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モンパルナスとクレープ店街

18 12月 2019
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クレープ店が競い合う2つの通り

先週の木曜演奏会ではド・ラランド作曲による王のための器楽組曲をいくつか演奏しました。トランペットとティンパニ、太鼓も入り大変華やかな響きでした。ド・ラランドの器楽曲は当アンサンブルが2015年の「太陽王の愛した舞踏と音楽」で演奏した「第2ファンタジーまたはカプリース」を始め旋律とバスのみで今日に伝えられているものが多く、オーケストラで演奏する際は内声パートの補完が必要になります。今回使用した楽譜はヴェルサイユバロック音楽研究センターの楽譜編纂責任者で研究家のトマス・ルコント氏と、ヴェルサイユ地方音楽院の室内楽教師でチェリストのフランソワ・ポリ氏の補筆によるもので、私が担当したのはオート・コントルでしたがいずれも当時の書法を研究しており、十分に旋律的でよく仕上がっているものでした。先日行ったアンサンブル・コレスポンダンスの演奏会でもルコント氏補筆の「第2ファンタジーまたはカプリース」が演奏されていましたし、各氏を始めとした補筆版でこれらド・ラランドの名曲が日本で聴ける日も近いかもしれませんね。
金曜日にはパーセルの「妖精の女王」の最後の演奏会があり、これで本年の演奏会は終了になりました。学生のアマチュアのためのオーケストラで前回の演奏会から日が開いたこともあり完成度は今一つ。帰りの車の中では「まあ教育目的のオーケストラだから…」とパトリックが漏らしていました。

さて、今回の特集はモンパルナスについてです。
昨年から今年の春にかけては語学学校に行くため平日はほぼ毎日通っていましたが、あまり周辺を散策することはありませんでした。クレープ店街で有名なことも知っていましたが一人で入る気にもなれず、知人と2軒ほど入った以外はまったく知らないまま。今回思い立って改めて行ってみました。
とはいうものの現在もストライキ真っ最中。まずはヴェルサイユシャンティエ駅からN線の朝の最後の電車を捕まえる…はずが運よく近郊電車TERが来たので乗車。過去にも書いたかもしれませんがTERか無停車の快速電車に乗れると13分でモンパルナスに着けるので、ヴェルサイユから一番早く着けるパリの駅がモンパルナスなのです。
10時前に着いてしまいまだクレープ店が開かないのでまずは駅の中を探索。語学学校に行っている期間はずっと工事をしていたのですが、最近になって1、2階にカフェやブティックが整備されました。普段なら賑わいを見せるのでしょうが、朝の運行時間が終わり国鉄、メトロともに夕方まで列車がなくなって駅舎内は閑古鳥が鳴いていました…。
正面から駅を出るとガラス張りのビル、モンパルナスタワーがそびえています。高さ210m、日本人の感覚からすればそんなに飛びぬけて高いビルではありませんが、歴史的建造物が多いパリ市内では最も高いビルで、長らくフランスで最も高いビルでしたが2011年に増改築されたデファンス地区のトゥール・ファースト225mにその座を奪われたそうです。
オフィスビルですので観光客が行けるのは展望デッキ、テラスと56階のレストラン「ル・シェル・ド・パリ」だけです。展望階に行くための入場料は18€…これ高くありません?ルーヴルよりも高いですよ?しかもパリ・ミュージアム・パスも適用外。
というわけで、取材のために入ろうかと一瞬思いましたが特段興味もないのでやめました(笑)。いつか行ったら追記します。
タワーの横には同じようなガラス張りのデザインのショッピングセンターであるギャラリー・ラファイエットがあります。こちらも入ったことがなかったので今回入ってみましたが、何の変哲もないショッピングモールでした。ちなみに有名なギャラリー・ラファイエットはオペラ地区にある本店です。
そうこうしているうちに良い時間になってきたのでクレープ店街へ。クレープ店が集中しているのはモンパルナスタワーの東、オデッサ通りとモンパルナス通りです。なぜモンパルナスにクレープ店が多いのかというと、モンパルナス駅がブルターニュ地方からの鉄道の終着駅であったため、駅周辺にこの地方の人々のコミュニティが出来ていったからです。数あるクレープ店の中で特に有名なのがモンパルナス通りにあるジョスランというお店。いざ行ってみると!あれれ、シャッターが下りている…ドアの張り紙を見ると、水曜日と日曜日に営業…と。普通逆じゃないですか?あるいはこれもストライキの影響か。
2軒隣にプティ・ジョスランというお店がありこちらは営業していましたが、せっかくなので本家ジョスランに行きたいなと思い今回は別のお店にすることに。インターネットの事前調べで評判が高かったオデッサ通りの「マノワール・ブルトン」へ入店しました。
ガレット、クレープ、飲み物のランチセットが9.90€でお得だったのでこれを注文。ガレットはラタトゥイユ(南仏の野菜炒め)とハム、チーズが入った「プロヴァンサル」、クレープはクレープ生地にチョコレートがかかっているだけのシンプルな「ショコラ・メゾン」、飲み物は王道のシードルにしました。ガレットはこのセットで選べる「プロヴァンサル」以外の2つは私の苦手な卵が入っているものだったので他に選択肢がなかったというのが実情…。
ここでガレットとクレープの違いを少しご紹介。一般的にガレットはそば粉を原料とし、肉、卵、野菜、チーズなどを包んだ物が多く、クレープはガレットから派生したもので小麦粉を原料とし、チョコレート、生クリーム、フルーツなどを包んだ(載せただけのことも多い)物を差します。ガレットは主食、クレープはスイーツという認識で概ね良いでしょう(逆のパターンもあります)。これらを出す店を「クレープリーCrêperie」と言いますが、なぜ本流であるはずのガレットリーではないのでしょうね。
注文してしてからあまり待たずに早速ガレットが来ました。このラタトゥイユが包まれた「プロヴァンサル」、とても美味しかったです!家でも何とか作れないかなと思い中身を調査してみましたが、ラタトゥイユ、ハム、チーズだけでラタトゥイユと生地さえ用意すれば簡単にできそうでした。
続いてクレープ。チョコレートがかかっただけのシンプルなものですが、ガレットと通して食べ終えてみるとかなり満腹になりました。ガレット、クレープって見た目は薄くて軽そうですが結構ボリュームあるんです。結構食べる方の私がこのような感想を持ちますから、少食の方はどちらか一方にした方が良いかもしれません。
クレープを食べ終わった後はコーヒーを店員に勧められ、大概は注文すると思いますがまだシードルが残っていたので今回は遠慮することに。

