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ヴェルサイユの大厩舎

15 5月 2019

今日も厩舎として使用されている壮麗な大厩舎

もう5月も中旬だというのに、未だ朝晩は冷え込む日が多いです。一時期の暑さはどこへ行ってしまったのでしょう…まあ暑いよりは快適で良いのですが。
先週の予告通り、先週末はヴェルサイユの大厩舎へ行ってきました。
大厩舎は宮殿に向かって右側にある施設で、先週紹介した小厩舎と同じくジュール・アルドゥアン=マンサールによって設計され小厩舎よりも一足早い1682年に完成しました。主な用途は王族などが戦闘や狩猟の際に使用する乗馬用の馬を管理することで、現在でも一部が厩舎や馬場として使用されています。ルイ14世により開校された馬術曲芸学校は1830年に閉校してしまいますが、今日でもヴェルサイユ馬術アカデミーがその遺志を引き継いでいます。
またこの建物には国王の従者養成学校があり、音楽関係でいえばトランペット隊やオーボエ隊など音の大きい楽器の楽師たちがここに詰めていました。
今日では馬術アカデミーの他、馬車ギャラリーと公立史料館が使用しています。
さて入場する際ですが、先週紹介した小厩舎とは違い宮殿側にある門から入ることができました。ちなみに、パリ通り側からも馬車ギャラリーの案内に従って入ることができます。厩舎を見学する際は水曜日、土日祝日のみの公開になるので注意しましょう。土曜日は18時から、日曜日と祝日は15時から馬術ショーが行われています。
正面に受付があり、私はここで馬術ショーの当日券を買いましたがアカデミーの公式サイトで事前購入することもできます。
内部に入ると中央の馬場の後方に観客席が設置されており、馬場は天井から丸い照明、壁面には鏡が設置されていて、窓は覆われており開始前は薄暗くなっています。毎週末開催のショーですが開始時には大半の席は埋まりました。
ショーが始まると、まず弓を持った3人の女性がおもむろに出てきて矢を放ちます。これがなぜかアーチェリーではなく和弓で、出で立ちも袴でした。命中率はそこそこといった感じ。
それから男性騎手1人と黒い馬、女性騎手4-6人と白馬のショーが交替で行われていきます。男性騎手の方は人と馬が心を通わせる様子を見せ、女性騎手の方は古典舞踏のように幾何学模様を描いたり馬上でフェンシングを披露したりしていました。これらは全てステレオによる音楽付きなのですが、プログラムは殆どがJ.S.バッハで、モダン楽器の演奏も多かったです。せっかくヴェルサイユなのだからリュリやマレを取り入れても良いのになと思いました。後半の方にはストラヴィンスキー(だと思う)のステージがあり、そこでは騎手は隅で見守るだけで馬だけが演技をし、自ら寝転がって背に土を付けたり2頭で舐めあったりするなど不思議な空間になりました。あれはどうやって調教するのでしょう。
あと、なぜか騎手たちが歌いだすステージも…。このステージは無伴奏で、騎手にしては上手いですが音楽なら礼拝堂や歌劇場で聴くのにと思ってしまいました。
とはいえ日本ではあまり見る機会がなかった馬術ショー、全体的には楽しむことができました。ヴェルサイユ宮殿観光の際には是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
ショー終了後は厩舎の見学ができます。一度外に出るのですが、この日は晴天で薄暗い館内から外に出ると眩しくて目を開けていられない…。騎手の方々も入退場の際は難儀なのかなと思いました。
厩舎の見学は、この建物が一部ながら用途通りに使用されているのを見るのが楽しかったです。各馬にはそれぞれ名前が付けられていて、品種と共にネームプレートに書かれていました。グリンカやバルトーク、オクターブなど音楽に関する名前が多かったと記憶しています。
売店には過去のショーのDVDや書籍、蹄鉄などが売られていました。蹄鉄は少しだけ買ってもいいかなと思いました(笑)。
さて、もう一つの目玉である馬車ギャラリーは正面受付の右側から無料で入場することができます。ここに収蔵されている馬車やセダンチェア(一人用の人力移動椅子)はルイ=フィリップ王のヴェルサイユ宮殿美術館化の一環で収集されたものが中心で、残念ながら旧体制時代のものはセダンチェアと子供用馬車、ソリ以外はありません(そもそも旧体制時代、馬車は持ち主が死去すると売り払われるのが常で保存はされなかった。)ナポレオン時代以降が好きな方は、ナポレオン1世とマリー・ルイーズの結婚時に使われた大変豪華な馬車があったりするので楽しめるでしょう。馬車の前には馬の模型があり、装飾品も共に展示されています。個人的には旧体制時代の馬車も見たかったところではありますが。
公共史料館は土曜日に特設展示が行われているようで、機会があればまた入ってみたいと思います。

今回はヴェルサイユの大厩舎についてお伝えしました。来週は現在通っているパリの語学学校についてお伝えしようと思います。

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