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パリのメトロ 後編

27 2月 2019
パリのメトロ 後編 はコメントを受け付けていません

1番線と14番線では自動運転が行われ、4番線もホームドアの設置が進んでいます

もはやコートが要らないほどに暖かくなりました。このまま春に突入してしまうのでしょうか。
こうして半年ほど生活してみると、厳しい夏も冬も案外短く、あとは過ごしやすい気候だなと思います。夏は乾燥していて、冬は湿っているのも大きいでしょう。
先週末はバーゼルから友人が訪れたので、パリやヴェルサイユの観光名所に案内しました。エッフェル塔やシャンゼリゼ周辺などは一人ではあまり行きたいと思わないので、こういった機会に訪れたいのです。
毎週土曜日はパリで「黄色いベスト運動」のデモが継続して行われています。デモが始まってから土曜日はヴェルサイユにいて支障はありませんが、フランス人たちも半数はもうやめて欲しいと思っているという世論調査がニュースになっていました。

さて、今週は「パリのメトロ」後編です。前回は基本的な情報でしたので、今回はもう少し踏み込んだ内容について書きたいと思います。

・各線の特徴
現在メトロは1から14番線と支線2本の計16路線あり、日本の地下鉄のように路線ごとに固有の色を持っています。開業は14番線を除きいずれも20世紀初頭で、様々な変革を経て今日に至っています。

①ラ・デファンス~シャトー・ド・ヴァンセンヌ
日本の銀座線に匹敵する、パリの重要な地区を通る路線。高層ビルが立ち並ぶ北西の新市街ラ・デファンス、エトワール凱旋門、コンコルド広場、ルーブル、シャトレ、バスティーユ、リヨン駅を経てヴァンセンヌ城と森までを結びます。ホームドアが全駅に整備され、自動運転が行われています。

②ポルト・ダフネ~ナシオン
エトワール凱旋門、モンマルトルのサクレ・クールにほど近いアンヴェールなどを通ります。モンマルトルに行かれる方は利用されるかと思います。

③ポン・ド・ルヴァロワ・ベコン~ガリエニ
サン=ラザール、オペラ、レピュブリックを通りガリエニまでを結びます。ガリエニにはバスターミナルがあり、長距離バスを利用される方は縁があるかもしれません。

③支線 ガンベッタ~ポルト・デ・リリア
わずか4駅だけの路線です。名所は特にありません。

④メリー・ド・モントルージュ~ポルト・ド・クリニャンクール
モンパルナス、シテ島、シャトレ、北駅などを通ります。現在ホームドアの設置が進んでおり、まだ設置されていない駅も乗車位置が全路線で唯一示されています。

⑤プラス・ディタリー~ボビニー・パブロ・ピカソ
オステルリッツ駅、バスティーユ、レピュブリック、東駅、パリ国立高等音楽院最寄り駅のポルト・ド・パンタン駅などを通ります。

⑥シャルル・ド・ゴール・エトワール~ナシオン
エトワール凱旋門、エッフェル塔、モンパルナスなどを通ります。地上区間が多く、その中でもパッシー~ビル=アケム間はセーヌ川とエッフェル塔を車窓から見ることができる有名な区間です。

⑦ヴィルジュイフ=ルイ・アラゴン~ラ・クルヌーヴ1945年5月8日
メリー・ディヴリー~マレ地区、シャトレ、ルーヴル、オペラ、東駅などを通ります。南部はメゾン・ブランシュ駅を基点に路線が分岐しており、車内外に点灯式の行き先表示があります。

⑦支線 ルイ・ブラン~プラス・デ・フェット方面
8駅からなる支線で、東側はループになっています。名所は特にありません。

⑧バラール~クレトゥイユ・ポワント・デュ・ラック
アンヴァリード、コンコルド、マドレーヌ、レピュブリック、バスティーユを通る比較的長い路線です。

⑨ポン・ド・セーヴル~メリー・ド・モントルイユ
サン=ラザール駅に近いサン=オーギュスタン、レピュブリックなどを通ります。西の終点ポン・ド・セーヴルからはヴェルサイユ宮殿行きの171番バスが出ていて、RERが止まったり終電を逃したりしたときは私はお世話になります。

