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リヨンの「光の祭典」

13 12月 2018

少し前まで比較的暖かかったのですが、ここ数日でまた寒くなってきました。相変わらず曇りや雨ばかりの天気の中で、月曜日は青空が見えて何だか感動しました笑。
先週の金曜日は王室歌劇場でパーセルの《アーサー王》を観ました。演奏はエルヴェ・ニケ率いるコンセール・スピリチュエルで、とても引き締まった安定感のある演奏。特に凄かったのは、演出のため譜面灯も付かない完全な闇の中で一糸乱れず一曲弾ききったこと。リタルダンドから最後の音の入り、切りまで完璧でした。あんなアンサンブルを作ってみたいものです。
演出もとても興味深いものでした。冷蔵庫からペンギンと白クマが出てきたり、とにかくコミカルで突っ込みどころ満載でしたが、決して邪魔には感じません。幕間でニケが全く関係のないシャンソンをオーケストラ伴奏で歌い出したのには驚きましたが…。
月曜日には室内楽の授業の発表会がありました。これも無料で一般公開されていて、先日の独奏による演奏会よりも客入りが良かったです。私はコレッリのトリオ・ソナタとラモーのコンセールを担当しました。もっといろいろな表現をしたい、楽器の技術的なことから解放されて自由になりたいなどの課題が見えた本番でした。

サン=ジャン大聖堂

さて、今回は先週末に行ったリヨンの「光の祭典」のレポートを書きたいと思います。
「光の祭典」は14世紀にペストが大流行した際、人々がフルヴィエールの丘にあるノートルダム大聖堂のマリア像に祈りを捧げたところ流行が収まったので、聖母マリアの祝日である12月8日に灯をともすようになったことに由来するそうです。今日では世界中から観光客が集まる、リヨンの1年で最も盛り上がるお祭りとなっています。
何かと忙しかったので、行ったのは最終日の12月9日。シャルル・ド・ゴール空港駅から廉価版のTGVウィゴ(Ouigo)でリヨンへ行きました。
ここで、このウィゴについて少し紹介しておきましょう。フランスでは日本の新幹線にあたるTGVが運行していますが、ウィゴと呼ばれる安い料金設定の列車が存在します。例えばパリーリヨン間(日本で例えれば東京ー大阪間)の一般のTGVは90€くらいが相場で、日本ではのぞみ号で13000円ほどですからさほど変わりはありません。しかし今回利用したウィゴはなんと10€!1300円程度の廉価版のぞみ号(なんじゃそりゃ)で東京ー大阪を移動できるイメージです。高速バスよりも安いですね!
ただしウィゴには条件があって、本数が少ないこと、出発駅は中心部から少し遠い駅となっている場合があること、飲食物持ち込み禁止など手荷物に制限があること、発車の30分前にチェックインしなければならないことなどがあります。さらになぜか日本で発行されたクレジットカードでは購入できません。旅行者の方はフランス在住の友人に購入してもらいましょう。しかしこれらの条件以外は普通のTGVと変わりはありませんので、是非活用してください!
さて、今回のウィゴは08:06発なので、その30分前に余裕をもって着くには7時過ぎには着かねばなりません。ヴェルサイユからパリ北部の郊外にあるシャルル・ド・ゴールまでは1時間超かかりますので、朝4時半に起きて、05:46にヴェルサイユ・シャンティエから出発する…はずでした。しかし行ってみると電光掲示板に列車の表示がない。慌てて国鉄のアプリで検索すると、昨晩まであったはずの列車の選択肢が消えていて、リーヴ・ゴーシュ駅からC線に乗れとのこと。どうやら8日のデモでパリのさまざまな駅が閉鎖された影響がまだ残っていたらしいです。迂闊でした…。フランスで行動するときは出発前にもう一度国鉄のアプリで検索しましょう(パリ交通公団RATPのアプリは運休している列車まで表示されて混乱します。)

