ホーム » ヴェルサイユ便り » ヴェルサイユ宮殿観光の手引き①

ヴェルサイユ宮殿観光の手引き①

13 3月 2019

もうどこを撮影してよいか分からないほどの豪華さを誇るエルキュールの間

春の嵐というのはフランスにもあるようで、今週は風が強い日が多かったり、天気が急変する日が多いです。一昨日は少しですが雹が降りました。
先週はオーヴェルニュから帰ってすぐに学生オーケストラのプロジェクトが始まりました。「王立音楽アカデミーの不評に終わった作品たち(Les échecsとはつまり失敗作という意味ですが…良い訳が思いつきませんでした)」というタイトルで、シャルパンティエの《メデ》、ジャケ・ド・ラ・ゲールの《セファルとプロクリス》、アンリ・デマレの《テアジェーヌとカリクレ》の抜粋を演奏しています。今回も光栄なことにコンサートマスターを務めさせていただいているのですが、管弦共々とにかく人数が多くて大変…。ニュアンスはおろか、装飾の有無一つとっても突き合わせるのが至難の業です。昔はいったいどうやって規律ある演奏をしていたのかと、リハーサルをしながら思いを馳せる日々です。しかもバカンスが明けたので、今週のリハーサルは木曜のみ…。はてさてどうなることでしょう。

さて、今週から皆様お待ちかね?のヴェルサイユ宮殿をめぐるシリーズをお送りしたいと思います。
形態としましては、観光の順路に沿って各所説明を加えていき、私ならではのコメントをしていきたいと思います。詳しい歴史や絵画、調度品の由来などは書くとキリがありませんので、専門書へ譲ることとします。

・見学の前に!
①後述のようにチケット売り場はありますが、連日世界中から観光客が訪れるためヴェルサイユ宮殿はいつも混み合っています。公式ウェブサイトからチケットを入手でき、入口でスマートフォンのチケット画面を提示すれば売り場に並ぶ必要がなくなるのでお勧めです。
②スマートフォンアプリで「Versailles 3D」と検索すると、外観のみながら各年代のヴェルサイユ宮殿の姿をスマートフォン画面上で見ることができます。今日の姿と画面の中の昔の姿を比べながら見てみるととても面白いですよ。