⑩ブローニュ・ポン・ド・サン=クロード~オステルリッツ駅
ブローニュの森の近くから、RERC線に乗り換えができるジャベル・アンドレ・シトロエン駅、カルティエ・ラタンを経てオステルリッツ駅までを結びます。RERC線の工事期間中は代替路線として活躍します。西側のそれぞれの駅では1方向しか乗車できない区間があり、もともとループ線であったものを後になってさらに延伸したため、このような運行形態になっています。

⑪シャトレ~メリー・デ・リリア
シャトレやレピュブリックなどを通りますが観光にはあまり使わない路線ではないでしょうか。

⑫メリー・ディッシー~オーベルヴィリエ・フロント・ポピュレール
モンパルナス、コンコルド、マドレーヌ、サン=ラザールなどを通ります。

⑬シャティヨン・モントルージュ~アスニエール・ジャンヌヴィリエ・レ・クルティーユ~サン=ドニ・ユニベルシテ
モンパルナス、アンヴァリード、シャンゼリゼ、サン=ラザール、サン=ドニを通ります。ラ・フルシュ駅で分岐しますが車内にドア上案内表示があるため点灯式の行き先表示器は現在では撤去されているようです。

⑭オリンピアード~サン=ラザール
オステルリッツ駅、シャトレ、マドレーヌを通りサン=ラザールまでを結びます。一際深い地下を走る路線で、乗車するには数回エスカレーターに乗らなければホームにたどり着けません。

・使用車両
集電方式は全線とも銀座線や丸ノ内線のような、レールの横に集電用のレールを設けた第三軌条方式です。高圧の電流が流れていますので何か物を落としても絶対に線路へは下りないでください。
運転方式の違いとして、加減速性能を高めるためタイヤを併設した路線とレールだけの路線があります。タイヤを併設した車両の加減速は凄まじく、立っているとよろめいてしまうほど。これらの路線に乗車する際は座ることをお勧めします。
2019年現在活躍している車両は以下の通りです。タイヤのある車両はMP形(Métro Pneuの略)、鉄輪のみの車両はMF形(Métro Fer)、数字は命名された年号の下2桁です。
【MP形】
MP59形…使用路線⑪
現在メトロで活躍する最古参車両。今回の調査で初めて乗車しました。昔ながらの「パリのメトロ」を味わえる車両です。ドア開閉はレバー式、クロスシート、ドア上の案内表示や自動放送は一切ありません。固定されている座席は少し弾力がありました。

MP73形…使用路線⑥、⑪
「パリのメトロ」を味わえる車両として個人的には好きな車両です。ドア開閉はレバー式、クロスシート、ドア上の案内表示や自動放送は一切ありません。

MP89形…使用路線④、⑭(自動運転形)
前面がくの字形になっている車両で、自動ドア、車端部がロングシートのセミクロスシート、自動放送があり、車両間の行き来が可能です。14番線は自動運転が行われているため運転台がなく、MP05形との違いはよく見ないと分かりません。

MP05形…使用路線①、⑭
自動運転路線のための車両です。見かけや仕様はMP89形とほぼ同一で、見分け方は私もまだ良く分かっていません…笑。編成両端部は運転台がないため座席に座ることができ、運転台のようなシールが貼ってあって電車好きな子供にはたまらない空間になっています。

【MF形】
MF67形…使用路線③、③支線、⑩、⑫
鉄輪式では最古参車両。仕様はMP73形とほぼ同一でやはり個人的には好きな車両です。3番線の車両は改造が施されており、片側が交互にロングシートになったセミクロスシート、ドア上案内表示と自動放送があります。

MF77形…使用路線⑦、⑧、⑬
側面が折れ曲がった特徴的なスタイルで、行き先が複数ある路線に投入されました。押しボタン式ドア、車端部がロングシートのセミクロスシートで、車内外に点灯式の行先表示器を装備しています(前述のように13番線の車両はドア上案内表示が設置されたためこれらは撤去されたようです。)