気を取り直してリーヴ・ゴーシュ駅まで戻り、運休区間の手前の駅からメトロに乗ります。空港に行くB線へ乗り換える際、快速列車にぎりぎり間に合わず悔しい思いをしました。ドキドキしながら後続の各駅停車に乗ると、何とか07:20頃に到着できました。チェックインを急げ!と思うと、受付に誰もいない。おかしいなと思っていると、電光掲示板に1時間遅れとの表示が。あああーーー!!!今までの苦労は何だったんだーーー!!!
仕方なく他の乗客や空港利用者と待合スペースで待つこと1時間半。電気系統の故障ということでしたが、ようやくチェックインが始まり乗車できました。安心してリヨンまでぐっすり寝ました笑。
着いたのはサンテグジュペリ空港駅。リヨンの中心部から列車で30分ほどのところに位置しています。しかしこの空港アクセスの列車がまた何とも曲者。ローヌ・エクスプレスという特別な路線で、国鉄線でもなければリヨンのトラムでもない。要するに金稼ぎの路線です笑。まあ空港アクセス線は大抵そんな感じですが、パリはナヴィゴで空港に行けますからなんだか損した気分になります。価格は片道13.4€。先ほどまで乗っていたウィゴより高いぞ…。まあそんなことを言っても他に選択肢はなさそうなのでこの列車に乗車。2両編成のトラムのような車両でした。途中の風景が何だか日本のようで懐かしくなりました。
中心部からやや離れたパルデュ駅に着き、昼食をとった後歩いて中心部まで向かいました。「光の祭典」は19時からなので、それまでは織物博物館と装飾博物館へ行くことにしました。織物博物館は壁面装飾用、衣装用など細かい装飾が施された布が展示されており、しっかり観ていくとわりとボリュームがあります。装飾博物館は18世紀の調度品などが貴族の邸宅の中に展示されており、さながらタイムスリップしたようでした。もっとも、階段や暖炉などはヴェルサイユの音楽院で見慣れているもので、調度品さえ揃えれば音楽院もこんな雰囲気になるのかなと思いました。ちなみに1716年製のチェンバロもありました!

市庁舎の中庭

17時頃に観終わり、まだ少し時間があったのでフルヴィエールの丘に徒歩で登ることにしました。さほどきつくなく、良い散歩になりました。ノートルダム大聖堂周辺はもう警察の警備が行われており、カバンを開けるように言われました。ヴェルサイユ宮殿でも同じことをやっていますけど、これで何が分かるのかなといつも疑問に思っています…。
大聖堂横の展望台で夜景を眺めているとちょうど19時になりました。特別すごいことはありませんでしたが、大聖堂に設置されたライトが街に向かって光を放ち、眼下のサン=ジャン大聖堂でプロジェクションマッピングが始まりました。早速近くで見てみようと、階段を下りて麓の旧市街へ。
サン=ジャン大聖堂のプロジェクションマッピングは人気があるようで、今回回った中で一番人口密度が高かったように思います。行った時は上映途中で全景が良く見える位置まで進めませんでしたが、上映が終わると人々が出口に向かって進むので次の回に向けて良い位置を確保することができました。
作品は聖堂のバラ窓や装飾をうまく利用した、既存の建築と良く融合したものでした。文章では何とも形容しがたいので、気になる方は来年是非観に行ってみてください。
その他駅舎、市庁舎、劇場などでプロジェクションマッピングが展開されていた他、所々の広場に光を使ったモニュメントが置いてありました。日本のイルミネーションは木々に電飾をつけたりしますがそういったものは見たところなかったので、イルミネーションのお祭りと言ってしまうと少し違うかなと思います。光を使った芸術作品を展示するお祭り、と言うのが良いのかもしれません。

ジャコバン広場

一番感動したのはジャコバン広場の噴水を使った作品。長い静かな導入の後、噴水が立ち上った時はとても美しかったです。
ほぼ全ての場所を回ることができましたが、困るほどの混雑はありませんでした。最終日だからか、あまり天気が良くなかったからか。でもメトロの入口には列ができていたので、公共交通機関を利用しようとすると少し厄介なのかもしれません。
23:45、惜しみながら高速バスで帰路につきました。途中の休憩所でエンジンが止まっている時間がとても寒かった記憶だけがあります。

次回はお役立ち情報ということで、良く知人に聞かれる「RERってなに?」について書きたいと思います。また鉄道ネタです笑、どうぞお楽しみに。

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