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フランス東部、三国国境の町バーゼル

27 12月 2018
フランス東部、三国国境の町バーゼル はコメントを受け付けていません

ミュンスター大聖堂の塔から見たバーゼルの街並み

日本の皆様、良いクリスマスと年末をお過ごしでしょうか?こちらではいろいろな街のいたる所でクリスマスマーケットが開かれ活気に溢れていますが、24日は早く閉店して25日はどの店も休むところが多いなど、やはり日本とは違い静かで穏やかなクリスマスです。また日本では24日の夜が過ぎ去れば、クリスマスツリーはさっさと片づけてあっという間にお正月モードになりますが、こちらは本来あるべき姿というか、年末までクリスマスマーケットが開かれています。

さて先週末はフランス東部と三国国境の街バーゼルに行ってきました。
22日早朝から行動開始。まずはパリのリヨン駅に近いベルシー駅(西武新宿駅のような別駅です)に着きましたが、メトロのホームにはスーツケースを持った人々でいっぱい。皆さん一斉にバカンスへ赴くのですね。私もその一人です。
バーゼルへはパリから直行で行くTGVもあるのですが、道中もゆったりしていきたいのと、何分繁忙期で運賃が高いので今回は最後のストラスブールーパリ間を除いて全て近距離普通列車TERに乗車しました。それでもパリからディジョンまでは停車駅が少なく、かなり高速で運行します。一本前のTERの切符は売り切れていたので(普通列車の切符が売り切れるなんてあり得るのかと思いました)、乗車する列車も早く行かないと着席できないかなと思いきや、ふたを開けてみると殆ど乗客はいませんでした。編成途中にかつて一等車だった座席がそのまま2等車に格下げされている有難い車両があったので、ディジョンまでの約2時間半を広い座席でゆったり乗車できました。
ディジョンはかつてのブルゴーニュ公国の首都、そして我らが巨匠ジャン=フィリップ・ラモーの故郷です。しかし乗り継ぎの1時間しか滞在時間がなく、観光に行っても行くだけで終わってしまうかなと思ったので今回は街の雰囲気を味わうだけ。観光はまたのお預けです。
ディジョンから今度は指揮者コンクールで有名な街ブザンソンへ。ここにはルイ14世の天才軍師ヴォーバンの築いた要塞があることで有名なので、この地を目指すべく2時間の乗り継ぎ時間を確保しました。早速駅を出て要塞を目指しますが、駅からは距離があるだけでなく要塞は丘の上にあるので、登るまで結構時間がかかってしまいました。30分程度なら中に入る時間はありましたが何分有料ですし、急いで見たくはないなと思いここも断念。冬でなければ丘の上までバスが運行しているようなので、またの機会に致しましょう。
麓の門と言い、丘の上の砦と言い、さすが軍事建築は潔いほど装飾がなく簡素だなと思いました。まあ破壊される前提で作っているということでしょうね。パリやヴェルサイユでは見ない建築です。
さてブザンソンを出て、ベルフォールとミュールーズでそれぞれ列車を乗り継ぎいよいよバーゼルへ向け国際列車のTERに乗ります。サン=ルイ駅を過ぎたところで、突如携帯の電波が圏外になってしまいました。あれれ、Freeはスイスでは使えないのかー!そういえば確認していませんでした。バーゼルでは当アンサンブルでおなじみの菅沼起一さんと待ち合わせをしていたので少し焦りましたが、まあ駅にはフリーWifiがあるだろうと思いました。ところがいざ着いてみると全然Wifiが捕まえられない。人と待ち合わせをしている中でのこの状況はかなり焦ります。
ちなみにフランス側からTERに乗車するとBahnhof Basel SBBという中心地に近い駅に着くのですが、他のスイス国鉄のホームと異なる30番台のホームに着きます。入国審査は…ありませんでした。ある時もあるようです。
菅沼さんとは奇跡的に駅舎の一角で合流でき、そのまま近くのフードコートで吉崎恭佳さん、吉田奏子さんなどバーゼルに留学中の日本人たちと夕食を共にしました。半年くらい会ってないだけなのに皆さんとても懐かしかった!