MF88形…使用路線⑦支線
⑦支線だけに使用されている車両。台車に先進技術を用いながら、それに問題があって投入がこれだけになったいわゆる「迷車」です。押しボタン式ドア、クロスシート、車両間の行き来が可能で、固定座席は少し弾力がありました。

MF01形…使用路線②、⑤、⑨
比較的新しい車両で、旅行者には好印象ではないでしょうか。自動ドア、ボックスシートは交互に2+1となったセミクロスシート、ドア上案内表示、自動放送があり、車両間の行き来が可能です。

以上が現在使用されている車両ですが、さらに現在MF19形という車両が計画されているようです。古参の鉄輪式車両は数年後に順次置き換えられるようなので、古い車両が好きな方は是非今のうちに乗りに来てくださいね。

・その他よもやま話
面白い駅名…メトロもただ移動するだけではつまらないですが、時々面白い駅名を見かけることも。例えば6番線のケ・ド・ラ・ガールQuai de la Gare(直訳すると駅のホーム駅)、8番線と9番線のボンヌ・ヌヴェルBonne Nouvelle(直訳すると良いニュース駅)や日付がついた駅名など。あなたもお気に入りの駅を探してみてはいかがでしょうか。

かぶりつき…運転台と客室を隔てる窓は遮光加工が施されていますが、よく見ると前面展望が見えます。パリのメトロは東京以上に使用されなくなった路線や駅など興味深い空間が多いです。ただやりすぎると何かあるのかと運転士の気に障るかもしれないので、ほどほどにしましょう。1番線や14番線は自動運転で運転士がいないので遠慮なく見ることができます。

運転士…運転士は女性の方が多い印象で、制服は来ておらず見た目は乗客と同じです。コーヒーを飲みながら運転していたりなどすることもありますが、割と普通のことなので大目に見てあげましょう笑。

新塗装…現在すべての車両がパリ交通公団の色である白と緑色に塗られていますが、今後の新型車両投入にあわせてイル=ド=フランス・モビリテの色である白と水色になっていくようです。RERの車両では一部の編成が既にこの新塗装になっていますが、今後メトロの車両の動向も目が離せません。

パリのメトロについては大体この辺りでしょうか。今回は何だか非常に鉄分の濃い回でしたね。
次回からはヴェルサイユ宮殿の各施設についてのシリーズをゆっくり進めていくこととします。

パリのメトロ 前編

20 2月 2019
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メトロの看板一つとっても何やらお洒落なのがパリ流儀

厳しい冬はどこへやら、外を出歩くにも手袋が要らないほど暖かくなってきました。あれだけ曇りの日が多かったのに、連日晴天に恵まれているヴェルサイユです。
自身が弾いた木曜演奏会から1週間、プログラムが興味深かったので今度は聴衆として木曜演奏会に行ってきました。開始前の行列に並んでいたら「あなたは先週のヴァイオリニストでしょ」と声をかけられました笑。
アントワーヌ・ボエセのミサ曲を中心に進むプログラムで、演奏はヴェルサイユバロック音楽研究センターが育成する少年少女を中心とした合唱団と地方音楽院の通奏低音奏者たちでした。途中のソロも子供たちが担当していて、これがびっくりするほどうまい!!!古楽唱法の純粋培養で研究センターの訓練を受け、日頃から王室礼拝堂など演奏環境にも恵まれているであろう彼らはとてもレベルが高いです。機会があれば是非一度彼らの演奏会へ足を運んでみてください。
そんな彼らの演奏を楽しんでいたら、突然館内で警報が鳴りだしました。構わず指揮者に従って懸命に演奏を続ける彼らでしたが、警報とそれに続く館内放送とミサ曲で響きがカオスなことに。早く止んでほしいと誰もが思っていたであろうところで突然後方から誘導員が退出するよう促し、私たち観客はやむなくプログラム半ばにして屋外へ出ることになりました。皆残念そうに、帰ってしまう人も少なくありませんでしたがシャペル周辺で待機する人も多かったので、どうなることかと待っていたらしばらくして再開するとのこと。警報が鳴りだした箇所の少し前から再度演奏が行われ、無事最後まで公演は行われました。
突然のことにも一糸乱れず演奏する彼らは胸を打つものがあり、拍手もひと際大きかったように思います。

