察するに、かなり美しい園だったのではないでしょうか。アポロンの水浴というのもよく分かりません。

15.「アンスラード(の泉水)を通り、そこを半周だけして、それを見た後、低い方から出るよう。」
アンスラードは最高神ジュピテルに反逆した巨人たちの筆頭で、ジュピテルに対して自分が投げた岩に自ら潰されたという巨人です。半周してからでないとよく観察できないので、木組みのアーケードをくぐって進みましょう。怪力の巨人らしく非常に高らかに水柱を上げ、今まさに堕ちてくる岩を苦悶の表情で見上げています。

16.「閣議の間(の園)へ入り、フロール(の泉水)までまた登って行って、そこを半周するように。」
フロールの泉水を右手に見ながら反対側の区画へ。中央の十字の泉水と4つの小さな泉水を持っていたこの園をルイ14世はかなり好んでいたようで頻繁に散歩や祝祭を行っていましたが、1704年に改造され今日の姿になりました。中央の噴水は薔薇の冠のデザインの中に231もの放水管があるそうです。

17.「山(の泉水)の方へ行き、星型の中央へ入る前に曲がった小径を半ばめぐるよう、そこへ着いたら、山(の泉水)をひとめぐりするように。」
この泉水は周囲の木立を含めて完全に失われ、ただの空き地になっています。かつては中央の泉水の周りに星型に木立と小さな泉水が配置されていました。

18.「セレス(の泉水)の方へ行き、劇場(の園)を目指すよう。そこで(様々な)場面転換を見たり、アーケード(の中)の噴水を眺めるように。」
セレスは豊穣の女神で、麦の束が添えられていることから夏を表す泉水だと分かります。次は劇場と名の付く園なのでどんなものか期待してしまいますが、これも今日では現存しません。古地図を見てみると、三方から水が流れ落ちる仕掛けだったようです。現在では中央にジャック=ミシェル・オトニエル作の「太陽王の美しい踊り」という現代的なオブジェが配置された泉水になっています。一方アーケードの中の噴水は現存しており、花々を持つ子供たちの楽しげな姿を見ることができます。

今回はここまで、次回はいよいよ完結編です。

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