南仏旅行レポート④ オランジュ、リヨン
月曜日には音楽院で小さな発表会があり、一番目に弾かせていただきました。地元情報誌の芸術活動欄に小さいながら情報が掲載されていて、無料で一般公開されています。音楽院で一番大きい、18世紀の雰囲気が漂うサル・ラモーで行われました。フランスでの演奏会はこれが初めて。聴衆は10人ほどのご老人たちでしたが、先ず先ずの出来で初陣を果たしました。
さて、今回は南仏旅行のレポート最終回です。
TGVでオランジュに到着後、バックパックをホテルに置くため14時まで待ち、駅のすぐ近くにあるホテルにチェックイン。身軽になったところで旧市街まで歩きます。1kmほどあるのですが、歩いてもそう遠くない印象でした。
早速お目当ての古代劇場へ。狭い路地を抜けるといきなり巨大な壁が現れます。「我が王国で最も美しい壁」とルイ14世が讃えた、古代劇場の壁面の裏側です。数あるローマの古代劇場でも舞台の壁面が残されているものは世界で3つしかなく、その中でもここオランジュのものは保存状態が世界一を誇ります。早速中へ入ってみましょう。
オーディオガイドを求めて受付に行くと、「ココ、押す」と片言の日本語を話してくれました笑。日本人観光客は多いのでしょうか。VR体験のツアーが間もなく始まるとのことだったのでそれも申し込みました。
VR体験をする前にまずは劇場の現況を見てみる。するとなんと、舞台が修復中で一面に鉄骨の足場が組まれているではありませんか…。あらら、また足を運びましょう。正面にある皇帝の石像や、向かって右側にある円柱は発掘されたものを復元したそうです。世界一といえども、後の時代の破壊行為からは逃れられなかったか。階段席もローマ時代のものは最初の3段(だったはず)のみということです。
時間になったのでVR体験へ。これがもう、アヴィニョン教皇庁のタブレット端末に勝るとも劣らない優れもの!最初に丘に劇場を建設し始めたところから始まり、劇場が完成するまでの様子を追体験することができます。先ほど見た劇場の壁面は一面色鮮やかな円柱で飾られ、VRながら感動してしまいました。現存していたらどんなに壮観だったでしょう。
音声ガイドも項目が多く、ローマ人の生活や演劇の解説まで充実していました。全て聞き終えたら閉館時間となり、見学終了。
ちなみに入場券はニームにある各遺跡との共通券があるようです。旅行される方はご参考までに。
旧市街の北側に位置する凱旋門にも行きました。カエサルの勝利を記念して作られたもので、規模は小さいですがパリのあのエトワール凱旋門より10倍も古い、2000年前のものです。さすがに彫刻はあまり良い状態とは言えませんが、生き生きとした兵士たちの様子が描写されていました。
帰る途中に住宅街に埋もれたローマ時代の壁面を見つつ、夕食のためレストランへ。旅行中は野菜不足だったので、サラダを注文して満腹になりました。
さて最終日、08:38発のTERに乗って最後の街、リヨンを目指します。このTERは機関車牽引の客車列車でした。何やら陽気な車掌が乗務していて、駅名を放送中に途中から歌い出したり、「ピンポンパンポ~ン♪」とセルフでチャイムを歌うので、乗客たちは皆笑っていました。でも途中で検札係が乗って来てからは大人しくなってしまいました…。
左手にローヌ川の車窓が流れることしばし、終点のリヨン・パルデュ駅に到着。中心地からは少し離れているので、メトロで移動します。白い車体でかわいいメトロ。
まずは音楽関連ということで、ジャン・マリー・ルクレールゆかりのサン=ニジエ聖堂へ。ミサの最中だったので、終わるまでしばし休憩しながら後方で参列しました。今の讃美歌ってなかなかリズミカルなのですね。天井の高いゴシック聖堂で、オルガンの装飾が凝ったものになっていました。残念ながら聖堂内にはルクレールの痕跡はなし。でも外に出てみると、後陣部分の壁面に大きく「フランスヴァイオリン派で最も偉大なる作曲家ジャン=マリー・ルクレール、このサン=ニジエ小教区で生まれたり」と彫ってありました。ルクレールを敬愛する者の聖地!ヴァイオリン奏者の皆様方は是非訪れましょう。