さて、今週のテーマは「パリのメトロ」です。
私は普段ヴェルサイユに住んでおり、音楽院には徒歩で、語学学校には国鉄線(もう国電って言ってもいいですか?)でモンパルナスまで行くのでメトロには何か用事がないと乗りません。しかしパリ観光にはバスと合わせて欠かせないメトロのこと、今回の執筆にあたり改めて各線に乗車してきました。

・そもそもメトロとは?
メトロとは、パリにおいて①から⑭の数字が与えられた地下鉄のことを指します。パリの市内では少し歩けばほぼどこでもメトロの駅を見つけることができるほど、駅間が短く短距離の移動に最適です。
東京のような一般の鉄道線との相互乗り入れは一切ありません。国鉄線と直通しているAからEのアルファベットで示されるRERは長く地下を走りますが、これはメトロとは呼びません。
メトロの各駅はスタシオンLa stationと呼ばれ、国鉄線の駅ガールLa gareとは呼び方が違います。地下区間のRERは…微妙らしいです笑。スタシオンと呼ぶ人もいるそうです。

・乗車方法
まず地下駅の場合はMETROと赤地に白抜き文字で書かれた看板か黄色のMの看板があるところを見つけて階段を下ります。地上駅の場合はそのまま構内へと入ります。
改札周辺には券売機があります(おそらく)。券種については割愛しますが、ナヴィゴでないならticket+のカルネが便利ではないでしょうか。券売機の画面は英語やイタリア語なども選択可能です。近頃はローラーがついた旧式の券売機は少なくなってきました。
ちなみに切符のticket+はメトロ線内であればzone2や3の駅でも使用できます。
改札は動物園の前にあるような回転式の装置で、切符を通すかナヴィゴをタッチすると進むことができます。
これから乗車する路線の番号と方面をよく確認して乗車しましょう。通路の分岐には路線図が書いてありますので確認することができますが、迷っているとその分トラブルに会う確率が高くなりますのである程度事前に頭に入れておきましょう。
パリ交通公団RATPの公式アプリ、フランス国鉄SNCFの公式アプリを使うと簡単に乗換検索ができます(RATPのアプリは運休している列車まで表示してしまうので私はSNCFのアプリをお勧めします)。
列車はおおよそ3~5分間隔で運転していますので、ホームに発車間際の列車を見つけても絶対に駆け込み乗車はせず次の列車を待ちましょう。ワンマン運転でドアの閉まり具合などあまり詳細には確認していないと思われるので、荷物や衣服が挟まってもセンサーが感知しなければおそらく発車してしまいます。
国鉄線もそうなのですが、残念ながらほとんどの路線にはドア位置を示すマークがありませんので、列車を待つ際は各自思い思いの場所で待ち、運よくドア前に立っていた人から順次乗り込みます。いつも思うのですけど乗車位置くらい簡単に付けられますよね…。ちなみにドアはレバーかボタンを操作する手動が未だ主流です。
新型車両の投入で次第に減ってきてはいますが、以前多くの路線では車内電光掲示板や車内放送がありませんので、途中の駅を確認しながら下車駅を目指しましょう。
下車駅に着いたらドア前にいる人々に声をかけて通してもらい下車します。停車時間はとても短いので、降りる準備は必ずしておきましょう。
出口La sortieは青地に白抜きの文字で書かれた看板に従って探すことができます。有名な観光名所には黄地に白抜き文字でその旨の記述もあります。大抵はホームに駅周辺の地図がありますので、出口が分からなくても一番近い出口を選んで出ることができます。出る時はドアが自動で開くゲートを抜け、切符やナヴィゴは必要ありません。

