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新型コロナウィルス感染拡大とアジア人差別

4 3月 2020

フランスでも新型コロナウィルス感染が広がっています。最新発表で212例、先週には感染経路が不明なフランス人60代男性教諭が残念ながら死亡しました。保健省はオワーズ、アヌシーなどいくつかの地域で集団感染が起きていると発表しています。ルーヴル美術館は職員たちが感染リスクを恐れて出勤を拒否したことで休館になりました。
まあこれだけマスクをしないで挨拶をするたび抱き合ったりビズしたりしているわけですから感染が広がるのは時間の問題だと思っていましたが、この期に及んでもマスクをしている人はほとんど見かけません。先週、所用で空港まで行ったのですが、空港関係者でさえほとんどマスクをしていませんでした。中国を始めいくつかの国からの渡航者の「監視を強化する」だけで制限が何も行われていない中、防疫は一体どうなっているのでしょう。
ヴェルサイユ宮殿周辺では中国の団体旅行が禁止されているため観光客は少なくなっていますが、気になるのはそれを差し引いてもマスクをしているアジア人が数週間前と比べて減った印象を持つこと。マスク不足によるものなのかもしれませんが、ウィルス感染者と思われることを恐れて敢えてしていない人もいるのかなと思いました。
先日の記事にも書きましたが、フランスでは「マスクを着用している人=何かの重症者」というイメージが定着しているようで、実際に出歩いてみるとやはり少し人が遠ざかったり、電車に乗ったら席を譲られたりします。2月あたりから新型コロナウィルスの警戒感が広まり、一回メトロに乗った時めちゃくちゃな英語で「お前はコロナウィルスか」と聞かれたことがありました(笑)。
こういったことは別に無視していればそれでいいのですが、やはりそういった反応をされると少し嫌なので電車に乗るときには何となく座席に座りに行くのを躊躇ったりしてしまいます。あるいはマスクを取ってしまうか。
ただ、こう感染が広まってくるとたとえマスクをしていなくてもいずれはこういった反応をされてしまうのではないかと思っています。私はまだ経験がありませんが、既にこういった事に遭っているという話もちらほら聞きます。「日本人だから大丈夫」と言えば良いと最初のころは思っていましたが、今や日本も汚染国として認識され始めてきているのでもうそういうことも言えません。そもそも彼らは私たちアジア人を日本人、中国人、韓国人…というように区別できないので、アジア人=人口が圧倒的に多い中国人と思ってしまうのは仕方ないことかもしれません。ただ、大元の原因は未だに西欧社会に残っている黄色人種に対する差別であると思っています。
1月26日、「クリエ・ピカールCourrier picard」紙のトップに「ALERTE JAUNE(黄色の警報)」という差別的な見出しで新型コロナウィルスの記事が掲載されたことで批判が殺到し、すぐに謝罪に追い込まれました。その後SNS上で「私はウィルスじゃない」というハッシュタグが広がりました。
素晴らしい先人たちの努力のおかげで第二次世界大戦後は白人至上主義がかなり薄らいできましたが、それでもやはり完全には無くならないもの。こうした非常時には見える形で出てくるのだろうと思います。
今後感染がさらに広がっていく中で、白人も感染している可能性が高いからもうあまり関係がなくなってくるか、ウィルスを持ち込んだ人々ということでさらに厳しい目で見られるか。少なくとも、日常の活動に影響が出なければ良いなと思います。
あと、感染者が増えることでこれ以上海外で日本や日本人の評価が下がりませんように!政府や国民一人一人の良い対応に期待しています。

次回は引き続き新型コロナウィルスに関連して、フランスでのマスク他感染症対策グッズの販売状況をお伝えしたいと思います。

ヴェルサイユ便り