さて、シードルでほろ酔いになって店を出ると時刻は14時少し前。N線は16時半まで列車がなく2時間半何かをして待っても良かったのですが、せっかくなのでどうにかして帰る方法を探し出す冒険をすることに。バス、メトロ、トラムを駆使して何とか16時頃にヴェルサイユに帰ることができました。ただモンパルナスから乗車したバスが超満員で所要時間も伸びており、気分がやや悪くなりました…。移動できないことはありませんが、やはり無理せずに列車が動く時間まで待つほうが良いなと思いました。
このストライキ、クリスマス期間も停戦はないと労働組合は発表しています。私は日頃ヴェルサイユにいるので影響はあまりありませんが、毎日通勤通学でパリを移動している方々には本当にお疲れ様と言いたいですね。一体いつまでこの状況は続くのでしょうか。

次回はアップロードの都合により新年1月8日になります。休暇中に訪れるモン・サン=ミシェルを特集したいと思います。皆さま良いクリスマスと新年を!

大規模ストライキとデモ

11 12月 2019
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国鉄ストライキでがらんとしたサン=ラザール駅

先週の日曜日は王室礼拝堂でセバスチャン・ドーセ率いるアンサンブル・コレスポンダンスのド・ラランドのグラン・モテを聴きに行きました。王室礼拝堂でのド・ラランドはもうただただ至福の時間!ミゼレーレやディエス・イレといった葬礼のためのモテを中心に構成されていてとても重厚感のあるプログラムでした。
さらに昨日は王室歌劇場でクリストフ・ルセ率いるレ・タラン・リリクのリュリ「イジス」をコンサート上演で観ました。ルセとそのオーケストラは今回生では初めて聴きましたが、優雅さと繊細さが特徴のアンサンブルですね。リュリの音楽の素晴らしさは言うまでもありません。先日の「カドミュスとエルミオーヌ」でも思ったのですが、リュリの悲劇って通して観劇すると5幕の最後にすごくこみあげてくる感動があるんです。舞台装置や衣装があればなおさらなのでしょう。ところで20時に始まり、終わったのが23時半頃だったのですが、観客や出演者、スタッフの皆さんは無事家に帰れたのでしょうか…。