さて2日目は市内観光です。市立美術館で中世から印象派までを中心に様々な絵を見た後、ミュンスター大聖堂へ。ゴシック建築ですがこの地方特有の赤砂岩を使用した建築の一つです。塔の一番上まで登ってみたら流石に恐怖を覚えるほどの高さでした…。いや、自分が落ちるというよりも手荷物を落としてしまいそうで。塔から見た景色が上の写真なのですが、眼下の建物はフランスとは違う、でもドイツとも違う、国際色豊かというかある種中庸というか、そういった建築です。全体的にどの建物も手入れが行き届いていて綺麗な印象がありました。
次は鮮やかな赤色が際立つ市庁舎へ。何年かに一度壁面を塗り直しているだけに本当に「赤い」です。ちなみに細かな絵も描かれているのですが、塗りなおすときはこの絵も書き直す…のでしょうか?手間がかかりますね。日曜日なので中には入れませんでしたが、十分堪能できました。
最後にシュパーレントアーという中世の門を見た後、スコラカントルムの中を拝見すべく菅沼さんと阪永珠水さんと合流。ライン川近くでフランスの電波をキャッチできた以外は完全に電波難民でしたが、なんとかお二人と会えました。スコラカントルムの中は入口に掲示板があったり、教室には黒板があったりと音楽院らしいところだなと思いました。
そのままお二人と近くのクリスマスマーケットでグリューワインを頂きました。温かいワインにフルーツのリキッドやスパイスが入っているもので、甘口の味は私にとっては好みでした。
ちなみに列車で入ってきてパスポートも見せるわけでもなく、着いたときは何だか国境を越えた気がしなかったのですが、街のいろいろな表記は全てドイツ語ですし、貨幣はスイスフランです。でもフランに関してはユーロを1:1のレートで受け付けてくれる店も多いですし、大抵の人は英語、フランス語を話すことができます。国境の街で人通りが多く、そうでもしないと立ち行かないのでしょう。私はいつもと変わらずフランス語で通してしまいました。