・乗車時の注意
メトロは日の光が当たらないからか、治安が地上以上に悪いです。私は幸いまだ被害にあっていませんが、スリ集団が多く徘徊しているようです。フランス語が分かればまだ良いですが、基本的に何か話しかけられても無視して立ち去るのが最も安全です。
廊下には寝ている人、奇声を発する人、物乞い、無許可であろうミュージシャンや物売りが多くいます。車内にも時々物乞いが来ますが、関わらないようにしましょう。時たま小銭をあげている人を見かけますが、それをやっていると彼らはいつまでもいなくならないでしょう。
また構内は地上同様不潔です。時折汚物があったりしますので腰掛ける時などは注意してください。
昨年11月から毎週土曜日は「黄色いベスト運動」デモのため一部の駅が閉鎖・通過扱いになっています。土曜日利用する場合は運行状況をよく確認してから乗車しましょう。
車内は狭いため検札はありませんが、駅の出口付近で時々実施されていますので、要求されたらナヴィゴや切符を提示しましょう。

今回は少し長くなったので、次回後編を書きたいと思います。お楽しみに。

王室礼拝堂での協奏曲演奏

13 2月 2019
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研究センター発行のプログラム。ソリストとしてしっかり名前が載りました

先週の私の演奏の一部をTwitterにアップしたところ、思いがけず多くの方から反響をいただきました。こうしてすぐに日本の皆さまに様子を伝えられ、また反響をいただくことができるのは現代のネットワーク社会の良いところですね。
年明けから本格的に練習を重ね、先週月曜日からのリハーサルに臨みました。編成は各2人ずつで機動性は良いのですが、何分学生なのでうまくいかないところもあるにはありました。でもコンサートマスターには師匠パトリックがついていてくれ、リハーサルも彼と共に進められたので心強かったです。フランス語を始めて久しいとはいえまだ居住し始めて半年、音楽の専門用語のボキャブラリーも思うように増えず、1人でリハーサルを進めるのは非常に困難なところがありますので…。
リハーサルは月曜日と火曜日だけでした。もう1つのプログラムであるヴィヴァルディの「ほめ讃えよ、主の子らよLaudate pueri Dominum」と並行しながらであったので、私のルクレールに割く時間は2時間ずつしかありませんでした。ルクレールの協奏曲は複雑な構造をしていてなかなか一筋縄ではいかないので、もう1日あったらいろいろなところが詰められたかなと思います。
さて、そうして当日。ヴェルサイユバロック音楽研究センターで1時間半軽くリハーサルをしてから、王室礼拝堂へ移動。前回「優雅なインド」の公演で1度木曜演奏会を経験したので、勝手が分かっていたのは良かったです。
リハーサルでは、前回のように会場の雰囲気に負けるのではないかと心配しながらソロを弾き始めたのですが、今回は全くそんなことはなくむしろ会場に助けられているようでした。この空間に対する変な身構えを払拭できたからでしょうか。純粋に楽器と会場と一体になって音楽をすることの楽しみを感じることができる、そんな空間でした。楽器配置等の微調整もわずかで事足りました。
それでも内心は気負っていたのか、厄介なことに手汗が止まらずガット弦にはあまり良くない状況に陥っていました。研究センターでのリハーサル時に察知していたので一度帰宅して制汗剤を塗りましたが、あまり効果は出ず。特に暑かったり湿度が高かったりということではなかったので、精神的な問題ですね。元々本番になると汗をかきやすいので、今後対策を考えてみたいと思います。
本番はオルガンの前奏に始まり、祭壇への入場はせっかくなのでソリストらしくオケの調弦の後に入る手法を取らせていただきました笑。この日も後方の席まで埋まる盛況ぶりで緊張をするかと思いましたが、本番もやはり会場に助けられている感じでリラックスして弾くことができました。こんな精神状態で弾けるのは中学生以来、いや小学生以来かもしれません。ルイ14世最晩年の1710年に竣工してから現在まで、ルクレールはもちろんのこと様々な音楽家が活躍してきたこの空間で自分は小さな存在であることを否応なく肯定し、それでもその全てを尽くして音楽をこの空間と古の人々に捧げること。こうした謙虚な気持ちが変な緊張を解きほぐし、古の音楽家の魂で全身が満たされていくように感じました。
こうして精神状態は抜群に良好なまま最後まで弾き終えることができましたが、残念ながら時折難しいパッセージを弾くにあたっては技術的な問題から思考の多くを左手に傾けざるを得ず、結果的に守りに入ってしまったり、失敗してしまう部分が残りました。今回は準備期間が十分にあり練習時間も今までにないほど多く取ったので、これは今の自分の限界だなと素直に思いました。パトリック曰く「左手の問題は練習で全て解決し、本番の時は右手のことのみを考えて左手は自動で動かなくてはいけない」とのこと。ただ難しいパッセージの練習を怠っていたわけではないので、問題はもっと根本的な基本技術にあります。昨年にこの曲を弾いた藝大の修了演奏会でも基本技術の限界を感じたのでその後試行錯誤を繰り返していますが、まだまだ完全ではないということですね。
終演後はご来場下さった多くの知人だけでなく、初対面のマダムやムッシュにも温かい声をかけていただきました。そうこうしているうちにiphoneの録画を仕掛けていた2階が施錠されてしまい、危うく回収不能に陥りそうになってしまったのがこの演奏会のオチです笑。
こうして王室礼拝堂で弾くという貴重な機会は多くの収穫をもって終わりました。今後も精進していきたいと思います。

