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駿太の独り言① 日本のメディア

5 2月 2020

日本では新型コロナウィルスの影響でマスクが薬局やスーパーから消えたと聞き及びます。フランスではスーパーはおろか薬局にすらマスクは売っていないので先週アマゾンで注文したのですが、なかなか発送連絡がありません。ちょうど日本から持って来たマスクが残り僅かというところで今手元にあるのはあと1枚。マスクが届くまで宮殿周辺にはなるべく近づかないことで対応していこうかなと思います。

~~~注意~~~
今回の話題は個人の思想信条に大きく関わる内容となっています。なるべく中立的な書き方をしようと心がけていますが、私にも個人的な考え方がありますので特に対極にある考え方をお持ちの方はこの記事をお読みになって気分を害する可能性があります。少しでもこのようなことを感じた場合は直ちにお読みになるのを止めることをお勧めいたします。
以上をご了承の上、下記へお進みください。
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一昨年ヴェルサイユで一人暮らしを始め、この素晴らしい環境の中に身を置くことで自らにたくさんの変化がありましたが、それまでは分からなかった日本のことを、日本を出たことによって客観的に見ることができるようになったという事があります。そしてその中で最も大きかったのは、日本のテレビや新聞から完全に離れたことによって、メディアを自らの意思で選んで情報を精査するように努めるようになった事だと思っています。
皆さまは日頃世間の出来事をどのようにお知りになるでしょうか。旧来からある新聞、ラジオ、テレビなどに加えて現代ではインターネットが普及して情報を取ることのできる選択肢が広がりましたが、依然として新聞、テレビの力は大きいのではないでしょうか。
私個人の話をしますと、小中学生の頃は専らテレビのニュースを観ていました。特に両親や学校から教わったわけではありませんでしたが、何となく公共放送であるNHKが中立的な立場を取っているような気がしたのでNHKのニュースが好きだったのを覚えています。民間放送はニュースを見るためにCMを見る気はしないし、特に討論の場になると解説員とか専門家を名乗った人が出てきて好き勝手な事を言っているようなイメージが何となくありました。このような感覚は今思えば「ある程度」は的を得ていたなと思い返します。
その後いつからか分かりませんが、両親が好むようになったのか家庭では民間放送のニュース番組を見るようになりました。高校以降は音楽専門になり忙しくなったので、あまりテレビに時間を割く余裕もなくニュースもあまり積極的には見なくなりましたが、それでも食事の時間などは家族揃ってテレビを観ながら過ごす事も多く、ドラマやバラエティー番組の前後などで時折ニュースを見聞きすることがありました。
ちなみに新聞はというと、昔は我が家でも一紙購読していましたが随分前に止め、それ以来家から新聞はなくなりました。私は本格的な新聞記事を読む年頃ではおそらくなかったので、本格的に新聞を広げて読んだ経験は殆どありません。新聞社の方には申し訳ないのですが、今やインターネットが完全に普及しているのでこれからも紙の新聞を読むことはないのかなと思っています。
大学に入りパソコンやスマートフォンを使う機会が格段に増えると、ニュースもインターネットで読むようになりました。私がその頃好んで使っていたポータルサイトのトップページには目の付く所に最新のニュースが何項目か表示されるようになっていて、ニュースを読むつもりがなくても気になってついつい読み耽り、リンクから関連記事を延々と読み続けることもしばしばありました。この状態はヴェルサイユに来てから数か月過ぎた頃まで続きました。
しかしある時、奇妙な出来事に出くわしました。その記事は日本に近いとある国の事についての記事でした。いつものようにリンクから関連記事を読んでいくと、ほとんど正反対の記述がされている記事がありました。これは一体どういうことなのでしょう。しばらく考えて、その理由が分かりました。一方の記事は、そのとある国のメディアの日本語版記事だったのです!画面の体裁はそのポータルサイトのもので、記事の発信元を調べるまでは他の日本のメディアと見分けが付きませんでした。その国と日本とは主に歴史的事実において多くの異なった見解を持っていて国際問題になっており、その国のメディアの記事は自国の主張を擁護していることは容易に想像できました。
これをきっかけに、自分がメディアという物についていかに無知であったかを知りました。そのポータルサイトでニュースを読む時は必ずその記事の発信元をチェックするようになりましたが、記事の見出しだけでは分からないのでだんだん面倒になり、それなら一層のこと信頼できそうなメディアを選んでそのウェブサイトでニュースを読めば良いのではないかと思い立ち、日本の主要な各メディアについて調べ始めました。いや、これは衝撃でしたね。こんな重要なことをなぜ今まで知らなかったのか、なぜ誰も教えてくれなかったのか。