3日目は朝バーゼルを出て、まず国境にほど近い街ミュールーズに立ち寄りました。目的は…ずばりシテ・デュ・トラン。フランス国鉄の国内唯一の鉄道博物館です。
駅からトラムに乗ること15分ほど、人気のないミュゼ駅で下車。シテ・デュ・トランは基本的には年中無休で、12月25日は休館だと事前に分かっていたのですが、これはもしかしてやっていなのか?と思いながら進むことしばし、手前の広場に蒸気機関車が置かれたカラフルな建物にたどり着きました。入り口付近には子供連れのマダムが。よかった、やっているようだ。
今回も若干軽いとはいえバックパックは背中の負担になるので荷物を預けようと思ったら、入り口右手にあるロッカーは鍵が一本もない。受付の人に預けたいんだけどとお願いしたら、ごめん鍵が終わっちゃったんだよとのこと。まだ開館10分も経ってないのにそんなに盛況なのか!いやいやお見逸れいたしました…と思ったら最後に退館する時も鍵はなかったので、要するにやる気がないだけです笑。
この博物館は2棟の屋内展示と屋外展示からなっていて、鉄道黎明期の蒸気機関車から初期のTGVまでさまざまな車両を見ることができます。最初の棟は暖房が効いていて快適に見学できました。第二帝政時代の皇帝用車両やオリエント・エクスプレスで有名なワゴン・リの車両といった輝かしいものもありましたが、大戦中に収容所までユダヤ人を運んだ貨車や、実物は初めて見る列車砲、鉄道員レジスタンスにより爆破された軍用列車を模して転覆させた蒸気機関車もありました。日本でも「鉄道は兵器だ」と言われていましたがヨーロッパでは文字通りそうだったのですね。
2棟目は暖房がなく、屋根はありますが外気がどこからか入ってきて寒かったです。大小のさまざまな蒸気、ディーゼル、電気機関車、客車や貨車などがありましたが中に入れる車両はごく一部に限られていました。さらに日本のように何かの装置を動かしてみたり、シュミレーターで遊ぶといった体験施設はありませんでした。鉄道ファンとしてはこれは残念。屋外展示も数両あるだけで、意外とあっさり見終わってしまいました。
予定より1時間早いTERに乗って最終目的地ストラスブールへ。値段は変わりませんが一応列車の指定があるので、検札が来たら事情を説明しようと思いましたが結局来ませんでした。
ストラスブールはクリスマスマーケット発祥の街と言われ、現在でも「ノエルの首都」と呼ばれ世界中から観光客が集まります。ただ2週間前に銃撃事件があったので、少しは人出が少なかったかもしれません。広場には犠牲者へ花が捧げられていました。
クリスマスマーケットはイル川の中州でいくつかの区画に分けて開催されていて、橋の上には警察が待機していましたがリヨンの「光の祭典」のように手荷物検査はありませんでした。「サパン・ド・ノエル」と呼ばれるいくつかのツリーがあり、私は「密かなノエル」と題された区画の比較的小規模なツリーが好みでした。クリスマスマーケットの店は他の街とそう変わらないように思いましたが、興味のある方は是非一度行ってみてください。
大聖堂に入るには手荷物検査が行われており、長蛇の列ができていました。壮麗なゴシック建築だけにせっかくなので中も見てみたかったのですが、2時間弱しかないため他を回ることに。今回は断念が多いです。
最後に「プティト・フランス」と呼ばれる木組みの可愛らしい家が立ち並ぶ地区を見て、ウィゴに乗るために駅に戻りました。ただ30分前になってもなかなか検札が始まりません。どうやら放置された手荷物があったらしく、警察が来たりして結局40分遅れになりました。お腹がすいたので駅前のケバブを買って食べることに。
こうして聖夜はパリ東駅行きのウィゴの中で更けていきました。

今回はフランス東部とバーゼルのレポートでした。
来週は都合によりお休みさせていただきます。次回はヴェルサイユとパリの年末年始について書いてみたいと思います。

RERって何?

20 12月 2018
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シャルル・ド・ゴール空港に着いてまず乗車するB線

ここ一週間は少し晴れ間が多くなったヴェルサイユです。
先週末は王室歌劇場で「バロックカーニヴァル」と題された演目を見てきました。演奏はリュリの歴史的舞台上演でおなじみのポエム・アルモニークでしたが、この日は小編成のバンドが舞台に乗る形式で、その横で様々な歌やサーカスを楽しめる構成でした。大道芸もすごかったけれど、やはり演奏が一級品。チャッコーナやパッサカーユなどの変奏曲を延々と続けながら様々な変奏がなされていく、インプロヴィゼーションの宝庫でした。帰ってからもしばらくチャッコーナのバスラインが頭から離れませんでした笑。
今週は今日行われる現代音楽の演奏会のため、ヴェルサイユ市庁舎でリハーサルが行われました。使用した部屋は一番大きなところで、まるで18世紀にタイムスリップしたかのような豪華な部屋。始まる前に少し時間があったので持ち曲を練習してみましたが、とてもよく響きました。

さて、今回はパリの鉄道路線RERについてです。
「RERとは何か」を一言で表すのは難しいです。直訳すると「イル・ド・フランス地域圏急行鉄道網」で、日本で例えて言うならば私鉄・JR線と東京メトロ線が直通運転されている路線を総称しているようなものです(ただしRERはパリのいわゆるメトロとは直通していません)。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東武スカイツリーラインや、小田急線・東京メトロ千代田線・JR常磐線などのようなイメージです。でもパリの鉄道運営会社は日本と違いフランス国鉄SNCFとパリ交通公団RATPのみで、両社が別々の料金体系を持っているわけではないので会社の違いは特に気にする必要はありません。
かつてパリの鉄道は周縁部のターミナル駅からそれぞれ郊外路線が発達したので、パリの中心部に行くにはそれぞれのターミナル駅でメトロやバスに乗り換えるしかありませんでした。それらの路線の一部をパリ市内に新たに作った地下線で直通させたのがRERなのです。
現在、パリのRERはAからEまで5路線あります。主な観光地なども併記しておきます。