・それでは宮殿へ
RERC線のヴェルサイユ・リーヴ・ゴーシュ駅を降りると目の前にバス停やマクドナルドがあります。まず通りを右に進んで、次の交差点を左に曲がると、何かと見間違うことは絶対にないあのヴェルサイユ宮殿が現れます。通り沿いの右手には大厩舎(馬車博物館と馬術学校)、左手には小厩舎(予約すればツアーにて見学可能な彫刻収蔵館と修復所、建築学校)があります。
宮殿前に付き、まず目に留まるのはルイ14世の騎馬銅像です。この像はルイ=フィリップ王の治世下である1836年に宮殿内で展示されるために作られたものでしたが、2009年に修復の上宮殿前に設置されました。意外と最近なんですね。
第一の柵と門の前の広場を「プラス・ダルム」といいまして、要するに兵隊が集う場所という意味ですが、今日では主に駐車場になっています。第一の門にあるテントで保安上の理由により、カバンを開けるよう要求されます(楽器ケースを開けるように言う人もいます笑。)
テントをくぐると、左右に縦長の建物があります。ここから第2の門までの広場を「栄誉の中庭」といいます。右が「北の閣僚翼棟」、左が「南の閣僚翼棟」と呼ばれ、18世紀には名の通り政府の閣僚たちが生活していました。現在は右側は年間パスポート販売とガイドツアーのための棟、左側が案内所と一般チケット売り場、あと実はお土産売り場があります(正殿内にもありますが、この棟の方が穴場です。)
ちなみに南の 閣僚翼棟にはグランコミューン(厨房がある正方形の施設)へ抜ける地下道があり、普段は柵で閉鎖されていますがここを通るツアーがあるようです。参加してみたい!
さてチケットを手に、いよいよ正殿の見学を始めます。正殿正面には左右に対となるギリシャ神殿風のファサード(面)を持った棟があり、右がガブリエル棟、左がデュフール棟といいます。グループツアーを除く宮殿観光は左の「A」と書かれたデュフール棟からアクセスし、グループツアーや演奏会などは右の「B」と書かれたガブリエル棟です。正面の金色の門からは入れません笑。
これら2つの棟についてあまり言及しているウェブサイトがないので少しだけ紹介しておきますね。
右のガブリエル棟はルイ15世の治世末期である1771年から、正面のファサードを改造する目的で壮大な構想が練られましたが、王国末期の財政難のため途中で頓挫し現在の姿になりました。内部の階段は作られることなく時は流れ、約200年後の1985年になってようやく内部が完成しました。アツいですね!
一方の対となるデュフール棟は、ガブリエル棟の建設によって左右の景観が崩れたのを嘆いたナポレオン1世が左右対称となるべく建設を命じたのに始まり、その後の復古王政期の1821年に工事が終了しました。しかし左右対称となったのはファサードのみで翼棟自体は今日も左右対称ではなく、正面もペディメント(破風と呼ばれる、円柱上部の3角形の部分)の彫刻は今も空白のまま未完成です。費用対効果は大きいと思うのですがいつかは作るのでしょうか…。
さてデュフール棟から中に入りチケットの提示が済むと、まるで空港のような保安検査場があります。その先には無料のオーディオガイド貸し出し窓口、地図などが置かれた案内所があります。
さて、では見学を始めましょう!(まだ始まっていなかった…)
順路としては、中庭を横切って向かい側に進むのが一応正しい順路のようですが、先に正殿の一番奥にある正面の扉から入って王女たちのアパルトマンを見ることも可能です。
王の中庭と呼ばれる広場を横切って向かい側のガブリエル棟に入ると、まず右手に王室礼拝堂があります。残念ながら一般観覧の際は立ち入ることができず薄暗いですが、演奏会の際は素晴らしい彫刻や天井画を見ることができます。後の順路で2階部分からも見られます。
あ、ちなみに順路を進んでいくとなかなか化粧室がないので、礼拝堂手前の化粧室には不安があれば入っておきましょう。
順路を進むと左手にヴェルサイユ宮殿の歴史に関する展示室が続きます。宮殿の増築の様子が興味深い3D映像で流れていて、オーディオガイドから自動で各言語による音声が流れる仕組みになっています。他には王族の肖像画、ヴェルサイユやその他宮殿の眺望を描いた当時の絵を観ることができます。最後の部屋には宮殿修復の様子の映像も流れていて、まさにヴェルサイユは1日で成らず、今日もその歴史が続いていることを認識させられます。
階段を上った先には王室歌劇場へ続く廊下がありますが、歌劇場も一般観覧はできません。通路を進むと企画展示室があり、少し前まで「ルイ=フィリップ展」が催されていました。現在は目下片付け中です。
通路を進むと「礼拝堂の間」があり、巨大な円柱が立ち並ぶ広々とした空間の中で、金箔の装飾が施された礼拝堂の扉は一際目を惹きます。午前10時から始まるミサに備えて正殿からやってくる国王を一目見ようと、ここに人々がひしめき合っていたとのこと。
さて、次はエルキュールの間です。ご覧ください、この眩いばかりの輝き!!!宮殿を訪れる客人を驚かせようと、ルイ14世が最晩年に造ったご自慢の部屋です。1710年に現在の王室礼拝堂が完成するまで礼拝に使用されていたこの空間に、様々な色の大理石を用い、上部を金箔で飾り、壁面にはヴェネツィア共和国から同盟の証として寄贈されていた「パリサイ人シモン家の宴」が堂々と飾られました。その向かいには人間が立ったまま入れそうなほどの開口部を持つ巨大かつ豪華な暖炉があります。天井画には先代の遺志を継いだルイ15世がフランソワ・ルモワーヌに描かせた、一室の天井画としては他に類を見ない大作である「エルキュールの神格化」がこの部屋の性格を決定づけています。約3年の月日を費やして彼はこの作品で成功を収めたにも関わらず、製作の心労が重なって直後に自殺してしまったそうです…。
昨年皇太子殿下が来訪された際の晩餐会に使われた部屋もこのエルキュールの間だったそうですよ。

さて、いよいよここから国王のアパルトマンに入っていくわけですが、それはまた次回のお楽しみ…。

ヴェルサイユ便り ,