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パリのメトロ 後編

27 2月 2019

1番線と14番線では自動運転が行われ、4番線もホームドアの設置が進んでいます

もはやコートが要らないほどに暖かくなりました。このまま春に突入してしまうのでしょうか。
こうして半年ほど生活してみると、厳しい夏も冬も案外短く、あとは過ごしやすい気候だなと思います。夏は乾燥していて、冬は湿っているのも大きいでしょう。
先週末はバーゼルから友人が訪れたので、パリやヴェルサイユの観光名所に案内しました。エッフェル塔やシャンゼリゼ周辺などは一人ではあまり行きたいと思わないので、こういった機会に訪れたいのです。
毎週土曜日はパリで「黄色いベスト運動」のデモが継続して行われています。デモが始まってから土曜日はヴェルサイユにいて支障はありませんが、フランス人たちも半数はもうやめて欲しいと思っているという世論調査がニュースになっていました。

さて、今週は「パリのメトロ」後編です。前回は基本的な情報でしたので、今回はもう少し踏み込んだ内容について書きたいと思います。

・各線の特徴
現在メトロは1から14番線と支線2本の計16路線あり、日本の地下鉄のように路線ごとに固有の色を持っています。開業は14番線を除きいずれも20世紀初頭で、様々な変革を経て今日に至っています。

①ラ・デファンス~シャトー・ド・ヴァンセンヌ
日本の銀座線に匹敵する、パリの重要な地区を通る路線。高層ビルが立ち並ぶ北西の新市街ラ・デファンス、エトワール凱旋門、コンコルド広場、ルーブル、シャトレ、バスティーユ、リヨン駅を経てヴァンセンヌ城と森までを結びます。ホームドアが全駅に整備され、自動運転が行われています。

②ポルト・ダフネ~ナシオン
エトワール凱旋門、モンマルトルのサクレ・クールにほど近いアンヴェールなどを通ります。モンマルトルに行かれる方は利用されるかと思います。

③ポン・ド・ルヴァロワ・ベコン~ガリエニ
サン=ラザール、オペラ、レピュブリックを通りガリエニまでを結びます。ガリエニにはバスターミナルがあり、長距離バスを利用される方は縁があるかもしれません。

③支線 ガンベッタ~ポルト・デ・リリア
わずか4駅だけの路線です。名所は特にありません。

④メリー・ド・モントルージュ~ポルト・ド・クリニャンクール
モンパルナス、シテ島、シャトレ、北駅などを通ります。現在ホームドアの設置が進んでおり、まだ設置されていない駅も乗車位置が全路線で唯一示されています。

⑤プラス・ディタリー~ボビニー・パブロ・ピカソ
オステルリッツ駅、バスティーユ、レピュブリック、東駅、パリ国立高等音楽院最寄り駅のポルト・ド・パンタン駅などを通ります。

⑥シャルル・ド・ゴール・エトワール~ナシオン
エトワール凱旋門、エッフェル塔、モンパルナスなどを通ります。地上区間が多く、その中でもパッシー~ビル=アケム間はセーヌ川とエッフェル塔を車窓から見ることができる有名な区間です。

⑦ヴィルジュイフ=ルイ・アラゴン~ラ・クルヌーヴ1945年5月8日
メリー・ディヴリー~マレ地区、シャトレ、ルーヴル、オペラ、東駅などを通ります。南部はメゾン・ブランシュ駅を基点に路線が分岐しており、車内外に点灯式の行き先表示があります。

⑦支線 ルイ・ブラン~プラス・デ・フェット方面
8駅からなる支線で、東側はループになっています。名所は特にありません。

⑧バラール~クレトゥイユ・ポワント・デュ・ラック
アンヴァリード、コンコルド、マドレーヌ、レピュブリック、バスティーユを通る比較的長い路線です。

⑨ポン・ド・セーヴル~メリー・ド・モントルイユ
サン=ラザール駅に近いサン=オーギュスタン、レピュブリックなどを通ります。西の終点ポン・ド・セーヴルからはヴェルサイユ宮殿行きの171番バスが出ていて、RERが止まったり終電を逃したりしたときは私はお世話になります。

⑩ブローニュ・ポン・ド・サン=クロード~オステルリッツ駅
ブローニュの森の近くから、RERC線に乗り換えができるジャベル・アンドレ・シトロエン駅、カルティエ・ラタンを経てオステルリッツ駅までを結びます。RERC線の工事期間中は代替路線として活躍します。西側のそれぞれの駅では1方向しか乗車できない区間があり、もともとループ線であったものを後になってさらに延伸したため、このような運行形態になっています。

⑪シャトレ~メリー・デ・リリア
シャトレやレピュブリックなどを通りますが観光にはあまり使わない路線ではないでしょうか。

⑫メリー・ディッシー~オーベルヴィリエ・フロント・ポピュレール
モンパルナス、コンコルド、マドレーヌ、サン=ラザールなどを通ります。

⑬シャティヨン・モントルージュ~アスニエール・ジャンヌヴィリエ・レ・クルティーユ~サン=ドニ・ユニベルシテ
モンパルナス、アンヴァリード、シャンゼリゼ、サン=ラザール、サン=ドニを通ります。ラ・フルシュ駅で分岐しますが車内にドア上案内表示があるため点灯式の行き先表示器は現在では撤去されているようです。