・A線(赤) ヴァンセンヌの森と城、パリ・ディズニーランド、サン=ジェルマン・アン・レー城
私はあまり乗ることはないのですが、先日ウィゴがパリ・ディズニーランド駅着だったので乗車しました。
・B線(青) シャルル・ド・ゴール空港、オルリー空港(アントニーから専用メトロに乗り換え)、ラ・マドレーヌ城、ブルテゥイユ城
パリに飛行機で到着するとまず利用する路線です。空港アクセス線としての性格が強く、パリ北駅からシャルル・ド・ゴール空港まで無停車の快速列車も設定されています。
・C線(黄色) ヴェルサイユ
ヴェルサイユ宮殿観光に欠かせない路線です。路線はヴェルサイユを起点にパリ南部を一周する形になっており、ヴェルサイユ発ヴェルサイユ行きのロングラン列車もあります。また支線も多く5つのRERの中で最も運行形態が複雑なので、利用する際は必ず行き先と方面を確認しましょう。ヴェルサイユ宮殿に行く場合は「宮殿Château」の案内が大きく書かれているので方面は分かりやすいと思います。
・D線(緑) フォンテーヌブロー宮殿方面(宮殿観光にはトランシリアンR線を利用)
パリ北部と南東部を結んでおり、南東部は支線が多く複雑です。観光地はこれといってないのであまり利用する機会はないと思います。
・E線 (紫) ヴォー=ル=ヴィコント城方面( 城観光にはトランシリアンP線を利用)
サン=ラザール駅から東部に向かって伸びており、東駅からは専らP線の各駅停車の役割を担っています。D線同様あまり利用する機会はないと思います。

以上がRERの5路線です。いずれパリ市内は停車駅が少なく、メトロよりも早く移動できるのが特徴です。こうしたメトロの補完、速達の要素を担うことから、パリ市内の路線はバカンス中の工事やデモなどの異常時に運休することがしばしばあるのが難点ではあります。
ちなみにパリには前述のP線やR線のように他にもアルファベットが使われている路線がありますが、それはフランス国鉄のパリ近郊旅客列車トランシリアンで、RERではありません。ただ利用する際には厳密に区別して認識する必要はないと思います。
さて、乗車する際の切符についてですが、パリとその近郊はゾーンと呼ばれる料金の区域設定があり、RER各線はほぼZONE1-5の中に収まっています。メトロやバスなどで使えるticket+はZONE1のRER各駅では使えますが、それより先は個別に区間を指定して切符を買うか、ZONEに合った切符ないしナヴィゴを使わなければいけません。メトロの場合はZONE1外の駅でも均一料金ですが、RERはそうではないので注意が必要です。
ちなみに日本のように乗り越し精算はできず、RERはメトロと違い下車する際も切符を改札機に通さなければいけないので、区間に合致する切符を持たず乗車してしまうと下車できずに困った挙句、無賃乗車の罰金を取られます。
こうした煩わしい事から解放されるには、やはりナヴィゴを買ってしまうのが良いと思います。シャルル・ド・ゴール空港駅は郊外に位置しているので個別に切符を買うと割高ですし、一旦ナヴィゴを購入できてしまえば後は気にすることなく乗り放題で観光できます。
私は去年初めて訪れた際は切符を買っていましたが、今ではもうナヴィゴに頼りきりなので、切符の買い方や料金体系は忘れつつあります…。