さて今週は、現在パリを震撼させているストライキについてお伝えします。
マクロン大統領が掲げている年金改革政策への抗議で、先週5日からフランス各地でストライキ、デモが盛んに行われています。初日であった5日には警察、消防、病院、教育機関までストライキを行いました。公共性の非常に高いこれらの組織がストライキをするって日本人の感覚からするとかなり異常なことですよね(もちろん緊急時には対応を行ったそうです)。その他電力、運送、航空など参加した会社は挙げればきりがありません。
もちろん常日頃からストライキを頻発しているフランス国鉄SNCF、パリ交通公団RATPもストライキを実施しているのですが、これらが異常なのはこのストライキが「無期限」であること。つまり何らかの譲歩を引き出せない限り終わらないということです。間もなく一週間を迎える今日も実施され続けています。当然市民の通勤事情にも深刻な影響がありますが、私の友人の一人は先週2日間は自宅勤務「テレ・トラヴァイユ」できたと言っていました。
幸いこの一週間の私の活動はヴェルサイユのみでしたのでほとんど影響を受けませんでしたが、パリに住む同僚や演奏会に来るお客様方は大変。車に皆で相乗りしたり、あるいは何時間もかけて歩いたりして対処しているようです。5日には王室礼拝堂で木曜演奏会があり、ヴェルサイユ宮殿も閉鎖される中誰も聴きに来ないのではと心配していましたが、通常の7割くらいのお客様が来てくれました。殆どヴェルサイユ市民なのかもしれませんね。ありがたいことです。
ヴェルサイユの街は至って平和、一番アクセスのよいRERC線が全面運休のためか日頃宮殿へ押し寄せる観光客も減っているようで何だか静かです。それでもヴェルサイユ・リーヴ・ドロワト駅を発着するL線は本数は減っているものの日中も列車があり、ヴェルサイユ・シャンティエ駅を通るN線は朝と夕方、夜のみですが運行しているので、ヴェルサイユ観光を考えている皆様はどうか諦めずに、これら2線のスケジュールを確認の上いらっしゃってくださいね。またパリのポン・ド・セーヴルとヴェルサイユを結ぶ171番のバスも本数は少ないものの運行しています。なおヴェルサイユ周辺のバスについてはフェービュスというパリ交通公団とは別の会社が運行しており、こちらはストライキを行っておらず日頃と変わりなく運行しています。パリのticket+やナヴィゴで乗車できるので、宮殿から遠くの駅に着いてしまってもすぐにアクセスできますよ。
と、このままでは「ヴェルサイユは平和です」という記事で終わってしまうので、昨日パリへ用事を済ませに行ってきました。
本数が比較的多い朝に出発、最初の目的地はエトワール凱旋門近くにある日本大使館。ヴェルサイユ・リーヴ・ドロワト駅からL線でまずはデファンスを目指します。普段このラッシュ時間帯にこの線に乗車することはないので通常と比べてどうかは何とも分かりかねるのですが、2駅くらい進むと車内は日本の通勤電車よろしく超満員。その後の駅では列車に乗車できずホームに溢れた人たちが各駅で見られました。おそらく本数削減になっていることと無関係ではないでしょう。メトロやバスでもそうなのですが、フランス人はどうもドア付近に溜まりあまり車内奥に進もうとせず、また自分たちが鮨詰めになることを非常に嫌がります。天下に名高い混雑路線、東急田園都市線沿線民であった私としては「あと5人は乗れるのにな…」とか思ってしまいますが、積極的に次の電車を待つフランスの方が良いのかもしれません。
そんなこんなで、混雑はあったもののおおむね時間通りにデファンスに到着、ここからRERのA線でエトワールまで乗ります。ホームに既に列車がいたので何の苦も無く乗車することができましたが、こちらも本数削減が行われ日中は運休。
大使館の開館と同時に手続きを済ませ、A線で次の目的地オペラ周辺へ。朝の最後の列車を何とか捕まえることができました。駅にあるバス案内の電光掲示板は軒並み「保証なし」、つまりいつ来るか分からないということです。シャルル・ド・ゴール空港へアクセスするロワシー・バスも同様で、乗降場にも行ってみましたが明確な案内はありませんでした。でも道路上には結構バスを見かけましたので、各線とも一応走ってはいるようです。
オペラ周辺で用事を済ませてヴェルサイユに帰るにあたり、14番線のメトロでサン=ラザール駅を目指します。メトロは全面閉鎖される路線も多い中、1番線と14番線は自動運転のためストライキの影響を受けず通常運行しています。この2つをうまく利用することがストライキ中のパリ移動でカギになると思いますね。
あとはサン=ラザール駅からあらかじめ予定されていたL線の列車でヴェルサイユへ帰ることができました。いつもひっきりなしに列車が往来する大ターミナル駅も写真の通り。長距離列車もかなり運休になっているようです。