次回はパリのメトロについて書いてみたいと思います。少し毎週のネタが尽きそうなので、何かリクエストがありましたらお寄せください。

パリ版パスモ、ナヴィゴ

6 2月 2019
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今や日本と同じく、パリにもナヴィゴ専用改札が増えています

先週降った雪も、その後の大雨ですっかり溶けてしまいました。
先週末は昨年末に演奏した古楽器のための現代作品がブローニュの地方音楽院で再演されました。初回よりも良かったのですが、順番が最後でとにかく待ち時間が長かった…。古楽器による現代音楽ばかりを集めた演奏会で、リコーダー合奏、リュート合奏などもありました。その中でひときわ目立っていたのはセルパン奏者のPatrick Wibart氏の演奏!セルパンによる現代曲も演奏していましたが、そのあとにオルティスのスパーニャの変奏を華麗に披露していました。いや素晴らしかった!セルパンって極めるとここまで来るのかと思いましたね。
今週からは明日の王室礼拝堂の木曜演奏会に向けたリハーサルが始まりました。メンバーは学生と一部卒業生、コンサートマスターは師匠パトリックです。協奏曲では彼がいるのはとても心強いですが、2日間2時間ずつのリハーサルでどれだけ仕上げられたことやら…。今日もやるのかと思っていたらお休みです。むむ、少し不安が残る。