さて、今回はRERについてでした。書いていて思ったのですが、メトロやバス、切符やナヴィゴについても書かなければいけませんね。インターネットで検索すれば日本語で読めるホームページはたくさんありますが、こちらでも鉄道マニア独自の視点でいずれ書きたいと思います。
次回は今週末にフランス東部とバーゼルに行くのでそのレポートを書きたいと思います。お楽しみに。

リヨンの「光の祭典」

13 12月 2018
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少し前まで比較的暖かかったのですが、ここ数日でまた寒くなってきました。相変わらず曇りや雨ばかりの天気の中で、月曜日は青空が見えて何だか感動しました笑。
先週の金曜日は王室歌劇場でパーセルの《アーサー王》を観ました。演奏はエルヴェ・ニケ率いるコンセール・スピリチュエルで、とても引き締まった安定感のある演奏。特に凄かったのは、演出のため譜面灯も付かない完全な闇の中で一糸乱れず一曲弾ききったこと。リタルダンドから最後の音の入り、切りまで完璧でした。あんなアンサンブルを作ってみたいものです。
演出もとても興味深いものでした。冷蔵庫からペンギンと白クマが出てきたり、とにかくコミカルで突っ込みどころ満載でしたが、決して邪魔には感じません。幕間でニケが全く関係のないシャンソンをオーケストラ伴奏で歌い出したのには驚きましたが…。
月曜日には室内楽の授業の発表会がありました。これも無料で一般公開されていて、先日の独奏による演奏会よりも客入りが良かったです。私はコレッリのトリオ・ソナタとラモーのコンセールを担当しました。もっといろいろな表現をしたい、楽器の技術的なことから解放されて自由になりたいなどの課題が見えた本番でした。

サン=ジャン大聖堂

さて、今回は先週末に行ったリヨンの「光の祭典」のレポートを書きたいと思います。
「光の祭典」は14世紀にペストが大流行した際、人々がフルヴィエールの丘にあるノートルダム大聖堂のマリア像に祈りを捧げたところ流行が収まったので、聖母マリアの祝日である12月8日に灯をともすようになったことに由来するそうです。今日では世界中から観光客が集まる、リヨンの1年で最も盛り上がるお祭りとなっています。
何かと忙しかったので、行ったのは最終日の12月9日。シャルル・ド・ゴール空港駅から廉価版のTGVウィゴ(Ouigo)でリヨンへ行きました。
ここで、このウィゴについて少し紹介しておきましょう。フランスでは日本の新幹線にあたるTGVが運行していますが、ウィゴと呼ばれる安い料金設定の列車が存在します。例えばパリーリヨン間(日本で例えれば東京ー大阪間)の一般のTGVは90€くらいが相場で、日本ではのぞみ号で13000円ほどですからさほど変わりはありません。しかし今回利用したウィゴはなんと10€!1300円程度の廉価版のぞみ号(なんじゃそりゃ)で東京ー大阪を移動できるイメージです。高速バスよりも安いですね!
ただしウィゴには条件があって、本数が少ないこと、出発駅は中心部から少し遠い駅となっている場合があること、飲食物持ち込み禁止など手荷物に制限があること、発車の30分前にチェックインしなければならないことなどがあります。さらになぜか日本で発行されたクレジットカードでは購入できません。旅行者の方はフランス在住の友人に購入してもらいましょう。しかしこれらの条件以外は普通のTGVと変わりはありませんので、是非活用してください!
さて、今回のウィゴは08:06発なので、その30分前に余裕をもって着くには7時過ぎには着かねばなりません。ヴェルサイユからパリ北部の郊外にあるシャルル・ド・ゴールまでは1時間超かかりますので、朝4時半に起きて、05:46にヴェルサイユ・シャンティエから出発する…はずでした。しかし行ってみると電光掲示板に列車の表示がない。慌てて国鉄のアプリで検索すると、昨晩まであったはずの列車の選択肢が消えていて、リーヴ・ゴーシュ駅からC線に乗れとのこと。どうやら8日のデモでパリのさまざまな駅が閉鎖された影響がまだ残っていたらしいです。迂闊でした…。フランスで行動するときは出発前にもう一度国鉄のアプリで検索しましょう(パリ交通公団RATPのアプリは運休している列車まで表示されて混乱します。)

