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クレルモン=フェランとオーヴェルニュ地方

7 3月 2019

我が領地オーヴェルニュよ…(違)

先週の予告でヴェルサイユ宮殿のシリーズを始めるとしていましたが、今週旅行に行くことを忘れていたのでこのシリーズは来週からにしたいと思います。
月曜日から3日間、ヴェルサイユを離れオーヴェルニュ地方に滞在していました。音楽院のヴァイオリンの同僚に招待を受けたのがきっかけでした。この人は実は元来貴族の家柄で、家族はとても大きな家と土地を持っていたのです。
この家はアルトンヌという小さな町にあるのですが、せっかくなのでその前に少し足をのばしてクレルモン=フェランへ観光しに行きました。
パリからアンテルシテに乗車して3時間半の道程を終点までゆったりと行くつもりが、パリを発ってすぐに機関車の調子が悪くなったと放送があり途中の駅に停車したり徐行したり。そしてついにはいきなり運転打ち切りになり、乗客全員後続のアンテルシテに乗り換えさせられました。座席が足りたからよかったものの、満席で立ち客が出たらどうするつもりだったんでしょうか…。
まあ今回はゆったり旅なのであまり気にかけずにいると、お詫びのお弁当が配布されました。こんなのあるのか。中身は簡素で、サラダの缶詰とお菓子、水など。せっかくなのでいただきました。結局到着は約2時間遅れ、運賃は公式サイトで25%払い戻し。日本なら全額ですけどね。
クレルモン=フェランに着き、まずはロマネスク様式のノートルダム=デュ=ポール寺院へ。トゥールーズで見たサン=セルナン寺院を思い出しました。ロマネスク様式は飾り気はあまりないけれど、素朴でどこか懐かしいような印象を受けるんですよね。後陣の外部壁面に花の模様が描かれているのがこの地方の特徴のようです。月曜日の午後なので、聖堂内は自分一人。せっかくなのでグレゴリオ聖歌を少し歌ってみました。うーん、極上の響き…。祭壇の下には地下聖堂もありました。
クレルモン=フェランは周囲を火山に囲まれており、建造物は豊富にある黒い火山岩が多く用いられています。ノートルダム=デュ=ポールは塔を除いてはほとんど白色でしたが、次に訪れたゴシック様式の被昇天聖母大聖堂は黒く重厚感のある聖堂です。見慣れたガーゴイルも黒いとなんだか恐ろしい…。
中に入ると、外陣から内陣奥まで連なるヴォールトが圧巻です。黒いのが余計に存在感を放っているのでしょうか、先程までロマネスク様式の素朴な聖堂にいただけに、その違いは甚だ大きく感じられました。しかしステンドグラスは周囲とは対照的に至って繊細です。
ちなみにこの聖堂はラモーが1702年から4年ほどオルガニストを務めていました。西側の内部壁面にしっかり彼の名のプレートがあります。
2つの聖堂を見て、少し散策したかったのですがあいにく春の嵐で風が非常に強く、聖堂で休憩をしてから移動することに。クレルモン=フェランの駅から2両の流線形ディーゼルカーに乗ってオビアというとても小さな駅に降り立ちました。ホームと待合室があるだけのローカル線の駅、今にも日本のディーゼルカーが来そうです。
同僚の車に揺られること数分、ひたすら田園地帯を走った先の小さな町に着き、丘を上がっていった先に彼らの邸宅はありました。
家の広さもさることながら、驚いたのは馬が2頭いたこと…。しかし後で家の紹介を受けたら実はそれだけではありませんでした。畑あり、果樹園あり、フランス式庭園あり、噴水あり…。ないものはないといった感じです。
中に入ると、大勢の子供達に出迎えられました。同僚の兄弟のうち一人の子供が8人兄弟とのことで、とても賑やかです。夕食も囲炉裏…ならぬ暖炉を囲んでの楽しいひと時になりました。家長である同僚のお父様にもお会いしました。元軍人で除隊後はロマネスク建築を研究されていたそうで、もう80-90代のお歳だからかとても穏やかに話す方でした。
2日目はヴォルカン・ドヴェルニュ自然公園内のゲリー湖周辺でハイキングをしました。まだ雪が残る中、スキー場になっている山中を通常装備で歩くのは少し難儀でした…笑。特に途中から道なき道を歩き出してしまって、雪深く足がはまることも幾度か。でも景色は良かったです。
最終日の水曜日は午前中に同僚と初見大会をした後、夕方に例の馬たちと触れ合いました。まずはお世話。猫の毛繕いはしたことがありますが馬は初めてです。馬具をつけた後、周囲の農道を馬を牽いて散歩しました。見よう見まねでやってみますがなかなかできません。私が逆に牽かれていましたね笑。そして途中から乗せていただきました!初めての乗馬でしたが、これは数分で慣れることができました。でも昔はこれで長距離を走ったり戦場を駆けたりしたんですよね…大変です。あたりはひたすら農地が続くばかりで近代的なものは何もなく、さながら大河ドラマの登場人物になった気分でした。
こうして3日間のバカンスは終わりました。ゆったりとした時間は良かったですが、日本の田舎にいるのと正直あまり違いはないので、留学生としてはパリやヴェルサイユの方が刺激的ですね。

今回はクレルモン=フェランとオーヴェルニュ地方についてお伝えしました。次回からはお待ちかね、ヴェルサイユ宮殿のシリーズを開始します。

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