ここで、先ほどの質問に戻ります。皆さまは日頃世間の出来事をどのようにお知りになるでしょうか。もっと踏み込んで言うと、どのようにメディアを選んでそこから世間の出来事をお知りになるでしょうか。例えば新聞なら両親や学校の先生から勧められたとか、面白いコラムがあるからとか。テレビならたまたま家庭でよく観ているチャンネルだからとか、ニュースキャスターやアナウンサーに好きなタレントが出ているからとか。もしこのような理由のみでメディアを選んでいるのであれば、是非私と同じように各メディアについて一度調べてみることをお勧めします。
特に昨年は天皇陛下の御譲位に伴う皇室関連、前述したとある国を含む近隣アジア諸国関連のニュースが多かったことで各メディアの論調の違いは明確であったと思います。今年は自衛隊の海外派遣や憲法改正論議(全然進んでいませんが)、オリンピック・パラリンピック、そして目下進行中の新型ウィルス対策あたりが分かりやすい論題でしょうか。ピンときた方はその解釈で結構です。逆に全然ピンと来ない方は申し訳ありませんがおそらくメディアの思うがままになっています。
最も、完全に中立で正しいメディアなんていうものは存在しませんし(私がかつて信じていたNHKも然り)、極めて悪意のある捏造記事を平然と報道するメディアは論外としても、日本には言論の自由がありますのでいろいろな視点から報道するメディアがあって良いんです。しかし受け取り手である私たちは、それぞれのメディアが自らやその支持団体の考え方に基づいた主張に沿うように印象操作をして報道するということが日常的に行われているということを知らなければなりません。その有名な手法の一つがいわゆる「報道しない自由」です。都合の悪い事実は伏せて他の側面を強調することで、読者や視聴者が受ける印象を意のままに変えることができるのです。さらにその主張に沿うようなコメントをする解説員や専門家を選んで呼んできて、結果ありきの質問方法による世論調査のデータでも示せばもう完壁といった具合です。
では最初の質問の回答として、私たちはどうやってメディアを選べば良いのでしょうか。私の現在の考えは、それぞれのメディアについて良く知った上で自分の考えに最も近いメディアを選びつつ、時には違うメディアの情報も採り入れてみる。それらを全て鵜呑みにするのではなく5-6割程度に信用しておいて、ニュースの信憑性を疑った時にはそのソース(情報源)を辿ってみる、といった具合です。実際にこの作業をやってみると、そのメディアがソースの情報を曲解していたり付け足しを行っていたり、ひどいものになるとそんな事実はなかったりソースを途中で辿れなくなったりするなんてこともあります。
あともう一つ。立場の違うメディアが複数ある中、それらがある事柄について揃いも揃って「報道しない自由」を行使したらどうなるかという問題があります。この場合、インターネットなどを通じて他の情報を得ない限りメディアの思うがままに私たちは情報の遮断、印象操作をされてしまうということになります。これについては昨年の夏から秋にかけてとある県で行われた国際芸術祭内の展覧会についての報道が分かりやすい例でした。この展覧会はある特定の政治主張に基づくプロパガンダ作品のみで構成されていて、その内容は日本の国家や国民を貶め嘲笑するものでした。この展覧会は芸術祭の開幕直後から批判が殺到したことで間もなく中止されましたが、閉幕直前になって再び公開されました。この間、各メディアによって様々な報道がなされましたが、この展覧会の真実とその問題点を正しく報道したテレビ局は一つもありませんでした。新聞は私が日頃読んでいる新聞社だけがある程度正しく報道していましたが、それでもありのまま全てではありませんでした。実際、9割以上のメディアはその実態を報道しなかったので、これについて正しく理解している国民は少ないのではないかと思います。こんなにも多くの問題を抱えた展覧会はその後あまり糾弾されることもなく他のニュースに押し流され、今年はまた別の県で同じような展覧会が開催されようとしていると聞き及びます。この展覧会についての世論は「賛否両論」ですが、もし多くのメディアがその実態と問題点を正しく報道していたら世論は変わっていたでしょう。メディアはその大きな力で、世論を動かして国を変えることすらできてしまうのです。
それでは、こういった時に私たちはどうすれば良いのでしょうか。幸いなことに現代はSNSが普及して一個人でも情報を発信できる時代で、多くのメディアが目を背ける不都合な真実でも個人がそれを発し受け取ることができるようになりました。勿論不確実な情報やデマもたくさんあるので注意が必要ですが、メディアの力が及ばない所をこうしたSNSが補完していけるのではないかと思っています。前述の展覧会の実態についても、私はたくさんの個人から発信された写真や動画などを見て知ることができました。
インターネットの普及により情報量が増え、私たちには情報の真偽性を見極め取捨選択する力が求められていますが、これは旧来のメディアにも同じことが言えるのです。気づいたら日本が世論に基づいてとんでもない方向に向かって動いていた、あるいは既にそこにいたなんていうことのないように、メディアについて正しく理解している人が増えたら良いなと思います。

次回は今週末行われるマスタークラスについてのレポートを書きます。


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