気を取り直してリーヴ・ゴーシュ駅まで戻り、運休区間の手前の駅からメトロに乗ります。空港に行くB線へ乗り換える際、快速列車にぎりぎり間に合わず悔しい思いをしました。ドキドキしながら後続の各駅停車に乗ると、何とか07:20頃に到着できました。チェックインを急げ!と思うと、受付に誰もいない。おかしいなと思っていると、電光掲示板に1時間遅れとの表示が。あああーーー!!!今までの苦労は何だったんだーーー!!!
仕方なく他の乗客や空港利用者と待合スペースで待つこと1時間半。電気系統の故障ということでしたが、ようやくチェックインが始まり乗車できました。安心してリヨンまでぐっすり寝ました笑。
着いたのはサンテグジュペリ空港駅。リヨンの中心部から列車で30分ほどのところに位置しています。しかしこの空港アクセスの列車がまた何とも曲者。ローヌ・エクスプレスという特別な路線で、国鉄線でもなければリヨンのトラムでもない。要するに金稼ぎの路線です笑。まあ空港アクセス線は大抵そんな感じですが、パリはナヴィゴで空港に行けますからなんだか損した気分になります。価格は片道13.4€。先ほどまで乗っていたウィゴより高いぞ…。まあそんなことを言っても他に選択肢はなさそうなのでこの列車に乗車。2両編成のトラムのような車両でした。途中の風景が何だか日本のようで懐かしくなりました。
中心部からやや離れたパルデュ駅に着き、昼食をとった後歩いて中心部まで向かいました。「光の祭典」は19時からなので、それまでは織物博物館と装飾博物館へ行くことにしました。織物博物館は壁面装飾用、衣装用など細かい装飾が施された布が展示されており、しっかり観ていくとわりとボリュームがあります。装飾博物館は18世紀の調度品などが貴族の邸宅の中に展示されており、さながらタイムスリップしたようでした。もっとも、階段や暖炉などはヴェルサイユの音楽院で見慣れているもので、調度品さえ揃えれば音楽院もこんな雰囲気になるのかなと思いました。ちなみに1716年製のチェンバロもありました!

市庁舎の中庭

17時頃に観終わり、まだ少し時間があったのでフルヴィエールの丘に徒歩で登ることにしました。さほどきつくなく、良い散歩になりました。ノートルダム大聖堂周辺はもう警察の警備が行われており、カバンを開けるように言われました。ヴェルサイユ宮殿でも同じことをやっていますけど、これで何が分かるのかなといつも疑問に思っています…。
大聖堂横の展望台で夜景を眺めているとちょうど19時になりました。特別すごいことはありませんでしたが、大聖堂に設置されたライトが街に向かって光を放ち、眼下のサン=ジャン大聖堂でプロジェクションマッピングが始まりました。早速近くで見てみようと、階段を下りて麓の旧市街へ。
サン=ジャン大聖堂のプロジェクションマッピングは人気があるようで、今回回った中で一番人口密度が高かったように思います。行った時は上映途中で全景が良く見える位置まで進めませんでしたが、上映が終わると人々が出口に向かって進むので次の回に向けて良い位置を確保することができました。
作品は聖堂のバラ窓や装飾をうまく利用した、既存の建築と良く融合したものでした。文章では何とも形容しがたいので、気になる方は来年是非観に行ってみてください。
その他駅舎、市庁舎、劇場などでプロジェクションマッピングが展開されていた他、所々の広場に光を使ったモニュメントが置いてありました。日本のイルミネーションは木々に電飾をつけたりしますがそういったものは見たところなかったので、イルミネーションのお祭りと言ってしまうと少し違うかなと思います。光を使った芸術作品を展示するお祭り、と言うのが良いのかもしれません。

