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パトリックのオーケストラプロジェクト…中止、そして逃亡

18 3月 2020
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まずは先週行われていたパトリック主宰のオーケストラ「レ・フォリー・フランセーズLes folies françoises」のリハーサルの模様をお伝えします。

今回の公演はモナコ、オルレアンを回り、ルベルのバレ「元素」、ルクレールのヴァイオリン協奏曲によるバロックプログラムとヤン・マレシュYan Mareszの新作「衝動Tendances」の演奏が行われる予定でした。

ルベルの「元素」はずっと演奏してみたかった曲で、第一曲「カオス」でトーン・クラスター(2度音程を密集させた強烈な不協和音)に近い和音を使用するというセンセーショナルな作品です。私はこの曲のみオート・コントルのヴィオラを担当しましたが、弾いている方は自分の音が大きく聞こえるので意外とえぐみは感じないものなんですよ。ヴァイオリンの「火」を表す目まぐるしいパッセージは弾いていてとても楽しそうでした。

ルクレールの協奏曲は昨年ノルマンディーのオーケストラで弾いていたものと同じ曲で、勝手知ったるで弾くことができました。

問題はマレシュの新作。オーケストラパートの楽譜はあまり複雑ではないのですが、モダン・ヴァイオリンのソロパートは大変難しく、ソリストのカン・ヘスンはとてもよく弾きこなしていましたが何せオーケストラとのすり合わせが難しかったです。あと初日からマレシュがリハーサルに来ていて、強弱やニュアンスを現物合わせで細かく指示していたので、それにも時間をかけなければなりませんでした。全体は10のセクションに分かれていて、最後のセクションは弦楽器が16部音符を刻み、アクセントで分ける音のグループが2から8まで順に増減する仕掛け。5と7が難しくてみんな練習していましたね。

さて、初リハーサルが終わった木曜日の夜、マクロン大統領がテレビ演説を行いフランス全土の学校の閉鎖、移動や集会の自粛要請を発表しました。演奏会は当然集会にあたるため、翌日のリハーサルではおそらくオルレアン公演は中止になるだろうという話がなされましたが、モナコはフランスではないのでどうなるかまだ分かりませんでした。しかし翌土曜日朝にはモナコ公演の中止連絡を確認し、その他3月に予定されていた予定も全てなくなったことで、直ちに日本へ逃げることにしました。2週間以上予定もなく小さい自室にいるのは辛いことに加え、彼らは基本的にマスクをしていないこと、公衆衛生のレベルが日本に比べて低いこと、この期に及んでも彼らはバーで夜遅くまで飲んで騒いでいる(声が深夜まで聞こえていた)ことなどを考えると、さらに感染は加速するだろうと思ったためです。当日夜の航空券を即予約、往復券ですが現在KLMオランダ航空(エールフランスの共同経営社)では予約変更手数料が特別免除となっているのでとりあえず4月頭の便を適当に予約。突然の予約でしたが片道472€と特別高いわけではありませんでした。
そそくさと荷造りをし、フランスを脱出。夜だからなのかこの状況だからなのか、シャルル・ド・ゴール空港はまさにもぬけの殻…。機内は空席が割とありましたね。
日曜日の夜に日本に着きましたが、その後フランスでは商店の閉鎖、逐一証明書が必要となる外出制限、EUはシェンゲン圏境封鎖(一部加盟国は国境封鎖)、そして今日には日本政府がフランスを含むヨーロッパ各国他の日本人を含む入国者の14日間の隔離措置を21日から行うことを発表しました。今思えば躊躇なく帰ってきて本当に良かったなと思っています。
突然の帰国なので特に予定もありませんが、日本にも感染リスクがないわけではないので基本的には家で読書などしていようかなと思っています。両親もほとんどの日がテレワークになっていて、久しぶりの一家団欒の日々です。

今回はオーケストラプロジェクトと日本への逃亡の話でした。帰国時期は未定ですので、それまでは不定期更新とさせていただきます。

フランスの新型コロナウィルス感染と対策グッズ他の販売状況

11 3月 2020
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ほとんどの薬局には入り口に「マスクと消毒液の在庫はありません」という張り紙が出されています