⑭オリンピアード~サン=ラザール
オステルリッツ駅、シャトレ、マドレーヌを通りサン=ラザールまでを結びます。一際深い地下を走る路線で、乗車するには数回エスカレーターに乗らなければホームにたどり着けません。

・使用車両
集電方式は全線とも銀座線や丸ノ内線のような、レールの横に集電用のレールを設けた第三軌条方式です。高圧の電流が流れていますので何か物を落としても絶対に線路へは下りないでください。
運転方式の違いとして、加減速性能を高めるためタイヤを併設した路線とレールだけの路線があります。タイヤを併設した車両の加減速は凄まじく、立っているとよろめいてしまうほど。これらの路線に乗車する際は座ることをお勧めします。
2019年現在活躍している車両は以下の通りです。タイヤのある車両はMP形(Métro Pneuの略)、鉄輪のみの車両はMF形(Métro Fer)、数字は命名された年号の下2桁です。
【MP形】
MP59形…使用路線⑪
現在メトロで活躍する最古参車両。今回の調査で初めて乗車しました。昔ながらの「パリのメトロ」を味わえる車両です。ドア開閉はレバー式、クロスシート、ドア上の案内表示や自動放送は一切ありません。固定されている座席は少し弾力がありました。

MP73形…使用路線⑥、⑪
「パリのメトロ」を味わえる車両として個人的には好きな車両です。ドア開閉はレバー式、クロスシート、ドア上の案内表示や自動放送は一切ありません。

MP89形…使用路線④、⑭(自動運転形)
前面がくの字形になっている車両で、自動ドア、車端部がロングシートのセミクロスシート、自動放送があり、車両間の行き来が可能です。14番線は自動運転が行われているため運転台がなく、MP05形との違いはよく見ないと分かりません。

MP05形…使用路線①、⑭
自動運転路線のための車両です。見かけや仕様はMP89形とほぼ同一で、見分け方は私もまだ良く分かっていません…笑。編成両端部は運転台がないため座席に座ることができ、運転台のようなシールが貼ってあって電車好きな子供にはたまらない空間になっています。

【MF形】
MF67形…使用路線③、③支線、⑩、⑫
鉄輪式では最古参車両。仕様はMP73形とほぼ同一でやはり個人的には好きな車両です。3番線の車両は改造が施されており、片側が交互にロングシートになったセミクロスシート、ドア上案内表示と自動放送があります。

MF77形…使用路線⑦、⑧、⑬
側面が折れ曲がった特徴的なスタイルで、行き先が複数ある路線に投入されました。押しボタン式ドア、車端部がロングシートのセミクロスシートで、車内外に点灯式の行先表示器を装備しています(前述のように13番線の車両はドア上案内表示が設置されたためこれらは撤去されたようです。)

MF88形…使用路線⑦支線
⑦支線だけに使用されている車両。台車に先進技術を用いながら、それに問題があって投入がこれだけになったいわゆる「迷車」です。押しボタン式ドア、クロスシート、車両間の行き来が可能で、固定座席は少し弾力がありました。

MF01形…使用路線②、⑤、⑨
比較的新しい車両で、旅行者には好印象ではないでしょうか。自動ドア、ボックスシートは交互に2+1となったセミクロスシート、ドア上案内表示、自動放送があり、車両間の行き来が可能です。

以上が現在使用されている車両ですが、さらに現在MF19形という車両が計画されているようです。古参の鉄輪式車両は数年後に順次置き換えられるようなので、古い車両が好きな方は是非今のうちに乗りに来てくださいね。

・その他よもやま話
面白い駅名…メトロもただ移動するだけではつまらないですが、時々面白い駅名を見かけることも。例えば6番線のケ・ド・ラ・ガールQuai de la Gare(直訳すると駅のホーム駅)、8番線と9番線のボンヌ・ヌヴェルBonne Nouvelle(直訳すると良いニュース駅)や日付がついた駅名など。あなたもお気に入りの駅を探してみてはいかがでしょうか。

かぶりつき…運転台と客室を隔てる窓は遮光加工が施されていますが、よく見ると前面展望が見えます。パリのメトロは東京以上に使用されなくなった路線や駅など興味深い空間が多いです。ただやりすぎると何かあるのかと運転士の気に障るかもしれないので、ほどほどにしましょう。1番線や14番線は自動運転で運転士がいないので遠慮なく見ることができます。

運転士…運転士は女性の方が多い印象で、制服は来ておらず見た目は乗客と同じです。コーヒーを飲みながら運転していたりなどすることもありますが、割と普通のことなので大目に見てあげましょう笑。

新塗装…現在すべての車両がパリ交通公団の色である白と緑色に塗られていますが、今後の新型車両投入にあわせてイル=ド=フランス・モビリテの色である白と水色になっていくようです。RERの車両では一部の編成が既にこの新塗装になっていますが、今後メトロの車両の動向も目が離せません。

パリのメトロについては大体この辺りでしょうか。今回は何だか非常に鉄分の濃い回でしたね。
次回からはヴェルサイユ宮殿の各施設についてのシリーズをゆっくり進めていくこととします。

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