ジャコバン広場

一番感動したのはジャコバン広場の噴水を使った作品。長い静かな導入の後、噴水が立ち上った時はとても美しかったです。
ほぼ全ての場所を回ることができましたが、困るほどの混雑はありませんでした。最終日だからか、あまり天気が良くなかったからか。でもメトロの入口には列ができていたので、公共交通機関を利用しようとすると少し厄介なのかもしれません。
23:45、惜しみながら高速バスで帰路につきました。途中の休憩所でエンジンが止まっている時間がとても寒かった記憶だけがあります。

次回はお役立ち情報ということで、良く知人に聞かれる「RERってなに?」について書きたいと思います。また鉄道ネタです笑、どうぞお楽しみに。

イヤーな「カビ」の話

5 12月 2018
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取り寄せたカビとり剤

相変わらず雨ばかりのヴェルサイユ。地面が乾いている日の方が少ないほどです。ここ数日は少し暖かいので霧はあまり出ませんが、何となくすっきりしない空模様がずっと続く様は、18世紀と変わらないのでしょうか。
前回も少し書きましたが、ヴェルサイユは元来湿地帯で、宮殿の造営が行われる前は一面泥だらけで草の悪臭が漂う土地でした。それを全て干拓し、あの壮麗な宮殿と庭園を造ったのです。ただ土地は変わっても、それを取り巻く気候はあまり変わってないのでしょう。

先週末には10月からリハーサルが行われていた「クープランを讃えるラヴェル」の演奏会がヴェルサイユにほど近いヴィロフレーの小さなホールで行われました。図書館に併設されているホールで、残響はあまりないので古楽には少し厳しい現場ではありましたが、とても楽しめた本番でした。ラヴェルのいわゆる『クープランの墓』の楽章間にクープランの『王宮のコンセール』と『リュリ賛』を演奏するという趣向で、モダン科との交流も持つことができました。ちなみに『リュリ賛』ではフランス人を差し置いてリュリ役をさせていただきました笑。
日曜日にはヴェルサイユ宮殿内にある王室歌劇場でシャルパンティエの《アクテオン》とラモーの《ピグマリオン》を観に行きました。演奏はターフェルムジーク・バロックオーケストラ。比較的小編成ながらしっかりとした低音に支えられた響きは聴いていてとても安心感があり、舞台演出も見事でとても楽しかったです。
昨日は王室礼拝堂でジョルディ・サヴァール率いるアンサンブルの、クープランの「諸国の人々」全曲演奏会がありました。各人名演奏をしていましたが、一番安い後方の席だったので如何せん遠くて細部がよく聞こえない…。おそらく王室礼拝堂は身廊と側廊の2階部分の間を遮るものが円柱しかないため、音が散りやすいのだと思います。しかもクープランのような室内楽にはそもそもあの巨大な空間はあまり適しているとは言えない。今度からは高くても前方の席を買おうと思いました。

