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ヴェルサイユのモリエール月間

19 6月 2019

6月のヴェルサイユでは、この広告を目にしない日はありません

年度末ということで、私の所属するヴェルサイユ地方音楽院はもちろんのこと、ヴェルサイユバロック音楽研究センター、パリ地方音楽院に所属する学生仲間の修了試験で先週頃から忙しくなってきたこの頃です。
年度末の試験事情は日本も大体同じですが、フランスの学生たちはどうもアンサンブルのオーガナイズが遅い、緩い傾向にあります。2週間前になってから依頼してきてそこから日程調整したり、楽譜や担当パートに関する情報が今一つ不明瞭だったり、引き受ける方は何とも苦労が絶えません…。試験はそれぞれ今週、来週辺りに集中していて、今週は室内楽の授業の発表演奏会も控えているのでオーガナイズが遅かったグループはどうしてもリハーサルが少なくメンバーの出席率も良くないため、中には立ち消えするものもあったり。来年は私も修了試験があるので、オーガナイズには気を付けよう…。
さてこれらヴェルサイユ地方音楽院、及び研究センターの公開修了試験は今週のテーマであるモリエール月間と連動していて、公演一覧に記載されています。
まずモリエールとは誰かというところからお話しすると、彼は17世紀にフランスで一世を風靡した喜劇作家であり、コルネイユやラシーヌとも並ぶフランス古典主義作家です。医者や教会、宮廷事情の鋭い風刺劇でパリの観衆から高い人気を得た他、ルイ14世にも寵愛されリュリと共に「町人貴族」を始めとしたコメディー・バレを制作していました。
そんな彼の名前を冠したモリエール月間(Le Mois Molière)は1996年から開始され、今年で24回目を迎えます。毎年6月に一か月間、ヴェルサイユの様々な施設でプロ・アマチュア団体による劇、演奏会、舞踏、サーカス、展覧会や講演会が催されます。公演内容はモリエールや17世紀に限ったものではなく、その公演の多さたるや日本の音楽祭など遠く及ばないほどで、文字通り1か月間毎日、何かしらの公演が複数行われています。一部は予約制、入場料を取る公演もありますが大半は入場自由で無料、ヴェルサイユ市民にも大いに親しまれているようです。今月の街の広告表示はほとんどがこの赤いモリエール月間の広告で、多くの商店の窓にもポスターが貼られています。
今年私が関わったものとしては王室礼拝堂木曜演奏会でのカンプラのレクイエム、大厩舎での国王の24のヴィオロン、ヴェルサイユバロック音楽研究センターの試験の1つ(モリエールのプログラム)、今週近所の球戯場で行われる室内楽授業の発表演奏会がありました。大厩舎や球戯場など、普段はあまり演奏では使用しない歴史ある空間で演奏することができるのもこのイベントの力でしょう。
しかし残念ながら観客としてはあまり多くの公演には行けず、肝心のモリエール作品上演にはついに行くことができませんでした。今週金曜日に王室歌劇場で「町人貴族」を観ますが、劇作品の鑑賞はまた来年のお楽しみということにします。
先週は研究センターの歌手の1人が修了試験として、市庁舎の大広間でカンタータ・フランセーズの演奏を行っていましたが、17世紀の朗誦法やジェスチャーを再現していてとても素晴らしかったです。しかしこれはフランスの聴衆がいて、しかもヴェルサイユのあの空間だからこそ演者・聴衆共にあれほどまでに白熱したのだと思うと、今後私はどう演奏活動を行っていけば良いかを大いに考えさせられました。

ヴェルサイユ宮殿の庭園の散策にも良い季節ですので、来年フランスへ旅行を考えている方は是非6月にヴェルサイユに来て、モリエール月間を楽しんでみてはいかがでしょうか。
来週はヴェルサイユの球戯場とそこでの室内楽演奏会についてお伝えしようと思います。


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