さて、今回はパリ周辺地域の交通機関で使用できるIC乗車券ナヴィゴNavigoについて書いてみたいと思います。
日本にもパスモ、スイカなどといったIC乗車券が存在しますが、日本の場合は目的地で下車した際にそれに応じた運賃が引かれるか、予め購入した定期券の範囲内であれば自由に乗り降りできますよね。パリのナヴィゴは定期券に相当し、パリの中心部から順に価格の違うゾーン1-5の購入した範囲内の駅や停留所ならばどこでも乗り降りが自由にできるというものです。
なおナヴィゴについては詳細な説明をしたホームページがインターネットで検索するとたくさん出てきますので、詳細な説明はこちらでは省略します。年々詳細は変わっていくので、なるべく最近の情報を入手するのがおすすめです。
ちなみに今年度から学生定期イマジン・エールの申し込みは書類ではなくインターネット申し込みになって便利かつ迅速になりました。書類を窓口でもらってきて書いて送るというのはもう過去の情報なのでご注意を。
旅行者の場合は窓口で簡単に購入できるナヴィゴ・デクーヴェルトNavigo Découverteと呼ばれる物がありますので手軽に購入できます。25mm×30mmの顔写真1枚が必要になりますので用意しておくととてもスムーズです。貼り付けはカードの方に糊がついているので糊を持参する必要はありません。
なおこれを機会に規定を読んで確認してみましたが、ナヴィゴ・デクーヴェルトの場合はどのような理由があっても返金や再発行はしてもらえませんので、納得のいくプランを選択して盗難や紛失には十分気を付けましょう。居住者用のナヴィゴは途中のプラン変更や再発行ができるようなので、長い期間使用する場合は可能であれば居住者用ナヴィゴを購入するのが良いと思います。
続いて料金比較の話をしたいと思います。やはり旅行する以上は精一杯滞在を満喫しながらもできるだけ安く済ませたいものですよね。
まずどの交通手段でパリに到着するかという問題がありますが、シャルル・ド・ゴール空港に到着する場合はゾーン5になりますので、基本的にはナヴィゴを買った方が得だと思います。なお日程を調整できる場合は週をまたがないようにすると、1週間のナヴィゴを最大限に活用できます。
ほかの都市から列車でパリ中心部に到着し、郊外に行かないのであれば、Ticket t+のカルネと呼ばれる10枚つづりのものが有利なこともあるかもしれません。日本でもよくある回数券で、1.9€の切符が10枚で14,90€です。少し郊外に行く場合も路線バスならTicket t+が使えます(例えばヴェルサイユに行くには171番のバスがあります)。
その他にも1日有効のナヴィゴ・ジュールやモビリスなどもありますが、1日単位で考えるとこれらは少し割高に思います。美術館や有名な建築物などじっくりと観光すれば1日でそう何箇所も回れるわけではないので、1日や2日の中心部だけの滞在ならおそらくTicket t+のカルネの方が有利です。それに、実際パリ市内は歩こうと思えば歩けてしまいますし、歩くのもまた楽しいものです。
こういった料金比較をしながら計画をするのもまた旅行の醍醐味といえるでしょう。ちなみに使用しなかったTicket t+など有効期限の書かれていない切符はとっておけば次の機会で使えますし、ナヴィゴは最後に使用してから10年間有効ですので(面白いことに日本のパスモと同じ)、一度買ってしまえば次からはチャージするだけです。
続いてヴァリデの話。
ナヴィゴを紫色の円が特徴のカードリーダー?にタッチする行為を「ヴァリデ」と言いまして、バスやトラム、自動改札機のない駅を利用する場合はこれを自主的に行わねばなりません。規定通り購入していてヴァリデを忘れた場合は罰則がどうなるのか調べたことがありませんが、必ずヴァリデしておきましょう。(仮に自動改札機のない駅でヴァリデをせずに乗車してしまっても、自動改札機のある駅で下車することは一応できます)
ちなみにヴァリデは一度行うと同じ駅では2度ヴァリデができず、「既にヴァリデされているDéja validé」と表示され改札機は開きません。自動改札機が出口にもある国鉄やRERでは出場すればもう一度ヴァリデできますが、メトロには出口に改札機がないので入場した後に「いかん、用事を忘れてた!」などと思い出して出てしまうとそのままでは再入場できないのです。これは改札にいる係員に事情を説明すればいいことですが、いつも係員がいるとは限らないので…笑。
本当に困るのが、運悪く調子の悪い改札機に出くわしてしまったとき。ヴァリデしても扉が開かないことがあり、私も2度ほど経験しました。1度目は電動の扉でない駅で、後ろに来ていた人が親切でヴァリデしてくれて開いたので、一緒に通ることができました。2度目は電動の扉の駅で、さすがに他の人を巻き添えにするわけにはいかないのでどうしようかと思っていたら、国鉄の検札係が通りかかったので助けてもらいました。
あなたもこのような機会に遭遇してしまったら必ず助けを呼んで、改札機を乗り越えるなどはしないようにしましょう。無賃乗車だと思われたらなかなか弁解できないものです。
少しトラブルはあるかもしれませんが、それでも切符よりは少ないと思います。切符だと券詰まりしてしまったり、正しい乗車区間のはずなのになぜか改札が開かなかったりするトラブルを多く聞きます。

今回はナヴィゴについてでした。あなたもパリに来たら是非楽しいナヴィゴライフを体験してみてくださいね。
来週は明日の木曜演奏会について書きたいと思います。