次に教会のほど近くにある印刷博物館へ。15-6世紀のリヨンでは印刷業が盛んであったとのこと。路地を入った目立たない建物ですが、実は古い市庁舎です。中には古い印刷物は勿論のこと、活字や銅板、彫版道具や18世紀の印刷機などが展示されていてマニアにはたまらない内容です。最後には現代のコピー機もあって、日頃何気なく行っている印刷の技術の発展を知ることができました。
ベルクール広場でルイ14世とサンテグジュペリの像を観た後、徒歩でソーヌ川を渡り旧市街へ。壁面が色彩豊かな可愛らしい建物が並ぶ旧市街は、ルネサンス時代の雰囲気を色濃く残しています。途中になぜかベートーヴェンの絵が描かれた建物がありました。
日が落ちる前に丘から景色を眺めようと、まずはフルヴィエールの丘にケーブルカーで登りました。メトロと同じ乗車券で乗ることができる、赤い車体のかわいいケーブルカーです。途中のトンネルは青函トンネル記念館のケーブルカーを思い出してしまいました。運転士は80-90代のおばあちゃんで、元気に乗務していました。と言ってもただボタンを押すだけですがね。
目の前に現れたノートルダム大聖堂には後で入ることにして、まずはガロ・ロマン博物館へ。
第一日曜日なので無料で観覧できましたが、そのためオーディオガイドもお休み。ただ言語を設定して終わったら充電するだけなのだから貸してくれてもいいのにと思いつつ、観覧スタート。リヨン一帯で出土した先史時代からローマ時代に至るまでのさまざまな日用品、彫像、建造物の欠片などが展示されています。建造物の欠片は見せられてもまあ、旅行中に現存する建物をたくさん見てきたのであまり感動は起きず…。ローマ劇場の「下がる」緞帳の仕掛けを観察できる模型がなかなか面白かったです。窓からは横にある古代劇場を眺めることができ、その休憩スペースではお菓子と飲み物が提供されていました。
最後にある定番のお土産ショップにはローマ時代の製法を再現したワインが売られていて、買いたかったのですが重いのでまた今度にすることに。館内に展示されていたローマ時代のオイルランプを再現したものがあったので購入しました。家で出る廃油を入れれば長時間明かりが取れるので、時折楽しんでいます。
次に先ほど景色を眺めた古代劇場へ。リヨンには大小二つの劇場が並置されているのですが、残念ながら壁面は完全に破壊されていて辺りは空しい廃墟になっています。現存していたらどれだけ壮観だったことでしょう(こればかり言っていますね。)
来た道を戻り、ノートルダム大聖堂へ。この聖堂はあまり古いものではなく、日頃行く古い教会では見られない建築様式が新鮮でした。地下聖堂があったり充実した教会なのですが、ミサが行われていて内部や塔の見学はできず、仕方なく聖堂を出て傍らにある展望台から夕暮れのリヨンを眺めました。手前から段々と新しい建物になってゆくリヨンの街並みがよく観察できます。
ケーブルカーで麓まで下り、サン=ジャン大司教教会へ入りました。最も古い部分は11世紀のもので、非常に古く由緒ある教会です。ただ内部は大部分が修復中でカバーがかかっているのが残念でした。修復が終わったらゆっくり見学したいものです。聖堂内ではJ.S.バッハのヴァイオリンとオブリガートチェンバロのためのソナタホ長調をバロック・ヴァイオリンとオルガンで練習している学生がいて、あのオルガンが似合う第一楽章が荘厳に響いていました。
可愛らしい旧市街を散策した後は徒歩で市庁舎近くまで戻り、当アンサンブルのチェンバロ奏者石川友香理と夕食をしながら、旅行最後の夜は更けていきました。
次の日の朝07:30、廉価版のTGVであるOuigo(ウィゴ)でパリまで帰りました。30分前までにチェックインすること、手荷物などに若干制限があるものの車内は快適でした。列車によりますが今回の列車は10€!大阪-東京間の新幹線を1300円ほどで利用できるイメージですから、何ともお得な列車です。後はRERに乗ってヴェルサイユへ帰投しました。
これで南仏旅行のレポートは終了です。長らくのお付き合いありがとうございました。
次回は最近の我が家の悩み、イヤーな「カビ」について書こうと思います。どうぞお楽しみ?に。