こうしたストライキと並行して、5日、7日、昨日10日とパリで大規模なデモが行われ、商店が閉鎖したり警官隊が大規模に展開するなどしています。危ないかもしれないので、パリに来た際にデモが行われていたらなるべく近づかないようにするのがおすすめです。
以上のような現況ですので、近日パリを訪れる方はフランス国鉄、パリ交通公団の公式サイト(英語あり)で発表される最新情報をよくご確認の上、最大限観光を楽しんでくださいね。
次回はモンパルナスのタワーとガレット店街についてご紹介します。

ヴェルサイユ宮殿スペクタクルのレビュー

4 12月 2019
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来年創立250周年を迎える王室歌劇場ではアツいプログラムが目白押し

今日の最高気温は4度、いよいよ寒さが身に染みる季節になりました。宮殿周辺や私の住んでいる通りでは今週からイルミネーションが始まり、通りゆく人々の心を温めてくれます。
そんな中、ヴェルサイユ宮殿では連日アツいスペクタクルが催されています!今回は先月下旬から今週にかけて行った5つのオペラ、演奏会をまとめてレビューしたいと思います。

まずは11月20日、王室歌劇場でエマニュエル・アイム率いるル・コンセール・ダストレのグラン・モテ。ラモーの「主が連れ帰ってくださった時In convertendo Dominus」、モンドンヴィルの「イスラエルの民エジプトを出でIn exitu Israël」、そしてカンプラのレクイエムという超激アツなプログラム。これはもう行くしかないですよねー。エマニュエル・アイムは業界ではまだまだ少ない女性指揮者で、このアンサンブルを生で聴いたのは今回が初めてでしたが、デビュー時のラモー「イポリトとアリシ」の素晴らしい上演の映像は随分前から知っていました。
ラモーの「主が連れ帰ってくださった時」はあの1曲目がもう最高に良いんですよね。弦楽器とフルートが織りなすあの絶妙な色合い…。これこそラモーの成せる業といった感じです。このオーケストラもしっかり表現してくれました。モンドンヴィルの「イスラエルの民エジプトを出で」は今回初めて聴きましたが、この作品はすごい!特異な調性の使用、劇的な歌詞を表現するためのオーケストラの効果音、最初から最後までモンドンヴィルの世界に引き込まれました。オーケストラパートも難易度の高い箇所が多かったように思いましたが、弦楽器奏者たちが果敢に挑んでいて効果は抜群。カンプラのレクイエムは6月に私たちも演奏したので記憶に新しい所ではありますが、研究センターの指揮者オリヴィエ・シュネーベリとは当然違う味付けでまた新鮮でした。
さて続いてはその翌日、王室礼拝堂での木曜演奏会を終えた後に行ったエルキュールの間での演奏会。リュリとその後継者のオペラで活躍したオートコントル歌手ルイ・ゴラール・デュメスニーLouis Gaulard Dumesnyへのオマージュを捧げたプログラムで、ベルギー人テノール歌手レヌー・ファン・メシュレンReinoud Van Mechelenが彼のアンサンブルを率いて歌い通すリサイタルでした。エルキュールの間での演奏会は年に数回あるのみで、主に室内楽や歌手のリサイタルが行われています。あの息をのむほどの装飾が施されたルイ14世渾身の作であるエルキュールの間での演奏は雰囲気からしてもう格別。