さて、今回はそんな充実した毎日に密かに我が家へ棲み着いていた、イヤーなカビの話です。
11月に入り、何だか洗濯物が中々乾かなくなったなと思っていた頃、彼らは少しずつ仲間を増やして、遂に目に見えて居間の壁に進出してきました。元々シャワールームのカビには悩まされていたのでカビ取り剤を探していたのですが、MONOPRIXの店頭をいくら探してもない。仕方なくアルコールスプレーで様子を見ようと一度拭いたのですが、一週間経つとまた生え始めました。どうやら壁と密着しているクローゼットの裏側の奴らを退治しないといけないようです。
MONOPRIXのインターネットサイトから購入できる薬剤を店頭取り寄せにして待つこと2日。ヴェルサイユ店へ受け取りついでに買い物に行ったら、数日前までなかったコーナーに取り寄せたのと同じカビ取り剤が売られているではありませんか。もう少し早く出してくれ!取り寄せ料の2€を完全に損しました。まあ仕方ないですね。ちなみに私が取り寄せたからついでに売り始めたわけでは…ないと思います笑。
取り寄せたものとは別のブランドも売られていたので、比較のために購入。「おのれ奴らめ、一斉摘発してやる」と息まいて帰宅し、早速退治スタートです。しかしこれは長い戦いの始まりでした…。
薬剤を撒く前にまず一体となって固定されているクローゼットと棚のネジを外して解体し、手前に引き出す。すると悪の巣窟が姿を現しました。緑色のカビが蔓延り、彼らが吐き出す湿気で壁が濡れています。クローゼットの裏側の板は薄い合板なので濡れて湾曲していました。奴らを白日の下に晒したところでまずはアルコール除菌シートで拭き取ります。マスクをしていましたが、何とも言えない凄まじいカビの臭いが辺りに充満しました。ちなみにカビはクローゼットの裏板を通り越して中にも進出し始めていたので、あと数日遅ければ洋服にカビが移るところでした。危ない危ない。
拭き取りで大方のカビは無くなりましたが、根元から抹殺するためいよいよ薬剤を投入します。まずは写真左のブランドから。さらさらとした液体で、吹き付けるとすぐに流れ落ちてしまいます。キッチンペーパーを当てて様子を見ることにしました。一方、離れた壁面で右のブランドも試すと、こちらは少し泡状になって出てくるので少し滞留時間が長いです。これをビニール手袋をした手で伸ばしていくと作業が早く進みそうだったので、こちらのブランドを主力に採用することにしました。ちなみに両者とも、カビの取れ具合に差は感じられませんでした。
壁面一体を薬剤で覆いつくすと、今度は塩素の臭いが部屋に充満します。そういう薬剤なので当たり前なのですが、扇風機を最大出力で稼働させてもなかなか窓から空気が出て行ってくれません。しかもこの日も雨が降っていたのであまり窓を全開にするわけにもいかず…。次第に頭痛に襲われながらも、なんとか居間のすべての箇所に薬剤を撒き終わりました。本来は水で洗い流さないといけないのですが、居間なので地道に濡れ雑巾で拭き取ることに。バケツでこまめに雑巾を洗いながら作業を進めていくと、水がペンキの白色になってきてしまいました。やれ、薬剤がペンキを溶かしたか。あまり拭きすぎると何が起こるかわからないので、3周でやめておきました。
作業開始から4時間あまり、部屋の中は棚とクローゼットから出した物で散乱し座ることもできないまま、何とか終了。奴らの残骸は完全に無くなり、「兵どもが夢のあと」となりました。クローゼットと棚は少し壁から離して再設置。棚の板は壁にぴったりの寸法で切り出されていたので、解体と再設置には苦労しました。
とりあえず夕飯を食べに外に出ようとヴェルサイユ・リーヴゴーシュ駅前のマクドに行って、帰ってきてみたら塩素の臭いが全然抜けていない。頭痛と鼻炎が割と酷くなってきたので、気分転換を兼ね夜のヴェルサイユをあちらこちらと散歩。何だかんだで午前1時になってしまいました笑。
今では居間のカビはすっかり退治できたようですが、戦いはまだ終わっていません。シャワールームとトイレ周辺の配管近くにまだ大勢います。明日にでもやらねば…。しかも奥の方は手が届かなさそうなので、どうしようか思案中です。

こうしてカビ退治ができたとはいえ、カビが生える元凶の一つである湿気をどうにかしないと、また彼らは戻ってきてしまいます。困ったことにわが家には換気扇というものがなく、シャワーを浴びると湯気が抜けず、洗濯物は生乾き臭を放ちながら中々乾いてくれません。このためAmazon.frでデロンギ社製の除湿器を購入。昨日から稼働を始めましたが、数時間でタンクに面白いほど水が溜まります。湿気退治とこまめな掃除で、もう彼らに会わないことを願うばかりです。

今回は生活の困り事についてでした。次回は
今週末にリヨンの「光の祭典」を観に行くので、その模様をお伝えします。