今回も新型コロナウィルスの話題になりますが、フランスではこの数日で急速に感染が拡大しており、私が確認した最新情報では前日から300人ほど増えて1784人、33人死亡となっています。首都圏ではまだ集団感染は報告されていないようですが、その他の県ではいくつか確認され、そうしたところでは幼稚園から高校までの閉鎖措置が取られています。また1000人以上の集会は禁止されています。今月参加するパトリックのオーケストラプロジェクトや予約しているヴェルサイユのスペクタクルもどうなることやら…。
また先ほど入った情報によると、ヴェルサイユ地方音楽院の教師1人の感染が確認され、一緒に活動していた生徒数人も隔離対象になったとのことです。幸い私が普段活動していていない校舎での出来事だったようですが、来週予定されていた校内演奏会は中止になり、学生生活にも影響が波及し始めています。
さてそんな中、フランスでの感染対策グッズ他の販売状況などはどうなっているのか、昨日いろいろな薬局とスーパーマーケットを回って調べてきました。
まず世界的に不足しているマスクですが、フランスでは先週、医療用マスク(FFP2タイプ)の国内の在庫、5月末までの生産分を全て政府が管理し、医療機関と罹患者へ供給することを発表しました。購入するには処方箋が必要とのことで、予防のために購入することはできなくなりました。私がAmazonで注文したマスクもおそらく当分届くことはないでしょう…。またこれによりマスク着用者=罹患者という公式がほぼ確実なものになるので、残り少ない手持ちのマスクも着用して出歩くのは一層困難になりそうです。日本と同じように高額転売の案件もあるようで、逮捕者もでているとのこと。Amazonには怪しげな商品もありますが、中国系の業者だと使用済みのものかもしれないのでやめておくことにしています。
そもそもフランスでは公式見解として「マスクは感染予防には効果がない」とされています。需要に対して供給力が圧倒的に少なく、手に入らないことでパニックを起こさないようにする意図があるのかもしれませんが、ないわけはないと思ってしまいますね…。
次にアルコール消毒液ですが、こちらは徴集はされていないものの政府によって販売価格が設定されており高額販売できないようになっています。しかしいずれの薬局、スーパーでも品切れで、あるのは赤ちゃんの体を拭くためのスプレーくらいでした。先ごろ各薬局で調合した消毒液を発売できるよう法令が出されたそうなので、これから少しずつ供給がなされていくと思います。また代用品として日本でも注目されている次亜塩素酸ナトリウムの漂白剤(ジャヴェル水)はまだまだあるようなので、手持ちの消毒液がなくなったら購入を考えてみます。
医療用というわけではありませんが、ゴム手袋はスーパーに在庫があったので10セット入りを1つ買っておきました。
あとデマにより世界各国で品薄になりつつあるトイレットペーパー他の紙製品は、全てのスーパーに山ほど在庫があり、セールをしているくらいでした。フランスは大丈夫なのか、あるいはこれから無くなるのでしょうか。

隣国イタリアでは感染者が1万人を突破し中国に次ぐ世界第2位になり、オーストリアとスロベニアは国境を封鎖しました。マクロン大統領はこれについて「誤った判断だ」としていますが、さてこれからどうなるでしょうか。残念ながらフランスは世界第5位の感染者数となっています。

次回は今週から始まるパトリックのオーケストラプロジェクトについて書こうと思います。

新型コロナウィルス感染拡大とアジア人差別

4 3月 2020
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フランスでも新型コロナウィルス感染が広がっています。最新発表で212例、先週には感染経路が不明なフランス人60代男性教諭が残念ながら死亡しました。保健省はオワーズ、アヌシーなどいくつかの地域で集団感染が起きていると発表しています。ルーヴル美術館は職員たちが感染リスクを恐れて出勤を拒否したことで休館になりました。
まあこれだけマスクをしないで挨拶をするたび抱き合ったりビズしたりしているわけですから感染が広がるのは時間の問題だと思っていましたが、この期に及んでもマスクをしている人はほとんど見かけません。先週、所用で空港まで行ったのですが、空港関係者でさえほとんどマスクをしていませんでした。中国を始めいくつかの国からの渡航者の「監視を強化する」だけで制限が何も行われていない中、防疫は一体どうなっているのでしょう。
ヴェルサイユ宮殿周辺では中国の団体旅行が禁止されているため観光客は少なくなっていますが、気になるのはそれを差し引いてもマスクをしているアジア人が数週間前と比べて減った印象を持つこと。マスク不足によるものなのかもしれませんが、ウィルス感染者と思われることを恐れて敢えてしていない人もいるのかなと思いました。
先日の記事にも書きましたが、フランスでは「マスクを着用している人=何かの重症者」というイメージが定着しているようで、実際に出歩いてみるとやはり少し人が遠ざかったり、電車に乗ったら席を譲られたりします。2月あたりから新型コロナウィルスの警戒感が広まり、一回メトロに乗った時めちゃくちゃな英語で「お前はコロナウィルスか」と聞かれたことがありました(笑)。
こういったことは別に無視していればそれでいいのですが、やはりそういった反応をされると少し嫌なので電車に乗るときには何となく座席に座りに行くのを躊躇ったりしてしまいます。あるいはマスクを取ってしまうか。
ただ、こう感染が広まってくるとたとえマスクをしていなくてもいずれはこういった反応をされてしまうのではないかと思っています。私はまだ経験がありませんが、既にこういった事に遭っているという話もちらほら聞きます。「日本人だから大丈夫」と言えば良いと最初のころは思っていましたが、今や日本も汚染国として認識され始めてきているのでもうそういうことも言えません。そもそも彼らは私たちアジア人を日本人、中国人、韓国人…というように区別できないので、アジア人=人口が圧倒的に多い中国人と思ってしまうのは仕方ないことかもしれません。ただ、大元の原因は未だに西欧社会に残っている黄色人種に対する差別であると思っています。
1月26日、「クリエ・ピカールCourrier picard」紙のトップに「ALERTE JAUNE(黄色の警報)」という差別的な見出しで新型コロナウィルスの記事が掲載されたことで批判が殺到し、すぐに謝罪に追い込まれました。その後SNS上で「私はウィルスじゃない」というハッシュタグが広がりました。
素晴らしい先人たちの努力のおかげで第二次世界大戦後は白人至上主義がかなり薄らいできましたが、それでもやはり完全には無くならないもの。こうした非常時には見える形で出てくるのだろうと思います。
今後感染がさらに広がっていく中で、白人も感染している可能性が高いからもうあまり関係がなくなってくるか、ウィルスを持ち込んだ人々ということでさらに厳しい目で見られるか。少なくとも、日常の活動に影響が出なければ良いなと思います。
あと、感染者が増えることでこれ以上海外で日本や日本人の評価が下がりませんように!政府や国民一人一人の良い対応に期待しています。

次回は引き続き新型コロナウィルスに関連して、フランスでのマスク他感染症対策グッズの販売状況をお伝えしたいと思います。