演奏の方はというと、オーケストラは力強いバスラインが特に素晴らしくて申し分ないのですが、当のメシュレンは…どちらかというとタイユ寄りで、オートコントルにしてはやや声が重いかなと個人的には思ったのと、レシタティフは「歌う」のではなくもう少し個々の言葉を「語る」方が良いかなと思いましたが、一緒に聴いていた研究センターの歌手たちは絶賛していたのでそうでもないのかもしれません。プログラム構成はリュリとその弟子のコラス、デマレ、シャルパンティエの悲劇の名場面集といった感じでした。個人的にツボだったのはアンコールでカンプラの「優雅なヨーロッパ」スペインの冒頭の素晴らしいパッサカーユを用意してくれたこと。あの作品は悲劇ではないのでこの演奏会には取り入れなかったのかなと思っていたところでの演奏だったので、これはとても嬉しかったです。
3つ目は24日に行った王室歌劇場でのカヴァッリ作「エルコール・アマント」の舞台上演。ルイ14世の宰相マザラン枢機卿の下イタリア・オペラをフランスに導入しようとカヴァッリをパリに招聘して制作、1662年に上演された記念碑的な作品です。演奏はラファエル・ピション率いるピグマリオン。3時間半の長大な作品ですが、あまり上演されないだけに詳細なあらすじがインターネットでも見つけられず、結局良く分からないまま観劇してしまったのを後悔しました。パンフレット買えばよかったですね。演奏は素晴らしいかったのですが、演出が個人的にはあまり好みではありませんでした。喜劇なので突っ込みポイントを作るのは良いけれど、真剣な場面でもちょくちょく変な笑いのポイントを作ってしまっていて何だか気が散るし、あとヴィーナスがピンクの気球(のような飛ぶ何か)を操縦しながら降りてきたり、ネプチューンが金色の潜水艦から出てきたりと音楽の雰囲気とはあまりに不釣り合いな現代的要素があるのもマイナスポイント。まあでもこの作品を舞台上演で観劇できる機会はそうそうないので、その点では満足でした。
4つ目は26日のリュリ「カドミュスとエルミオーヌ」の王室歌劇場でのコンサート上演、演奏はヴァンサン・デュメストル率いるル・ポエムアルモニーク!同じ作品の照明、衣装共に上演当時をできるだけ再現した上演映像はもうただ素晴らしいの一言で、コンサート上演なのは少し残念ですが是非生で聴きたいと思いました。上演前にはヴァンサンの「15分解説」にも行くことができ、オペラ上演のこと、発音のことなど色々な話が聞けました。演奏は勿論一級品。どうしたらあのサウンドが実現できるんでしょうね…。プロローグと5幕の長大な作品ですがあっという間に終わってしまいました。もっと聴いていたかった。
最後は昨日12月3日のジャン=バティスト・ロバンの王室礼拝堂でのオルガンリサイタル。ロバンは私の所属するヴェルサイユ地方音楽院のオルガン講師でもあります。王室礼拝堂のオルガンは日頃の木曜演奏会でパリ国立高等音楽院のオルガン専攻生により演奏が行われていて何度も聴いたことがあるのですが、ロバン先生の演奏ということで今回改めて聴きました。ルイ・マルシャンやジャン=フランソワ・ダンドリューの「プラン・ジュPlein Jeu(満ちた演奏での意)」の楽章は奏者と共にヴェルサイユ王室礼拝堂のオルガンの本領発揮というところ。もうこれに慣れてしまったら他で聴く気なんて無くなってしまうくらい、威厳と品格が溢れた響きです。一方でロバン先生自作の曲も1曲披露されました。難解すぎて一般的にはやや不快な現代作品(愛好家の方々申し訳ありません)というわけではありませんでしたが、やはり前後にこのオルガンと空間により適した古い作品が並んだだけに、個人的には古い作品が好みだなと思いました。あとオルガンリサイタルながらトランペットとパーカッションが加わり、リュリの「町人貴族」でのトルコ人行進曲やド・ラランドの「ヴェルサイユ大運河のためのコンセール」なども聴くことができました。

来年2020年はヴェルサイユ王室歌劇場創設250周年にあたり、特にオペラは昨年度よりも興味深いプログラムが多くラインナップされています。今後も少しずつこのブログでレビューしていきたいと思います。
次回は今週末フランスを震撼させる?予定のストライキ&デモについてお伝えしたいと思います。